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2013年03月 アーカイブ

2013年03月11日

『[詳解]針灸要穴辞典』 推薦の序

推薦の序


 臨床の幅を広げたい臨床家,臨床力を向上させたい臨床家にとって待望の書,必見の書がここに出版されることとなった。治療目的に応じて要穴をいかに臨機応変に使いこなすかが,臨床効果をあげるうえでは大きな鍵の1つとなる。つまり要穴について深く理解し応用する力を身につけることが,臨床力の向上に直接つながるのである。
 本書の大きな特徴は,五兪穴・五要穴・八会穴・下合穴・八脈交会穴・交会穴について,それぞれの理論的基礎と臨床応用が紹介され,さらに要穴の各論として一つひとつの要穴について効能・主治症・配穴応用・手技の操作法・注意事項・古典抜粋・現代研究の内容が詳細に紹介されていることにある。文字通り,要穴についてここまで詳しく解説している専門書は,日本では皆無であろう。
 弁証選穴による効能,循経選穴による効能,局所選穴による効能をそれぞれ提示することにより,各要穴の主治症との関連性をみて取ることができるのも本書の大きな特徴であり,これらは日々の臨床に大いに役立つことであろう。また日本ではあまり臨床で用いられていない八脈交会穴を使った臨床応用,とりわけ交会穴を使った臨床応用を身につけることができれば,誰でもいっそう臨床の幅を広げられることは非常に魅力的である。ここまで詳細に交会穴の臨床応用について紹介している類似書はおそらく中国でもないであろう。
 本書は針灸を学ぶ学生たちにとっても待望の書ということができる。学校ではカリキュラム上,どうしても時間的な制約があるため,要穴についてはガイダンス的な紹介となっているケースが多くみられる。自分たちの学んでいる「要穴表」がたんなる暗記のためのものではなく,臨床上どのように役立つのかを知りたがっている学生を私は全国で多く見てきたが,これは中国の学生たちにとっても同様である。
 本書の著者である趙吉平先生は,北京中医薬大学附属病院という臨床現場の第一線で責任者の一人として活躍されているだけでなく,これまで臨床教育の分野でも長年にわたって非常に情熱を捧げてこられた先生である。学生たちのこういった臨床的な問題意識に応えるためにも本書の必要性を最も痛感されていたのは,他でもない趙吉平先生自身であろう。
 本書は中国の臨床家・学生のニーズに応えるために著されたものであるが,日本の臨床家・学生のニーズにも十分に応えてくれることであろう。それは24年前に後藤学園に教員交流という形で1年間留学をされ,その後も日本と中国の針灸学術交流に携わることによって,日本の針灸教育事情や臨床事情にも精通されている趙吉平先生だからこそ成し得たことだと思われる。共通の恩師である故・楊甲三教授の教えを継承し,また多くの老中医を師とあおぎ,さらにご自身の臨床経験と臨床教育経験を体系的にまとめあげた趙吉平先生を心より敬服いたします。
 中国の先人たちが中国伝統医学の継承をベースとして発展させてきた針灸弁証論治システムの充実化をはかるうえでは,今日にいたるまで臨床サイドでの結果が非常に重視されてきた。その臨床結果をふまえて著された本書が,中国針灸学の体系的な飛躍の礎とならんことを心より期待する。また臨床の幅を広げ臨床力を向上させたい諸先生方,要穴学習のレベルアップをはかりたい多くの学生たちが,本書を座右の書として活用されんことを心より期待する。最後に,本書を推薦できる機会を与えていただいた東洋学術出版社の井ノ上匠社長に,心より感謝を申し上げる。

学校法人後藤学園中医学研究所所長

兵頭 明

2013年03月21日

『[詳解]針灸要穴辞典』日本語版序

日本語版序


 針灸治療を行うには,理・法・方・穴・術が一体となって完備されていなければならない。なかでも「穴」は理・法・方・術のすべてを左右するので,最も重要であると思われる。腧穴の帰経・位置・解剖学的構造を把握し,その生理的特性・治療作用を理解しなければ,針灸理論の柔軟な応用,治療における法の活用,合理的な選穴による処方の組み立て,針灸器具の適切な選択による施術などを行うことはできない。したがって,腧穴理論に習熟することは,針灸による診断治療にとって不可欠である。
 要穴は,十四経穴の中軸でありすべての腧穴の真髄であり,その理論は深淵で主治作用が独特なので,古来より研究する者が多く,臨床における応用範囲も極めて広い。
 著者である趙吉平は,1983年に大学を卒業すると,北京中医薬大学東直門医院針灸科に勤務した。そこでの30年間に及ぶ学習・業務・成長の過程で,幸運にも楊甲三,姜揖君,李鳳萍,李学武,張国瑞,耿恩広,何樹槐ら,科内の恩師たちの薫陶を受け,また北京内外の賀普仁,張世傑,周徳安,盛若燦,高維濱らに教えを受け,さらには李鼎,邱茂良,李世珍,于書庄ら大家の針灸専門書や,王楽亭,承淡安ら大家による関連する学術経験書などを読みあさって深く啓発されたことで,各針灸大家がいかに要穴を重視しているかを痛感することができた。なかでも,楊甲三,姜揖君老先生には,数年間診察に立ち会わせていただいたが,楊先生の腧穴に関する造詣の深さは国中に名を馳せ,姜先生の八脈交会穴の活用法は大いに称賛されており,趙吉平自身の要穴使用に強い影響を与えている。
 もう一人の著者である王燕平博士は,耿恩広教授の教えを受け,卒業後は北京中医薬大学針灸推拿学院針灸臨床系で教鞭を執るとともに,要穴の研究と応用に没頭した。


 長年にわたる鋭意学習とその臨床における治験とを通し,私たちはしだいに知識を蓄積していった。趙吉平がかつて執筆した「要穴解説」が,1991~1993年に日本の雑誌『中医臨床』に連載され好評を博したが,その後内容を大幅に補足・整理して,『針灸特定穴的理論与臨床』として編集された。これが1998年科学技術文献出版社から第1版として出版されたのだが,購入するのは針灸関係者が多く,大学の針灸科の教師,研究生,臨床医がほとんどであった。その後改訂を経て2005年に再版(第2版)され,広範な読者からの評価に励まされ,2006年『針灸特定穴詳解』として「国家科学技術学術著作出版基金」プロジェクトに申請したところ,幸運にも援助を受けることができた。このプロジェクトは,1997年以降毎年1回全国規模で選考が行われ,自然科学や技術科学分野の優秀かつ重要な学術著作を出版するための援助に用いられる。その年援助を獲得した64冊の著作のうち,医学関係の書籍は16冊だったが,中薬の専門書以外では,中医関係の書籍は『針灸特定穴詳解』のみであった。いかに高い評価を受けたかがわかる。私たちは過分な評価に戸惑ったものの,寸暇を惜しんで内容と形式とをさらに補充・完成させたうえで,2009年に出版する運びとなった。
 30余万字に及ぶ本書は,10種類の要穴を9章にわたって叙述しているが,各章はさらに総論と各論の2つのパートに分かれている。総論は,おもに概説・理論的根拠・臨床応用・現代研究などからなっているが,そのなかでも各種要穴の理論に関する説明と,臨床応用に関する概説が本書のポイントである。各論では,各要穴を別名・出典・穴名解説・分類・位置・解剖・効能・主治症・配穴・手技・注意事項・古典抜粋・現代研究などの13項目に分けて詳細に説明している。そのなかでも,腧穴の効能・主治症・配穴が本書のポイントであり,その目的は,各要穴の主治作用上の特徴を明らかにすることにある。効能については,その腧穴と臓腑経絡との関係や穴性の特徴から分析を進め,主治症については系統的に帰納しており,理論性を重視するとともに臨床に則したものになっている。また他に,各腧穴の刺針法・施灸法についても紹介している。
 編集にあたっては,内容の充実,詳細かつ簡潔な説明,優先度の明確化,わかりやすい表現,学習の利便性を追求し,理論と実践の融合を重視したが,腧穴理論は深淵かつ豊富であり,筆者の力では至らぬ点も多いと思われるので,読者諸氏のご批判を待つものである。
 また本書では,出版および公開された数多くの書籍・文章を参考にさせていただいており,針灸に携わる各賢人たちにここに謹んで心よりの謝意を表したい。

趙吉平  王燕平

2012年12月 北京中医薬大学にて

『[詳解]針灸要穴辞典』本書を読むにあたって

本書を読むにあたって


 本書は,趙吉平・王燕平編著『針灸特定穴詳解』(科学技術文献出版社,2009年刊)を底本として翻訳したものである。

 要穴とは,十二経脈や奇経八脈に属する,特有の作用をもつ腧穴のことである。中国では「特定穴」と呼ばれる。古来よりその応用が重視されており,歴代針灸医家によって研究され,応用拡大がなされてきた。要穴の理解を深め,臨機応変に活用することは,針灸の臨床効果をあげるうえでは欠かせない。
 本書では,10種類ある要穴を9つの章に分け,さらに各章を「総論」と「各論」に分けて詳説している。
・「総論」は,概説・理論的根拠・臨床応用・現代研究に分かれるが,そのうち各要穴に関する理論的説明と臨床応用とが本書の重点項目である。
・「各論」は,別名・出典・穴名解説・分類・位置・解剖・効能・主治症・配穴・手技・注意事項・古典抜粋・現代研究の項目に分けて解説しているが,そのうち効能と主治症が本書の重点項目である。効能は,各腧穴と臓腑との関係,各腧穴の穴性などから分析し,主治作用の特徴を明確にしている。主治症は,臨床に活用しやすいよう系統的に分類している。


 なお,以下に本書の表記について補足しておく。


・『各論』の「主治症」で,と記されているものは西洋病名を指している。


・経脈の国際表記の略字は,東洋療法学校協会編『経絡経穴概論』の記述に合わせて,下記の経脈の記載を変更した。
  手の少陽三焦経 SJ → TE
  任脈 RN → CV
  督脈 DU → GV


・本文中( )で表記しているものは原文注であり,〔 〕で表記しているものおよびアステリスク(*)を付けて巻末にまとめているものは訳者注である。

(編集部)

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