▼書籍のご案内-序文

黄帝内経概論

まえがき

 新中国が成立してからのち,筆者はもっばら世界医学史との比較に重点をおきながら,中国医学史を研究してきた。そこでまず最初に手がけたのが『黄帝内経』である。以来12年,『黄帝内経集解』48巻(『素問集解』24巻,『霊枢集解』24巻)を完成したが,整理して手を加えるのに,なお日時を要する。ここに,あらかじめ『黄帝内経』に関する数篇の論文を発表し,識者の御指正を仰いで,誤りは正し,拙著が一日も早くより完璧なものとなることを希う次第である。
 その他,『神農本草経』や『張仲景方』,漢魏六朝の亡佚医書や唐宋の医方等についても初歩的な研究を行い,原稿は机上にうず高く積まれている。それらは整理して後日発表したい。
 わが国の医学史は,いまだ世界医学史上に空白となっている。この空白を填めることは,我々自身の努力を俟たねばならない。もし,本書が同好の者の関心を喚起し,奮気を促し,力を結集せしめることができるならば,近い将来その空白を完璧に填め,我々の祖先の偉大な業績を発揚して,向学心を一段と強化できるであろう。これこそが,私の願いに他ならない。

1962年 労働節の日に
龍 伯 堅