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2006年04月 アーカイブ

2006年04月06日

黄煌先生の経方医案を味わう

前回に続いて,黄煌先生に関する中国中医薬報の記事をご紹介いたします。
日本の漢方医の先生方にとって,黄煌先生の経方の応用法はとても参考になるようです。

中国中医薬報 2006.3.31

黄煌先生の医案から経方を味わう
南京中医薬大学  黄 波

黄煌先生は南京中医薬大学の教授で、江蘇省名中医でもあり、「経方医学」に対して深く研究され、経方によって疑難病を治療することを得意としている。
師に就いて処方を学んで長年が経つが、その熟練した方剤の使い方と高い臨床の効果にはいつも敬服させられる。
ここに現在黄煌教授のいくつかの臨床症例を示して、皆と共に経方の魅力を感じ取りたい。

症例1.桂枝茯苓丸加減で瘀血証の脱毛症を治療

王某、女性、53歳。
2005年8月4日に,江蘇省中病院にて受診。
体格は比較的にしっかりしている。長年にわたって脱毛に苦しみ、毎年秋季になるとひどくなり、近ごろでは毎日100本近くが抜け落ちるようになった。
酒さ鼻がみられ、血液粘稠度は高め。
最近ときどき頭がくらくらして顔が紅くなり、朝に関節のこわばり感があって、下肢の皮膚が乾燥、すぐに煩躁し、よく眠れず、唇の色は暗紅色。
黄煌教授は桂枝茯苓丸加減を処方した。:桂枝15g、赤芍15g、茯苓20g、牡丹皮10g、桃仁12g、製大黄5g、川芎10g、紅花6g。
半月後の再診時の患者の話では,服薬後に明らかに脱毛量が減り、1週間後には毎日60数本が抜け落ちていたが、今は毎日26本になっているとのこと。
睡眠状態も好転し、情緒も改善したという。
原方をそのまま続けて服用したところ、現在では脱毛はすでに止まって、顔色は潤沢になり、心理状態もよく、下肢の皮膚も潤った。
考察:『金匱要略』では,桂枝茯苓丸を死胎を下らせるための方剤として用いているが、その応用範囲は女性に限らず、臨床においては人体下部の疾病,例えば婦人病、男性の生殖系疾患、下肢静脈血栓、下肢潰瘍などの治療によく用いられている。
同時にこの処方は,ものもらい・にきび・顔面部の脂肪瘤・酒さ鼻・乾癬・虹彩炎・眼底出血・中心性網膜炎・結膜炎などの治療にも応用されているとの報告がある。
黄煌先生は桂枝茯苓丸は瘀血体質の患者に用いるべきものと考えている。
黄煌先生はいわゆる瘀血体質の患者を望診すると、体質は比較的に丈夫・顔色は多くは紅いかあるいは暗紅色,皮膚は乾燥しているかあるいは鱗片がみられる、唇は暗紅色、舌質は暗紫色であるという。
また,腹診すると、腹部は比較的に充実している。
臍の両側は,左側の下腹部がいっそう充実しており、触れると抵抗があって、しかも大部分において圧迫痛がある。
この症例の患者についていうと、黄煌教授は血液粘稠度が高く、唇が暗紅色、酒さ鼻があり、下肢の皮膚は乾燥、よく眠れないなどは,頭部の血液循環が悪いためであり,ゆえに桂枝茯苓丸で通り道をスムーズにし,大黄・川芎・紅花などを加えて頭部および全身の血液循環を改善した。体質の変化に伴って、症状はだんだんと消失した。

                                      つづく
( * さらに症例2がありますが,次回に掲載します。)

2006年04月18日

東京女子医大東洋医学研究所で漢方未病ドック

健康チェックのために,人間ドックを利用する人の数は増加し,その種類も多様化している現代。東京女子医大東洋医学研究所では,今年7月頃に「漢方未病ドック」を開始する予定だそうです。

この「漢方未病ドック」では,脈診・腹診などの診断法,および血瘀・気虚といった東洋医学的な診断所見を用いて未病を捉え,必要ならば東洋医学的な治療も行っていくのだそうです。

漢方未病ドックの目指すものは,次の通り。
・本人の健康への自覚を促す。
・生活改善を通した健康増進
・抗加齢の達成
・漢方医学的アプローチの有用性の検討


近年では,病気を治療する医学だけでなく,予防医学こそ重要であると叫ばれるようになり,国も予防医療重視の方針を掲げています。

日経メディカル3月号には,東海大東京病院に6月から「抗加齢ドック」が開設される予定だという記事が載っていました。抗加齢医療とは,ホルモン補充やダイエタリーサプリメントの摂取,運動などで疾病を防ぎ,若さを維持する予防医療のことだそうです。東海大では,大学には予防医療の研究実施が求められるであろうとの予測と収益面での期待から,流れを先取りして抗加齢ドックの開設に踏み切ったようです。

東京女子医大の「漢方未病ドック」への取り組みもとても先進的なものですが,こちらはあくまで東洋医学的な思想にもとづく養生を目指しているところが,東海大の抗加齢ドックとは大きく異なっています。さらに,漢方未病ドックでは,東洋医学的診断とあわせて西洋医学的な動脈硬化度の測定なども取り入れ,相互の相関についても研究していきたいそうです。

日本の東洋医学を取り巻く環境に,新たな変化が起こっているようです。

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