▼書籍のご案内-序文

『臨床に役立つ 奇経八脈の使い方』本書について

 
本書について
 
 
 本書は,「第1章 奇経八脈についての基本的な解説と考察」「第2章 生理作用における奇経八脈の役割」「第3章 奇経八脈を用いた治療システム」「第4章 奇経八脈治療のバリエーションを考える」「第5章 奇経八脈による婦人科疾患の治療」「第6章 中医学の治法から考える奇経治療」「第7章 奇経八脈と姿勢バランスについて」の,7つの章から構成されています。
 第1章における奇経脈の流注は『奇経八脈考』にもとづいて解説していますが,経脈の流注というと読者的にはあまり面白みのない項目であると思いますので,臨床的な見地から解説しています。
 第2章の奇経脈の生理作用は,本書の根幹をなす部分です。これまでの奇経学に最も足りなかったのは,生理作用に対する考察だと考えています。奇経脈の生理作用を明らかにすることで,奇経脈の存在理由を明確に示すことができたと自負しています。
 第3章では,奇経脈を用いた治療システムに言及しています。特に八脈交会穴が選穴された理由は,未だ誰にも解明されていません。私も25年考え続けて,その答えが子午流注理論によって解決しました。また按時配穴法についても,解明されていなかった事柄を子午流注理論によって解明することができました。
 第4章では,八脈交会穴治療以外の奇経治療を提示しています。奇経脈に対するアプローチの仕方が増えれば,臨床におけるさまざまなケースに対応することができるようになります。このことは,患者にとっても治療家にとっても有益であることはいうまでもありません。
 第5章では,婦人科における奇経治療について論述しています。既存の中医婦人科学に拠る弁証分類・病因病機や治法について,新しい見解を多数述べさせていただきました。中医基礎理論にのっとり,論理的に見解を構築したつもりです。ここでは,弁証にもとづいた正経治療と奇経治療をともに記述しています。
 第6章では,婦人科疾患以外に奇経治療を行う場合に基本となる治法について述べています。また,治法にもとづいた奇経治療の例として,睡眠異常・哮喘・アトピー性皮膚炎をあげて解説しています。
 第7章では,奇経脈経筋という新しい認識を提唱させていただき,身体の姿勢バランスを調整する方法に言及しています。
 近年,鍼灸学の書籍における奇経脈に関する記述の現状は,まったく同じ内容のものが多く見受けられます。または,出来合いのものに多少手を加えただけのものが多いようです。私も恩師の山下詢先生の研究をさらに発展するべく努力してきましたが,私なりのオリジナルな理論に到達できたと考えています。第2章と第3章は,他では読むことができない,斬新で濃密な内容であることを読者の皆さんにお約束します。