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中医伝統流派の系譜


序  小曽戸 洋

はじめに

通俗傷寒派 
 学術的特徴
  一、 広義の傷寒を研究対象とした
  二、 六経を強調している
  三、 民間の医療経験をうまく吸収した
  四、 宣伝と普及を重視した
 代表的人物
  一、 通俗傷寒派初期の代表的人物、朱肱
  二、 臨床に精通していた陶華
  三、 傷寒夾証を重視した戈維城
  四、 夾虚傷寒の治療を得意とした張景岳
  五、 博く医学者たちの学説を集めて整理した張ロ
  六、 温病学説をうまく取り入れた呉貞と章虚谷
  七、 通俗傷寒派を集大成した兪根初および「紹派傷寒」

温疫派
 学術的特徴
  一、 温疫病を主要な研究対象とした
  二、 温疫の病因の特殊性を強調した
  三、 温疫には安定した基本病機があると主張した
  四、 治療は去邪を第一とした
 代表的人物
  一、 熱病の師・劉完素
  二、 石膏を活用した繆仲淳
  三、 温疫派の第一人者呉又可
  四、 大剤による解毒を主張した余霖
  五、 河間を手本とした楊栗山
  六、 疫痧治療を得意とした陳耕道
  七、 伏邪の攻撃を主張した蒋宝素

温熱派
 学術的特徴
  一、 温病と傷寒の違いを強調した
  二、 新感温熱病の治療を得意とした
  三、 衛気営血弁証と三焦弁証を考案した
  四、 治療に緩急を用いた
  五、 養陰生津を重視した
  六、 開竅剤を活用した
  七、 湿治療を得意とした
 代表的人物
  一、 温熱病の大家、葉天士
  二、 『湿熱病篇』で有名な薛生白
  三、 三焦弁証を提唱した呉鞠通
  四、 温熱学説を集大成した王孟英
  五、 『外感温病篇』を著した陳平伯

伏気温熱派
 学術的特徴
  一、 伏気から温病が生まれることを重視した
  二、 六経弁証を基準にした
  三、 陰を助け邪を追い出すための治療法を重視した
  四、 伏温証治

瘀経典傷寒派
 学術的特徴
  一、 温熱派の理論を否定した
  二、 実効性を重視し、経方の使用を推奨し、軽剤を用いて即効性を
      追及することに反対した
 代表的人物
  一、 『傷寒論』を固守した陸九芝
  二、 三焦学説を排斥しようとした惲鉄樵
  三、 『傷寒論』による温熱病治療こそが正統であると主張した章巨膺
  四、 扶陽を重視し、五段論を提唱した祝味菊
  五、 葉・呉学説を排斥しようとした謝誦穆

易水内傷派
 学術的特徴
  一、 病因のうち、正虚という要素に注目した
  二、 陰陽五行学説を強調した
  三、 補脾と補腎を得意とした
  四、 新たな処方の考案を提唱した
 代表的人物
  一、 初期を代表する張元素
  二、 脾胃内傷学の創始者、李東垣
  三、 常に五臓弁証によって治療した薛立斎
  四、 五行制化論による治療を得意とした周慎斎
  五、 命門の火の補養を得意とした趙献可
  六、 形体に精を充填させることを重視した張景岳

丹渓雑病派
 学術的特徴
  一、 気血の失調が疾病の基本病機であると考えた
  二、 気・血・痰・鬱の調整を得意とした
  三、 専用の処方にこだわらなかった
 代表的人物
  一、 雑病学の祖、朱丹渓
  二、 陰血を重視した戴原礼
  三、 人参と黄耆で補気することを得意とした汪機
  四、 丹渓の気血痰鬱学説を強く提唱した王綸
  五、 丹渓の学説を応用して著書を著した虞天民

弁証傷寒派
 学術的特徴
  一、 六経弁証によって万病を認識できると主張した
  二、 傷寒方による雑病治療を得意とした
 代表的人物
  一、 『傷寒論』の弁証論治体系を発掘した方有執
  二、 六経定法を提唱した舒馳遠
  三、 『傷寒論』の本来の意味を明らかにした程応旄
  四、 『傷寒論』の治療法があらゆる疾病を対象としていることを
      強調した柯韵伯
  五、 張仲景の処方による雑病治療を得意とした余聴鴻

経典雑病派
 学術的特徴
  一、 漢唐医学の伝統を継承し、各疾病に専用の治療法を確立するよう
      強く提唱した
  二、 方剤と薬物の研究を重視した
  三、 総合療法を重視した
 代表的人物
  一、 医学界に法と律を定めた喩嘉言
  二、 『張氏医通』で名を馳せた張ロ
  三、 時代の悪弊に針で対抗し、古代理論を復興させた徐霊胎
  四、 とくに古方を好んだ尤怡
  五、 『雑病源流犀燭』の著者、沈金鱉
  六、 経典と古方に傾倒した陳修園
  七、 醇正な医学に回帰するよう主張した臨床医、費伯雄

正宗派
 学術的特徴
  一、 臓腑気血弁証を重視した
  二、 内科治療は、消・托・補法を得意とした
  三、 外治法のための手法を研究した
 代表的人物
  一、 新旧の架け橋となった陳自明
  二、 脈診を強調した斉徳之
  三、 内外一理説を強く提唱した汪機
  四、 温補法を得意とした薛立斎
  五、 因人制宜を重視した申闘垣
  六、 正宗派の中でも傑出していた陳実功
  七、 外科学を集大成した祁坤

全生派
 学術的特徴
  一、 陰陽を弁証の大綱とした
  二、 腠理の温通を治療の大原則とした
  三、 刀針・手術・追蝕薬の濫用に反対した
 代表的人物
  一、 陰陽で癰疽を区別し、患部の色で陰陽を弁証した王維徳
  二、 半陰半陽という概念を提案した鄒岳

心得派
 学術的特徴
  一、 外瘍と温熱病の発病時の共通点を強調した
  二、 瘡瘍の初期に温散温托法を用いることに反対し、辛涼剤で
      宣解するよう主張した
  三、 陰の滋養に注目した
  四、 疔毒走黄は熱が心包に入るという病理であるという観点から治療した
 代表的人物
  一、 新境地を切り開いた外科専門医、高秉鈞
  二、 温病の治療法を用いた沙石安

民間医学派
 学術的特徴
  一、 邪を攻撃することによる治療を重視した
  二、 外治法を得意とした
  三、 経験的単方の使用を得意とした
 代表的人物
  一、 汗吐下三法を強く提唱し、邪を攻撃した張子和
  二、 外治法の専門家、呉師機
  三、 鈴医

日本後世派
  李朱医学を広めた先駆者、田代三喜
  曲直瀬道三と「道三流」学派
  劉河間と張子和の学説を信奉した後世派別派

日本古方派
  古方派の祖、名古屋玄医
  一気留滞説を提唱した後藤艮山
  陰陽五行を廃止しようとした香川修徳
  古方派の権威、吉益東洞
  解剖を重視した山脇東洋
  気血水論を提唱した吉益南涯
  多くの医学者たちの長所を広く取り入れた中神琴渓

朝医四象医学
  李済馬の四象医学理論
  四象医学理論を完成させた張鳳永と杏坡
  国境周辺の四象医学者

あとがき

付録 中医伝統流派一覧表

方剤索引

書名索引

用語索引

人名索引