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中医学をマスターする5つのステップ

【書評】『対薬理論でみる方剤学』(松橋 和彦 著)

『対薬理論でみる方剤学』


平馬医院 院長 日本中医薬学会 会長  平馬 直樹


 弁証論治の修行段階では,まず正しく弁証すること,つぎに弁証の結論に適った治法を立て,適切な方剤を選択すること。さらに進んで治療の効果をあげるには,因時・因地・因人制宜などを踏まえた用薬,随証加減を行うなどの処方力が必要になってくる。
 中医処方は複数の薬物の配合からなる。歴代の名処方,優秀処方はその配合に妙がある。その配合の妙を学ぶには個々の中薬の薬性や薬能を学ぶとともに,各方剤の「方意」に習熟する必要がある。方意の解説には,「~を補佐する」「~の薬性を抑える」などの薬物の相互作用の表現が見られ,酸味と甘味,辛味と甘味など薬性の組み合わせの効能,引経薬としての他薬への作用など薬物の組み合わせによる薬効の記述が見られる。方剤の方意を理解するには,方剤中の2味ないし3味の薬物の組み合わせによる相互作用を理解することが肝心である。この方剤を構成する最小単位の2味(または3味以上)の薬物の組み合わせは対薬と呼ばれる。方剤はいくつもの軸を持つ対薬の複合からなっている。処方力を身につけ,高めるためには対薬の知識を身につけ,それを組み合わせて応用する能力が必要である。
 このたび松橋和彦氏の『対薬理論でみる方剤学』が東洋学術出版社から上梓された。松橋氏は,中国留学を機に方剤を理解するために対薬の観点が重要であることに気づき,帰国後も研究を続け,講演や講習会でも対薬の視点から方剤の解説を行ってきたという。
 松橋氏の研究は深く,本書の総論5「対薬と対薬理論」では,対薬の解説に留まらず,2組の対薬が臨床的合理性をもつ対を構成する「対薬対」,さらに2組の対薬対が臨床的合理性をもつ対を構成する「複合対薬対」,2組の対薬の4味の生薬からなる「四合薬」,3味の生薬の配合単位「三連薬」などの概念を提示し,各論ではこれらの高度な対薬理論を用いて,方剤の構成を縦横に解説している。ともすれば複雑で難解な方剤のいくつもの対薬の組み合わせをわかりやすい対薬構成の図で示している。著者の苦心が読者の理解を深めることだろう。
 本書の各論では,重要方剤が解説されているが,対薬理論による方意の説明に留まらず,各方剤の証が基礎理論を踏まえて丁寧に解説されている。中医学の入門者にとってもなじみある方剤の証の解説から方剤の背後にある基礎理論が,そして理論と方剤との結びつきがよく理解できることだろう。豊富な図や表が理解を助けてくれる。
 本書の巻末には「演習症例集」が付され,症例を前にしたときの弁証論治の具体的な手順が学べる。本書を学んだ後,この35例の症例に取り組んでみると,確実に弁証論治の力,処方力が向上していることが確かめられるだろう。
 良書の出版を喜び,中医方剤の理解を深めたい初心者にも熟練者にも精読を勧めたい。松橋氏の長年の努力に感謝したい。




中医臨床 通巻182号(Vol.46-No.3)特集/コモンディジーズの中医治療 ―下痢―
『中医臨床』通巻182号(Vol.46-No.3)より転載



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