▼書籍のご案内-序文

『続・針師のお守り―針灸よもやま話―』

  まえがき


 本書は二〇〇〇年に刊行された新書版『針師のお守り』の続編である。
 前作の『針師のお守り』は『中医臨床』八〇号までに掲載された「針灸よもやま話」を『中医臨床』創刊二〇周年を期して一冊にまとめたものであるが、本書ではその後を受け、二〇〇〇年以降の『中医臨床』に掲載された「鍼灸論壇」「エッセイ」「近況雑感」を一冊にまとめている。
 巻末に各篇の『中医臨床』掲載号の一覧を付してあるが、その表をみてもわかるように、本書の目次は『中医臨床』の掲載順とした。
 針灸療法はいうまでもなく、単なる金属製の針と蓬を乾燥して晒した艾を使って治療するもので、針や艾それ自体にはほとんどなんらの治療効果もない。針灸の治療効果とはそうした道具を使う鍼灸師の技量とさらには鍼灸師の人間性に大きくかかわっている。
 日本でも数多くの針灸書が世に出されてきた。しかし、その圧倒的多数は針灸の基礎知識や、技量に関するものや、鍼灸師の心構えといった類で、鍼灸師としての立ち位置から日本の医療なり、社会を見てきた素の姿はなかなか見えてこない。
 本書は、四十年間、針灸治療に携わってきた筆者が、様々な場面で心に浮かんだ針灸に関連する事象を、自分の言葉で語ったものであり、できるだけ自分の素直な考えをさらけ出してきたつもりである。
 本書には、個人的な狭隘な視点や、誤った理論展開がなされている部分も多々、含まれているかもしれないが、それはそれで良しと思っている。本書を読まれた方が、本書の内容に対し、肯定するにしろ否定するにしろ、なんらかの興味を針灸に持っていただければ、筆者の思いは十分である。


二〇一五年一月 東京猿楽町の地にて

浅川 要