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2018年04月 アーカイブ

2018年04月19日

実践東洋医学[第1巻 診断篇] 序

 

 
 本書は,あくまで東洋医学の考え方に立脚して,病気の見方・考え方をやさしく解説したものである。
とかく医学は1つだと思い込みやすい。これは,明治より西洋医学的思考に慣らされたためであろう。たとえば学問的には動物であるが,社会的には魚と思われているクジラや,西洋画と日本画のように,世の中にはさまざまな見方・考え方がある。これは常識的とさえいえる。じつは,西洋医学と東洋医学も同様である。つまり,この両者は,まったく異なった医学体系である。東洋医学の存在理由はそのためといえる。
 幕末に,西洋医学が入ってきたとき,当時の漢方医たちは,まず漢方の考え方で西洋医学を理解しようとした。当時の漢方医にとって西洋医学の理論が難解であったことは想像に難くない。しかしそれでは非効率と気付き,すぐに西洋医学の考え方そのものを学習しようとした。日本で西洋医学が著しい発展を遂げたのは,よく知られるところである。西洋医学の考え方ではなく,東洋医学の考え方そのもので解説しようとしたのは,このためである。
 さて,たとえば「虚」という漢字をわれわれ日本人は,「うつろな」「むなしい」「よわよわしい」というふうに感じてしまう。故に虚証と聞くと,弱々しい人と思ってしまうのではないだろうか。本来はそういう意味ではなく,「あるべきものがなくなった」という意味である。漢字が出来てから数千年が経つうちに,漢字の意味が少しずつ変化しているからであろう。つまり,東洋医学理論が難しいと思う一つの理由は漢字にある。私たちはなまじ漢字を知っているが故に,漢字の意味を限定して考えていることに気づかない。
 そこで優しい言葉であったとしても,用語はその漢字の解説を施した。また,症例をなるべく多く入れ,東洋医学的な病態理論・方剤の解説を心がけた。
 本書の出版にあたっては,新井悦子様をはじめ吉祥寺東方医院の職員の方々にたいへんお世話になった。心よりお礼を申し上げる。本書を父母,妻政子,清香,純香に捧げる。


平成30年2月 そのなるをことほぐ日に 三浦於菟



実践東洋医学[第1巻 診断篇] 本書を読むにあたって

 
本書を読むにあたって
 
 本書は,『実践東洋医学』全3巻シリーズの第1巻にあたる。本シリーズは,東洋医学の考え方にもとづく病気の見方・考え方を平易に解説したもので,チャート図や表を豊富に収載して視覚的に理解を助ける工夫をしたほか,適宜,症例を織り交ぜながら東洋医学の病態理論・方剤の解説を心がけた点に特長がある。
 第1巻では,まず東洋医学の特徴・診断方法について解説した後,主要症状(寒熱症状・発汗・疼痛・月経異常等)の診断について紹介する。
 
【記号・符号の意味】
 † 巻末の「用語解説」に解説がある用語を示す。
 注 注釈を示し,符号を記した節の最後に解説がある。
 ※ 注釈を示し,記号のすぐ近くに解説がある。
 POINT 著者が特にポイントになると考えた箇所。
 原文 古典の引用。
 * 医療用漢方製剤にない方剤を示す。巻末に組成を示している。
 
【第2巻の章立て】
 第1章 生理理論の基礎
 第2章 病態理論の基礎1
 第3章 病態理論の基礎2
 第4章 治療理論
 
【第3巻の章立て】
 第1章 臓腑理論
      Ⅰ 臓腑総論
      Ⅱ 各臓腑の生理と病態
      Ⅲ 臓腑合併病態
 第2章 傷寒と温病理論概説

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