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2019年01月25日

『腹証図解 漢方常用処方解説[改訂版]』 あとがき

 

あとがき


 
 漢方医学に初めて興味を抱いたのは,昭和44年,母校九大医学部の大学紛争のさなかのことであった。当時大学の医局にいた私は,現代の医療を批判する若い青医連の人達の鋭い問題提起に答える術を知らなかった。
 自分なりに解答を捜そうと,あれこれやっているうちに,漢方医学という,われわれが習ってきた西洋医学とは全く異なる医学の世界があることを知った。しかし,それに入りこむことは,そう簡単にできるものではなかった。
 漢方を学ぶ機会を得たのは,ひとえに恩師寺師睦宗先生にめぐり会えたお蔭である。
 寺師先生の主宰される漢方三考塾に於いて,先ず,医経(素問,霊枢)を学んで病理を考え,経方(傷寒,金匱)を学んで方考を究め,本草(本草学)を学んで薬性を知ることが,漢方修得の基本であることを教えられ,以後授業ではこの三本の柱を徹底して叩き込まれてきた。
 先生は第一期の終講にあたって,全塾生に対し,今迄に勉強したことの成果を何でもよいから,各自一冊の書物にまとめるようにと厳命された。浅学非才の身には,到底大論文をものにして,新説を掲げるというようなおおそれたことは望むべくもないので,自習用に作っておいた処方運用の覚え書きに,塾で教わった事柄を書き足して一冊にまとめ,宿題の責を果たすことにした。
 「知ル者ハ言ワズ,言ウ者ハ知ラズ」という。私がここで敢えて小冊にまとめるのは,わたしが何も知らないからである。お読み下さった諸賢兄に忌憚のない御批判,御叱責をいただければ,私にとっては何よりの勉強をさせて頂くことになる。
 上梓に当り,全処方の腹証のイラストを描いて下さった三木(旧姓太田)早苗さん,いろいろお世話下さった津村順天堂(現 ツムラ)の山上勉,中西琢郎の両氏に深く感謝の意を表する。
 

昭和63年初夏 髙山宏世識す


 

『腹証図解 漢方常用処方解説[改訂版]』 改訂版 発行にあたって

 
 

改訂版 発行にあたって


 
 昭和63年(1988年)の初版発行以来,読者の皆様から『赤本』の愛称で望外のご好評をいただき,多くの方々にご愛用いただいて今日まで参りました。
 平成10年(1998年),本書の内容を補充する目的で『古今名方 漢方処方学時習』(青本)を,さらに平成15年(2003年)には,漢方医学の基礎理論と日常的な疾患や症状に対する漢方処方の選び方をわかりやすく説いた『弁証図解 漢方の基礎と臨床』(黄本)を出版,三考塾叢書三部作として完成させました。
 これらの活動に対しては,平成17年(2005年)富山市で開かれた第56回日本東洋医学会学術総会で日本東洋医学会奨励賞を授与されました。これもひとえに読者の皆様方のご支持のお陰と感謝いたしております。感謝の気持を表すうえで,何か皆様方のお役に立てるようなわかりやすい参考書はないものかと考えた末,平成20年(2008年)に『傷寒論を読もう』を,また平成28年(2016年)には『金匱要略も読もう』を東洋学術出版社より刊行いたしました。
 このような活動のなかで,本書も第59刷まで増刷を重ねてきましたが,最近「赤本を買いたいがどこの本屋にも売っていない」「赤本はどこで売っているのかサッパリわからない」などといったお叱りを少なからずいただくようになりました。かねがね私家版であるが故の限界と制約を痛感していたところでしたが,ちょうどそのような折,井ノ上匠社長のご尽力で東洋学術出版社に本書の刊行を引き継いで頂けることになりましたので,第60刷以降は東洋学術出版社より従来と同じ内容・体裁・価格で本書の出版を続けることができました。
 その間,増刷を重ねるごとに字句の誤りを正すのはもちろん,本版でも内容を今までよりわかりやすい表現に改定して,少しでも使いやすいように改良を加えて来ました。また,従来の「効能」の欄が「漠然として情報不足」というご指摘がありましたので本改訂版から「臨床応用」と改め,その処方の証によって起こり得る病名をいくつか例示するとともに,他の処方とも比較検討できるように症状・病名索引を設けました。いうまでもなく,これらの病名は適応症とは別のものです。今回の改訂にあたっては編集部の森由紀さんに多大のご尽力を戴いたことを深く感謝いたします。
 これからも『赤本』をご愛読・ご愛用のほどよろしくお願い申し上げます。
 

平成30年(2018年)大暑の日
東京虎ノ門の寓居にて 髙山 宏世


  
 

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