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中医学の周辺情報 アーカイブ

2006年02月07日

統合医学を求める国際的な動向

 中医学は数千年の歴史をもち、治療効果が認められてきた体系的な伝統医学ですので,例えばサプリメントやアロマセラピー、音楽療法、心理療法などといったさまざまな治療法を含む相補代替医療(CAM)とは一線を画しているはずですが、アメリカでは中医学がこれらの範疇に入れられています。
 統合医療(IM)とは,現代主流となっている西洋医学に、CAMを取り入れた医療で、次世代の新しい医療の形として世界的に注目されてきています。
 そこで中医学を実践する人たちにも、ぜひ統合医療を進める国際的な動きをご紹介したいと思います。

日中韓シンポジウム 2006年2月4,5日の2日間、東京で「国際シンポジウム 日中韓で統合医療を考える」が開催されました。このシンポジウムは渥美和彦先生が率いる日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT)および日本統合医療学会(JIM)の主催で、文部科学省の研究テーマの関連事業として開かれたものです。
 じつはすでに、CAMの効果を評価するために、プロテオーム解析などの最新の手法を用いたバイオマーカーの研究などが、国家予算を投じて進められているのです。
2005年11月末には、「統合医療を実現する国会議員の会」が発足し、いよいよ統合医療の分野が政治的な力も加えて動きはじめました。
 この流れが大きくなっていけば、今後中医学の研究にも国が積極的に関わってくる時代がこないとも限りません。
 
 統合医療をすすめるうえで、もっとも有力視されるのはアジア各国で医学として認められ、治療実績のある伝統医学、つまり中医学・韓医学・漢方などです。なかでも、中国の中西医結合は毛沢東の主導で政策として始められて以来、50年以上の歴史をもつ統合医療の先駆的存在であり、統合の価値と難しさを私たちに示してくれているといえます。

 とはいっても、伝統医学は国の政策や法律によって、その扱いは一様ではありません。中国・韓国では西洋医と同様に国家的に認められた中医および韓医がいて、2種類の医学が共存していますが、一方日本では漢方医の資格制度はないものの西洋医の約70%が漢方薬を処方しているという現状があります。
 近年、WHO西太平洋事務局が中心となって、日中韓の伝統医学の標準統一化が進められています。鍼灸の穴位・伝統医学用語の統一作業は進展していますが、治療ガイドラインの作成に関しては、現段階では無理だと日本は参加をとりやめました。いまもし中医学に準じたガイドラインができてしまうと、日本の大部分の臨床家には中医学のバックグラウンドがないため、そのまま実用化されれば混乱や問題を生じかねません。

 ですが今後、統合医療は世界的な動きとなっていき、伝統医学の国際化・標準化の動きは必至となっていくでしょう。日本の漢方が国際化しようとするとき、おそらく漢方のルーツである中医学を無視することはできません。
 国際化社会に出て行くためには英語を話すのが基本であるように、アジアの伝統医学を世界に発信するには、そのルーツである中医学を共通言語としたうえで日本の長所を語る必要があるように思います。
 日本で培われた漢方のすばらしさを国際的に打ち出すためにも、中医の知識が不可欠になるかもしれませんね。


 …なんて、こんなふうに想像ばかりを並べていると、中医を実践される先生方に
「何が統合だ,何が国際化だ。私は目の前の患者をいかに中医で治すかで忙しいんだよ!」
とおこられてしまいそうです。
 現に、50年前に「中西医結合」1本の方針を掲げていたはずの中国が、いまでは「中医」「西医」「中西医結合」の3本柱なのですから。
 つまり、中国では統合医療を模索した結果、純粋な中医学の臨床価値を見直し、尊重しようという状況にあるのです。

2006年04月18日

東京女子医大東洋医学研究所で漢方未病ドック

健康チェックのために,人間ドックを利用する人の数は増加し,その種類も多様化している現代。東京女子医大東洋医学研究所では,今年7月頃に「漢方未病ドック」を開始する予定だそうです。

この「漢方未病ドック」では,脈診・腹診などの診断法,および血瘀・気虚といった東洋医学的な診断所見を用いて未病を捉え,必要ならば東洋医学的な治療も行っていくのだそうです。

漢方未病ドックの目指すものは,次の通り。
・本人の健康への自覚を促す。
・生活改善を通した健康増進
・抗加齢の達成
・漢方医学的アプローチの有用性の検討


近年では,病気を治療する医学だけでなく,予防医学こそ重要であると叫ばれるようになり,国も予防医療重視の方針を掲げています。

日経メディカル3月号には,東海大東京病院に6月から「抗加齢ドック」が開設される予定だという記事が載っていました。抗加齢医療とは,ホルモン補充やダイエタリーサプリメントの摂取,運動などで疾病を防ぎ,若さを維持する予防医療のことだそうです。東海大では,大学には予防医療の研究実施が求められるであろうとの予測と収益面での期待から,流れを先取りして抗加齢ドックの開設に踏み切ったようです。

東京女子医大の「漢方未病ドック」への取り組みもとても先進的なものですが,こちらはあくまで東洋医学的な思想にもとづく養生を目指しているところが,東海大の抗加齢ドックとは大きく異なっています。さらに,漢方未病ドックでは,東洋医学的診断とあわせて西洋医学的な動脈硬化度の測定なども取り入れ,相互の相関についても研究していきたいそうです。

日本の東洋医学を取り巻く環境に,新たな変化が起こっているようです。

2007年03月23日

中国と海外の合作 ――フィンランドで中西医結合脈管病センターの設立へ

昨年の成都中医薬大学研修旅行では,キ魯光先生の糖尿病足壊疽患者に対する中医治療の成果を目の当たりにしてきましたが,中国中医薬報に上海中西医結合脈管病センターの治療成果にまつわる記事がありました。
フィンランドでは,国際合作として中西医結合の治療センターを設立しようとしているそうです。
以下に,中国中医薬報の記事から抜粋し,紹介します。

 本誌ニュースによると 今年1月中旬、フィンランド・カウォラ市の市政府の主席・依楽波が一行の11人を引き連れて、はるばる上海市の中西医結合医院を見学に訪れ、合作について話し合った。
 彼らには上海市の中西医結合医院の院長・舒志軍らが陪席し、全国中西医結合脈管病センターを実地に視察した。
双方の一歩踏み込んだ会談の中で、フィンランド政府は明確な合作の希望を表明して、中西医結合による脈管病の診療技術を導入して,フィンランドに合作による1つの医療保健センターを建設したいと述べた。
事は2005年3月まで遡るが、フィンランドのテレビ局があるニュースを放送した。それは、一人の下肢に潰爛が生じて17年になる現地の患者が、最終的に中国・上海で中西医結合治療を受けて全快した経緯を紹介するものであった。
このニュースはたいへん大きな反響を引き起こした。
患者は瑪蔕といい、当時の足の瘡口は,およそ両手の手の平大で、表面はとても粗く、液体の浸出が見られ、かゆみと腫痛のために歩行が困難で、夜間に病状はひどくなっていた。
この病気によって,患者の仕事や日常生活に大きな支障をきたしていた。
病気になって17年間、彼は先進近代的な病院を尋ねつくし、多くの西洋薬を服用したが、病状を制御することができなかった。
1人のフィンランド籍の中国系の友人の助けによって、彼は上海市の中西医結合医院,全国中医脈管病センターで治療を受けた。
その時、瑪蔕と家族はちょっと試してみるくらいの気持ちで、1万ユーロの治療費を用意して治愈するかどうかを見極め、お金がなくなったら帰国するつもりだった。
しかし、予想外にも、瑪蔕は1〜2週間の治療の後、症状が明らかに軽減した。そして一カ月以上経つと、潰爛した傷の表面が癒合を始めた。
長年におよんだ頑固な病気は一度に除かれ、すべての治療にかかった費用は予算の1/6だった。
瑪蔕が治愈して帰国した後に、ニュースはフィンランドで速やかに伝えられた。
親友、医師専門家など、好奇心や猜疑心をもった人々が,次から次へと彼を見舞いに訪れ、彼のズボンをまくって、傷の表面で繰り返し触ったりつまんだりして、中西医結合治療の効果に対してしきりに驚き,不思議がった。
フィンランド・カウォラ市の市政府の官吏、専門家が,上海の中西医結合医院に来たのは,このような特色のある医療に向き合うためだ。
依楽波・剛度主席によると、北欧には脈管病に類する疾患に対する治療法がなく、最後の治療手段としては手足の切断手術を行うしか手立てがないという。
瑪蔕が帰国した後に、中医薬結合治療の効果はわれわれに大きな興味を抱かせた。われわれは中医に数千年の歴史があることは知っているが、中医をほんの少ししか理解していない。
フィンランド・カウォラ市の市政府は衛生界の専門家らと話し合い、上海方面と交流・合作を促進することを望んだ。
このたびの考察は印象深いものであり、さらに客観的な理解を深め、双方の協力のもとに、できるだけ早期にフィンランドに医療保健センターができることを望む。
                    (楊国成 王飛)中国中医薬報 2007.3.12

2007年06月05日

広州の林琳先生が来日予定

今夏2007年8月5日(日)に,東京で第5回日本中医学交流会大会が開催されます。
会場は御茶ノ水にある,ホテル東京ガーデンパレス。
メインテーマは,「感染症に対する温病治療〜SARSは攻略できるか〜」。
感染症の第一人者国立感染症研究所岡部信彦氏や,SARS流行時103例のSARS患者を中西医合作医学で治療した林琳先生を広州からお招きするほか、温病の専門家が参集の予定とのこと。
また,鍼灸分野では「鍼灸と免疫」「終末期医療における鍼灸の役割」「最新のアメリカ鍼灸事情」をテーマに講演・座談が繰り広げられるそうです。

3年前の当社主催の広州中医薬大学研修旅行に参加され,林琳先生の学識の深さと中医学への自信溢れるエネルギッシュな姿に感銘を受けられた先生も多かったことと思います。
その林琳先生が来日される,めったにないチャンスです。

詳細とお申し込みは下記サイトへアクセスしてください。
http://www.jtcma.com/

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