▼書籍のご案内-序文

中国鍼灸各家学説

はじめに

 国家組織によって編纂・審査された高等中医院校の教材は初版以来すでに二十余年が経過した。その間数次にわたる改定と再版がおこなわれ、中医薬理論の系統的な整理や教育体系の整備、中医学教育の質を高める上で大きな効果をあげている。だが、中医学のたえまない発展によって、現在用いられている教材は現今の教育や臨床、科学研究の要求に答えられなくなっている。
 教材の質を高めて高等中医薬教育の発展を促すために、一九八二年十月に衛生部は南京で全国高等中医院校中医薬教材の編集審査会議を招集した。そこで最初の全国高等中医薬学教材編集審査委員会が成立し、三十二の学科にわたる教材編纂グループが組織された。各科の教学大綱は、新たに改正された中医学、中医薬学、鍼灸それぞれの専門分野ごとの教学計画にもとづいて改訂された。各学科の編纂グループは新たな教学大綱にもとづいて懸命に新教材の編纂を推し進めた。各学科の編纂過程には、衛生部が一九八二年に衡陽で開催した「全国中医学院並びに高等中医教育工作会議」で取り決められた精神が貫かれている。それは、それまでの数版の教材の長所を汲み取り、各地の教育関係者の意見をまとめること。新教材ではできる限り中医理論の科学性、系統性、包括性を保つようにつとめること。理論は実際と関連するという原則を守ること。継承と発展の関係を正しく処理すること。教材内容のレベルについては、それぞれ教育課程の性質と役割をまずおさえ、教育現場の要求に合致し、各専門教科の発展にふさわしいレベルであること。各教科の基礎理論、基本知識、基本技能についてはもれなく記述すること。さらにできるだけ各教科間に重複と食い違いが生じないようにすること、などである。編集委員すべての努力と全国の中医院校の協力によって新教材はつぎつぎと編纂されている。
 本シリーズは、医古文、中国医学史、中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学、内経講義、傷寒論講義、金匱要略講義、温病学、中医各家学説、中医内科学、中医外科学、中医小児科学、中医婦人科学、中医眼科学、中医耳鼻咽喉科学、中医傷科学、鍼灸学、経絡学、?穴学、刺灸学、鍼灸治療学、鍼灸医籍選、各家鍼灸学説、推拿学、薬用植物学、中薬鑑定学、中薬炮製学、中薬薬剤学、中薬化学、中薬薬理学など三十二部門にわたっている。そのうち、初めて編纂されるものも少しはあるが、多くの教材はもとの教材、とくに第二版の教材をもとにして内容を充実させ改訂して編纂されている。したがって、この新シリーズの教材にはこれ以前の版に携わった編纂者の成果も含まれているのである。
 教材は専門家を養成し、専門的知識を伝える重要な道具である。したがって教材の質のよしあしは人材の養成に直接影響する。教材の質を高めるためには、つねに内容に検討を加え、修正を施すことが不可欠である。本シリーズの教材にも、不十分なところがあるかもしれない。各地の教育関係者と多くの読者には、実際に使用されて貴重な意見を寄せられることを切に希望する。それらの声は、より高い科学性と、優れた教育効果を備えた教材づくりへの基礎となるであろう。このことは、中国社会主義四つの現代化と中医事業の発展に応える道でもある。

全国高等中医薬教材編纂審査委員会
一九八三年十二月


編纂にあたって

  『各家鍼灸学説』は高等中医院校鍼灸専門課程に新設された教科である。教学大綱が設けられたのも、また教材が作成されたのも初めてであるし、大綱が決定されて後にも教材の校訂が幾度かにわたっておこなわれたので、大綱と教材の内容とは完全に一致していないかもしれない。各院校が教育を進める中で必要に応じて調整されたい。
 本教材はもとの大綱の「附論」に収められていた陳延之、王惟一、許叔微、席弘、陳会、劉瑾、王国瑞、徐鳳、汪機、楊継洲、張介賓、呉亦鼎を「各論」に入れたほか、あらたに巣元方、荘綽、李、鄭宏綱、夏春農を付け加えた。教材には八大流派、四十家の学説とその医学史上の功績、および五部の古代医籍がもたらした鍼灸学上の成果が収載されている。
 本書の総論と附論は江西中医学院の魏稼が担当した。各論部分については、何若愚、竇黙、王国瑞らを上海中医学院の呉紹徳が、張従正らを河南中医学院の邵経明が、徐鳳、汪機、高武、呉亦鼎らを江西中医学院の彭榮が、王執中らを南京中医学院の李鋤が、巣元方、竇材、席弘、陳会、劉瑾、李、楊継洲、鄭宏網、夏春農らを魏稼がそれぞれ執筆した。このほか、湖北中医学院の孫国傑、北京中医学院の耿俊英、浙江嘉興市第一人民医院の盛燮が部分的に草稿を執筆した。各論の初稿が出来上がってから、彭榮がまず修正を加え、最後に魏稼と呉紹徳が全書にわたって修訂と文章の統一をおこない、邵経明および江西中医学院の王建新と謝興生がすべての引用文の校訂および訂正をおこなった。また、本書の完成に当っては中国中医研究院鍼灸研究所の鄭其偉のご支援を得た。
 本教材を審査し決定する会議には、上記の各氏の外に、全国高等医薬院校中医教材編集・校閲委員会副主任委員で南京中医学院教授の邱茂良、上海中医学院教授の裘沛然、上海中医学院副教授の李鼎、浙江中医学院副教授の高鎮伍、陜西中医薬研究院の陳克勤、北京中医学院の徐皖生、原の諸氏に加わっていただいた。
 本教材は、中央衛生部が一九八二年十月に南京で開催した全国高等中医院校教材編纂委員会で決定した精神に則って編集・執筆されたものである。三年余の時間をかけ、三度にわたる原稿審査会議をもち、そのあいだ何度も手直しを加えたが、いたらない点があることと思う。それぞれの学校で使用され、どうか御意見をお寄せいただきたい。今後の完全な教材つくりのための参考にさせていただきたい。

編 者
一九八六年十二月


序言

 各家鍼灸学説は鍼灸医学の新しい研究領域で、歴代の医家、鍼灸家の鍼灸学説やさまざまな流派の学問の研究をテーマとする。
 各家には、中医薬の分野において功績を残した歴代の中医専門家だけではなく、実績を残した鍼灸専門家も当然含まれる。
 学説とは学術的に体系づけられた主張、見解、理論のことである。流派とは、学術上の観点や思想、見解、あるいは主張や風格、傾向および臨床に対する方法が基本的に一致する学者が形成するグループのことである。この学説と流派との間には密接な関係があるので、鍼灸流派も研究テーマの一つとなるのである。
 各家鍼灸学説を学ぶ目的は、つぎの二点にまとめられる。
 一、歴代の医家はどのような鍼灸学術思想と理論を持っていたか、どんな功績を残したのか、その思想的な源はどこにあり、どんな影響を後世に残したのか、またどの流派に属していたのかなどを熟知することによって、学ぶべき理論的知識と基本的技能をよりいっそう豊かにすること。
 二、歴代の医家経験から教訓をくみ取り、それを教育、臨床、研究の参考として役立てること。過去の経験から学んで未来への展望を切り拓くために、先人の成果を今に役立てるという原則に徹することは、鍼灸医学の発展をいっそう加速させる効果があるだろう。
 教科過程で学生に教育しなければならないことは以下の諸点である。
 一、新学説が提唱され新流派が成立したことの持つ意義の重要性を理解すること。
 二、各家の生涯とその著作、学説、学術思想、学術成果などに関する知識を十分に身につけること。
 三、各家の鍼灸学説と流派の誕生、形成、発展や、それらが歴史上に占める地位、はたらき、相互の関係、影響について、全体的に把握し正しく評価すること。
 四、鍼灸医学の発展過程を系統的に理解すること。
 五、仕事に従事する中で多くの優れたものを広範囲に収集し、先人の経験から広く教訓を汲み取る能力を身につけること。
 六、古代の鍼灸文献を探して研究する初歩的な方法も習得すること。

全国高等中医薬教材編纂審査委員会
一九八三年十二月