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『中国医学の身体論――古典から紐解く形体』あとがき

 
あとがき
 
 
 本書の力点は第Ⅱ部にある。第Ⅰ部の「臓腑学説」は,第Ⅱ部を導く必要から附されたものであるといっても過言ではない。
 2017年に『古典から学ぶ経絡の流れ』を上梓した。同書では『素問』『霊枢』『難経』などに見られる経脈・絡脈・経別・経筋の種々の記載を十四経の各経脈ごとに分類し,さらに各経脈の末尾に,本経だけでなく,絡脈・経別のすべてを合わせた十四経の流注を付記した。
 同書の目的は,十四経経穴の主治原則の一つである「経絡が通じる所は主治が及ぶ所」にもとづく遠隔作用に根拠を与えることであった。たとえば胃経の足三里穴がなぜ「目内障」の「目不明」に効果があるのかを考えたとき,胃経は絡脈と経別(別行する正経)の両脈が目系に流注していることで首肯できる。したがって同書の目的はそれぞれの経穴をもつ十四経で,そのすべての流注を明らかにしようとすることであった。
 本書は,それとは逆に,各臓腑・組織・器官に視点を向け,それらの組織や器官が,どの経絡・どの臓腑と関連しているのかを明らかにしたものである。
 したがって本書と前著『古典から学ぶ経絡の流れ』は,表裏一体を為すものであると考える。
 本書の執筆は前著が刊行されてから,ほとんど間を置かず始まったが,ある程度の完成を見て,今回出版する運びとなるまで5年の年数がかかってしまった。
 勿論,不十分な点が随所に見られるのは承知のうえだが,本書が礎となって,さらに掘り下げた形体論が将来,書かれることを期待している。
 5年前,簡単な企画書と目次をご覧になっただけで,出版を約束された東洋学術出版社の井ノ上社長,また,編集者の立場で執筆者の拙稿に辛抱強く,お付き合いくださった編集部の森由紀さんに深く謝意を申し上げる。
 

2022年6月
浅川 要