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中医学をマスターする5つのステップ

【書評】 『医学生のための漢方医学【基礎篇】』

『医学生のための漢方医学【基礎篇】』

 
◆髙山 宏世先生(漢方三考塾)

 現在,現代医学はますます細分化し,その結果治療可能な部分と治療不可能なまま放置されがちな部分との格差が拡がりつつあります。一方,広義の漢方の世界では,中国を中心にした中医学が世界戦略の中で,着々と理論の統一と標準化を成し遂げつつある中で,本邦では古方派・後世派を中心として,各流派の伝統の上に立ちながらそれらを存続・発展させるために努力が続けられており,多くの立場が入り乱れていることは周知の通りです。  そのような現状の中で,これからの漢方医学を担い,将来進むべき方向を決定する学生さんたちに,必要にして十分かつ無駄な部分がなく,将来どのような方向にも発展可能な基礎知識を伝授するということは,言うは易く,行うは実に困難な作業で,現在の東洋医学会においても,また近年必修課程化された大学においても,まだ十分なコンセンサスが得られたとは言い難い状況です。  安井先生の今回の新著の内容を拝見すると,「何をどれだけ教えるか」という点は先生の中ですでに十分に検討がなされ,確答が出されていることがわかり,その内容は現在のわが国における漢方教育の最も優れた標準になりうるものです。  本書では,現在の漢方診療の状況やシステムを十分踏まえた上で,漢方の基礎的用語や処方,それらを理解するための基礎理論がわかりやすく配列されています。そしてさらに感心させられたのは,本文中には理論の根幹になる部分だけを記述し,それ以外の大切ではあるけれどそこまで本文に織り込んでいると本文の筋が複雑多岐になってしまって初学者をかえって混乱させそうな事項は,欄外に数多く設けられているコラムの中で丁寧な解説を加えていることです。コラムに収められている事項は,従来漢方学習の中でもなかなか理解できず,結果的にそこで学習が挫折しがちであったことがらも多いことを考えると,コラムの活用はとても優れた着想でした。  また,安井先生は皆も知る優れた臨床家であるとともに,われわれの尊敬して止まない,内外の医学史,特に日中の諸家学説と膨大な治験例の研究成果をお持ちですが,その中から万人の記憶に残るような印象的な治験例が「名医のカルテより」という形で随所に散りばめられていることは,読む人の興味を呼び起こし,読み物としても飽きさせない内容になっていると思います。  学問成就の鍵は,良書を座右において常に行く手を誤らないように照らすことです。またその人がどこまで伸びるかは,最初に出会った書物によってどれだけ強烈なインパクトを受けたかにかかっています。安井先生の今度の著書は,そのどちらの役割も十分に果たせるものだと感じました。
 
◆中田敬吾先生(聖光園細野診療所院長)

 この度安井廣迪先生が『医学生のための漢方医学』【基礎篇】を東洋学術出版社から出版された。この書は私達漢方医学を志す同志達が長年待望して止まなかった書物である。安井先生は以前より充実した漢方教育制度の必要性を訴えておられたが,1986年の夏休みを利用して「医学生のための漢方医学セミナー」を主宰し今日に至っている。このセミナーを受けて漢方に道に入った若手医師は多く,その何人かは現在の日本東洋医学会の中堅医師として活躍している。私も何回か安井先生の主催する医学生のための漢方医学セミナーに呼ばれてお話ししたことがあるが,そこで用いていた資料が非常に充実した内容であったのに驚き感心した記憶がある。  本書は安井先生が三重県湯ノ山にて長年続けてこられた「医学生のための漢方医学セミナー」の講義内容を元に補足して書き上げたものと想像しているが,従来の漢方医学の解説書や入門書とはその内容を異にし,非常に充実度の高い漢方医学の解説書となっている。  医学生のための解説書を目的にしておられるが,読ませて頂いて医学生対象のテキストとするよりも漢方専門医のためのテキスト基礎編とした方が妥当であろうと思える高レベルの教科書となっている。  著者は緒言で「作成にあたっては,全体的な構成を国際標準である中医学におき,日本漢方医学の持っている優れた部分を適宜その中に組み込み,最終的には臨床において必要な中医学と漢方医学の最低限の知識が得られるように工夫した」と述べているが,最低限というのは著者の謙遜した表現で,この本を読むだけでも漢方中級以上の知識の整理ができると思う。従来の日本の漢方医学解説書では中医学理論がほとんど書かれておらず,また中医学のテキストでは日本漢方の「随証治療」あるいは「口訣治療」についての理解が得られないという不備があった。これらの不備を本書は必要十分に補い,漢方医学を正しく理解することのできる日本における唯一のテキストである。  安井先生は日本漢方を語るときもけっして日本の中だけに視野をおいて語ることはない。いついかなるときも彼の視野は世界に広がっており,世界の中での日本漢方を見つめている。非常に客観的に日本漢方を見つめてはいるが,けっして評論家的な立場に立ってはいない。心の底から日本漢方を愛し日本漢方の良さを広く世界に伝えていきたいと願っている人である。その安井先生が心血を注いで書き上げたこの書は,日本の漢方医学の現況を的確に理解することができ,今後の日本漢方に進むべき道を考える力を与えてくれる良書となると確信している。    

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