▼書籍のご案内-序文

『新・針師のお守り―針灸よもやま話―』

 
  まえがき


 『中医臨床』誌二〇一五年三月号(一四〇号)から二〇一八年十二月号(一五五号)まで掲載した「近況雑感」が本書に収録されている内容である。
 本書は章篇としては十五篇で、『針師のお守り』の四十一篇、『続・針師のお守り』の二十六篇に比べるといささか少ないのだが、表を多用した篇がいくつもあり、また個々の篇の文字数も前二冊に比べるとかなり増えており、分量的には前二冊とさして変わらないので、このへんで一冊にまとめておこうと思い立ったものである。
 各篇の表には長いものも多く、各篇の文中や文末に入れると読者が読みにくいのではと考え、一部を除き、附表として、巻末に横組みですべてまとめた。
 したがって、本文は縦書き、表は横組みとなり、巻末の附表は後ろから前に向かって見ていく形になっている。
 本書の特色は「東京中医鍼灸センター」、「お腹の治療」、「ビワの葉灸」、「肩の散鍼(単刺)」、「下の法」などの篇が盛り込まれている点であろう。なぜなら、これらの篇には、自分自身が長年多くの病気と向き合ってきたなかから創り出した鍼灸療法の考え方とその実際の治療内容が、具体的に示されているからである。
 ここで書かれた通りの鍼灸治療が、東京中医鍼灸センターでは現在、日々行われているので、本書を手に取られた鍼灸師、とりわけ鍼灸学校を卒業されて日の浅い方々が、ご自分の鍼灸治療において何らかのヒントを本書から得られるならば、本書を出版した目的はなかば達成されたといっていいであろう。
 なお誤解されないように一言、付け加えておくが、「近況雑感」もしくはそれと同様の雑文は、何らかの理由で筆を折らざるを得なくなるまでは、これからも『中医臨床』誌上に書き続けるつもりでいる。そして、もし筆を下した時点でそれがある程度のまとまった文量になっていれば、『完・針師のお守り』とでも題して、世に出そうと考えている。
 本書の出版に際しては、附表が多いことを理由に、東洋学術出版社の井ノ上編集長にかなり強引に成書化をお願いしてしまった。この紙面を借りて改めてお礼申し上げる。
 
 

二〇一八年十二月 東京猿楽町の地にて

浅川 要