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2005年09月 アーカイブ

2005年09月16日

ただいま研修旅行準備中!

 はじめまして。中医の連絡帳ブログへようこそ!
東洋学術出版社主催の「南京中医薬大学研修旅行―老中医に学ぶ旅」は、申し込み締切日を迎え、男性6名、女性4名の10名の先生方にご参加お申し込みをいただきました。病棟でじっくり研修するのには最適の人数で、とてもよかったです。
 旅行の詳細はただいま調整中ですが、決まり次第また参加者の皆様にお知らせしてまいります。充実した中医学の研修ができるよう、これから参考となる情報・資料なども提供していきたいと思います。いろいろな中医の話題も書き込んでいくには「ブログが便利かな?」と思いつき、このたびはじめてブログにチャレンジしてみました。ときどき覗いてみていただけるとうれしいです。
 出発までまだ2ヶ月以上ありますが、いまからわくわくしながら準備していこうと思います。では、よろしくお願いいたします!  編集部S.

2005年09月17日

地黄のお話

2005.9.16に東京臨床中医学研究会で定例会があり、地黄が取り上げられました。
臨床に役立つ生薬のお話,ちょっとご紹介します。

地黄には、「生地黄」と「熟地黄」があり、中医学をやっている先生方はあたりまえのようにそれぞれを使い分けています。
「生地黄」は地黄を乾燥したもの、「熟地黄」は蒸してから乾燥したもの(酒で煮てから調整することもある)です。
ちなみに教科書によれば、前者は甘苦寒、清熱涼血・養陰生津。後者は甘微温、養血滋陰・補精益髄と書かれています。

しかし,『神農本草経』には乾地黄があるのみで,蒸して乾燥する地黄は記載されていません。
蒸したものが使われるようになったのは,700年代以降だということです。
そして『神農本草経』には,「地黄は生のものがもっともよろしい」と書かれています。

生の地黄は白色であり、天日乾燥しただけのものは薄い茶色に仕上がります。
いっぽう日本で出回っている地黄はというと,みな真っ黒な色をしています。
じつは日本薬局方の規定に「色は黒」としっかり決められているのです。

そこで生地黄を,『神農本草経』にあるように,なるべく生に近いもので使いたい場合に,以下の地黄を選ぶ方法があります。
栃本天海堂では「生干(きぼし)地黄」という商品を出しています。また,ウチダ和漢薬からは「中式(ちゅうしき)地黄」という,火力乾燥と天日乾燥を用いて調整した褐色〜紫褐色の地黄が出されています。

使い分けされている先生の,臨床での手応えをぜひお聞きしてみたいですね。

2005年09月18日

中医会話ことはじめ ―咳の患者さん

今回の研修旅行には、もちろん通訳さんがつきます。
でも、きっと研修先では「中医師の先生と患者さんの会話がちょっとでも聞き取れたらな〜」と、誰もが感じるのでは…?
この旅をきっかけに、少しずつ中医臨床会話を覚えてみませんか。

さて、以下は咳の患者さんを先生が診ているときの会話です。
中文のピンインの声調は,1が高い音・2が上がり調子・3が低い音・4が下がり調子・数字なしは軽い音です。
ぜひ声に出して練習してみてくださいね。

医生:你発熱、怕冷麼?(ni3 fa1 re4、pa4 leng3 ma?)
医者:熱があって悪寒がしますか?

患者:没有。(mei2 you。)但嗓子痛,痰很多,一咳嗽,胸脘部就牽引疼痛。(dan4 sang3 zi tong4,tan2 hen3 duo1,yi1 ke2 sou4,xiong1 wan3 bu4 jiu4 qian1 yin3 teng2 tong4。)
患者:ありません。でものどが痛くて痰が多く、咳をすると胸のわきに引っ張られるような痛みがあります。

医生:痰是什麼顏色?(tan2 shi4 shen2 me yan2 se?)
医者:痰はどんな色ですか?

患者:淡黄色。(dan4 huang2 se4。)
患者:薄い黄色です。

医生:痰是稀薄的,還是粘稠的?(tan2 shi4 xi1 bo2 de,hai2 shi4 nian2 chou2 de?)
医者:痰は薄いですか、それとも粘ったものですか?

患者:粘稠的。(nian2 chou2 de。)
患者:粘っこいです。


まずはここまで。中国語の漢字を入れるのがけっこう大変でした。
ピンインも記号が使えないので,慣れないと読みづらいですね。
でもまたちょっとずつ,進めていこうと思います。

2005年09月20日

北京中医薬大学の授業を視聴できるHP,ご紹介します!

北京中医薬大学の授業を視聴できるHPを教えてもらいましたので,ご紹介します。
ご興味があればご覧ください。

02be03e8.jpg

田徳録先生の中医内科学や,王綿之先生の中医方剤学などがあります。
でも残念ながら,中国の授業なので,中国語ができないとわかりません…。
でも雰囲気だけは味わえます(?)


2005年09月21日

老中医のはなし 周仲瑛先生

49409b50.jpg『方薬心悟―名中医処方用薬技巧』(黄煌主編,江蘇科学技術出版社)という本のなかに,江蘇省の老中医へアンケートを行った際の回答がまとめられていて興味深いです。
そこから,今回の研修旅行でお会いできる予定になっている老中医のお一人,周仲瑛先生のご回答を一部ご紹介します。


周仲瑛,男性,1928年生まれ。南京中医薬大学教授。

●最も崇拝する医学家:張仲景,孫思邈,朱丹渓,李東垣,葉天士。
●中医の必読書:『内経』,『傷寒論』,『金匱要略』,『温疫論』,『温病条弁』,『景岳全書』,『類証治裁』,『本草綱目』。
●治学格言:「勤読精思,博採衆長」(一心に励んで書を読み深く思考し,広く他人の長所を吸収する。)
●医者としての準則:死に瀕する者を救い負傷者を助け,職務に忠実であること。
●最も治療を得意とする疾病:高血圧症,肝炎,流行性出血熱,慢性胃炎,慢性気管支炎,喘息。
●最も応用を得意とする薬物:大黄,天仙藤,白薇,陳莱菔英,鬼箭羽。
●最も応用を得意とする処方:小青竜湯,半夏瀉心湯,麻杏石甘湯,栝楼薤白半夏湯,黄連温胆湯。


2005年09月22日

老中医のはなし 夏桂成先生

周先生に続いて,夏桂成先生のご回答の一部をご紹介します。

夏桂成





夏桂成,男性,1932年8月生まれ。
江蘇省中病院 主任医師。

●最も崇拝する医学家:陳自明,傅青主,張景岳。
●中医の必読書:『内経』,『金匱要略』,『傅青主女科』,『婦人規』。
●治学格言:「学習!学習!再学習!学無止境。認真!認真!再認真!一絲不苟。」
(学習!学習!もっと学習!学問に終点はない。真剣に!真剣に!もっと真剣に!1つたりともおろそかにはしない。」
●医者としての準則:「治病治人,人病結合。」
●最も治療を得意とする疾病:不妊症,更年期総合症,生理痛,切迫流産,子宮内膜症。
●最も応用を得意とする薬物:当帰,赤芍,白芍,山薬,鹿角片,五霊脂。
●最も応用を得意とする処方:帰芍地黄湯,滋腎生脈陰,毓麟珠,加味失笑散,生化湯。

2005年09月26日

婦人科・夏桂成先生の周期療法について

夏桂成先生の周期療法は,日本ではイスクラ薬局が最初に注目して取り入れ,系列の薬局で応用されており,不妊症などに対してかなり成果をあげているそうです。基礎体温の低温期・高温期のサイクルを整えることによって,女性の体調は改善し,妊娠率も上がるとのことです。
この周期療法について解説された文献はないかと探していたところ,次のHPを見つけました。以前南京中医薬大学の夏桂成先生のところに研修に行かれた薬剤師さんのHPで,とてもわかりやすく周期療法についてまとめられています。
リンクフリーということなので,クリックしてご覧ください。

沼津・小島薬局HP―周期療法について

本格的な夏先生の論文については南京中医薬大学学報ほか,多くの学術雑誌に掲載されております。
もしご関心のある疾患・テーマなどがあれば,できるだけ情報を集めてお知らせしたいと思いますので,ご要望をお寄せください。

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なお,内容があまりに不適切であるような場合,管理者が削除させていただく場合もございます。
ご了承ください。

2005年09月27日

中医用語に慣れるために その1 舌診

中医の臨床に出て症例を勉強する際には,基本的な診断根拠がとても大事です。そこで診断学を題材にしてみようと思います。
ちょっと会話からは離れたテキストをひっぱりましたが,まずは舌診に出てくる単語のマスターを目指します。

では舌診から,今回は舌色を取り上げます。

望舌体包括色,形,態。(wang4 she2 ti3 bao1 kuo4 se4,xing2,tai4。)
舌診の際には,色・形・状態を観察します。

一,舌色:病理舌色有淡白舌,紅舌,絳舌,紫舌,青舌。(she2 se4:bing4 li3 she2 se4 you3 dan4 bai2 she2,hong2 she2,jiang4 she2,zi3 she2,qing1 she2。
一,舌色:病理的な舌色には,淡白舌,紅舌,絳(深紅)舌,紫舌,青舌があります。

(一)淡白舌,主寒証,虚証。(dan4 bai2 she2,zhu3 han2 zheng4,xu1 zheng4。)
(一)淡白舌は,寒証,虚証にみられます。

多因陽気衰弱或気血不足,致使血液不能充盈於舌所致。(duo1 yin1 yang2 qi4 shuai1 ruo4 huo4 qi4 xue4 bu4 zu2,zhi4 shi3 xue4 ye4 bu4 neng2 chong1 ying2 yu2 she2 suo3 zhi4。)
多くは陽気が衰弱したり,あるいは気血が不足したりして,血液が舌に充満することができないために生じます。

淡白胖嫩為陽虚寒湿,淡白痩薄為気血虚。(dan4 bai2 pang4 nen4 wei2 yang2 xu1 han2 shi1,dan4 bai2 shou4 bao2 wei2 qi4 xue4 xu1。)
淡白色で胖・嫩な舌は,陽虚寒湿にみられ,淡白色で痩・薄な舌は,気血虚にみられます。

(二)紅舌,主熱証。(hong2 she2,zhu3 re4 zheng4。)
(二)紅舌は,熱証にみられます。

多因熱盛,気血湧盛,舌体脈絡充盈所致。(duo1 yin1 re4 sheng4,qi4 xue4 yong3 sheng4,she2 ti3 mai4 luo4 chong1 ying2 suo3 zhi4。)
多くは熱が盛んなために,気血が湧いて盛んになり,舌体の脈絡が満ちることによって生じます。

鮮紅起芒刺為新病邪盛,鮮紅少苔為久病陰虚。(xian1 hong2 qi3 mang2 ci4 wei2 xin1 bing4 xie2 sheng4,xian1 hong2 shao3 tai1 wei2 jiu3 bing4 yin1 xu1。)
鮮紅色で芒刺がみられるのは新たな病邪が盛んであるためであり,また鮮紅色で少苔の場合は長期の罹患によって陰虚となっているために生じます。

(三)絳舌,主熱入営血或陰虚火旺。(jiang4 she2,zhu3 re4 ru4 ying2 xue4 huo4 yin1 xu1 huo3 wang4。
(三)深紅舌は,営血分に熱が入るかまたは陰虚火旺の場合にみられます。

(四)紫舌,主気血運行不暢。(zi3 she2,zhu3 qi4 xue4 yun4 xing2 bu4 chang4。)
(四)紫舌は,気血の運行がスムーズでないときにみられます。

絳紫而乾為熱邪熾盛,気血壅滯;淡紫或青紫而潤為陰寒内盛,寒凝血瘀;暗紫有瘀斑為瘀血阻滯。(jiang4 zi3 er2 gan1 wei2 re4 xie2 chi4 sheng4,qi4 xue4 yong1 zhi4;dan4 zi3 huo4 qing1 zi3 er2 run4 wei2 yin1 han2 nei4 sheng4,han2 ning2 xue4 yu1;an4 zi3 you3 yu1 ban1 wei2 yu1 xue4 zu3 zhi4。)
絳(深紅)または紫色で乾燥した舌は,熱邪が熾烈で盛んなため,気血が壅滞して生じる。;淡紫あるいは青紫色で湿潤した舌は,陰寒内盛のために寒凝血瘀にいたって生じる。;暗紫色で瘀斑がある舌は,瘀血阻滞によって生じます。

(五)青舌,主寒凝或瘀血。(qing1 she2,zhu3 han2 ning2 huo4 yu1 xue4。)
(五)青舌は,寒邪による凝滞あるいは瘀血にみられます。


かたくて面白くない文章でしたでしょうか?
舌形と舌態のテキストを,次回に提示する予定です。
(おそらくちょっと先です。)

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