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2015年01月 アーカイブ

2015年01月19日

『続・針師のお守り―針灸よもやま話―』

  まえがき


 本書は二〇〇〇年に刊行された新書版『針師のお守り』の続編である。
 前作の『針師のお守り』は『中医臨床』八〇号までに掲載された「針灸よもやま話」を『中医臨床』創刊二〇周年を期して一冊にまとめたものであるが、本書ではその後を受け、二〇〇〇年以降の『中医臨床』に掲載された「鍼灸論壇」「エッセイ」「近況雑感」を一冊にまとめている。
 巻末に各篇の『中医臨床』掲載号の一覧を付してあるが、その表をみてもわかるように、本書の目次は『中医臨床』の掲載順とした。
 針灸療法はいうまでもなく、単なる金属製の針と蓬を乾燥して晒した艾を使って治療するもので、針や艾それ自体にはほとんどなんらの治療効果もない。針灸の治療効果とはそうした道具を使う鍼灸師の技量とさらには鍼灸師の人間性に大きくかかわっている。
 日本でも数多くの針灸書が世に出されてきた。しかし、その圧倒的多数は針灸の基礎知識や、技量に関するものや、鍼灸師の心構えといった類で、鍼灸師としての立ち位置から日本の医療なり、社会を見てきた素の姿はなかなか見えてこない。
 本書は、四十年間、針灸治療に携わってきた筆者が、様々な場面で心に浮かんだ針灸に関連する事象を、自分の言葉で語ったものであり、できるだけ自分の素直な考えをさらけ出してきたつもりである。
 本書には、個人的な狭隘な視点や、誤った理論展開がなされている部分も多々、含まれているかもしれないが、それはそれで良しと思っている。本書を読まれた方が、本書の内容に対し、肯定するにしろ否定するにしろ、なんらかの興味を針灸に持っていただければ、筆者の思いは十分である。


二〇一五年一月 東京猿楽町の地にて

浅川 要

2015年01月26日

『再発させないがん治療 ~中国医学の効果~』

 いまや日本人の半分はがんに罹り,3分の1はがんで死ぬ時代になってしまいました。ついこの前までは3分の1ががんに罹るといわれていたのに,急速な増加率です。
 なぜ,これほどまでにがんが増えているのでしょうか?
 特殊なものを除いて,ほとんどのがんは遺伝とは関係ありません。家族にがんの方が多く出るとすれば,それは生活習慣が似ていることが原因です。そうなのです,がんは「生活習慣病」というべきなのです。
 したがって,現代日本でこれほどがんに罹る方が急速に増えてきているということは,多くの日本人の生活習慣が誤っているといえます。具体的な問題点は本論のなかで順々に述べていきます。
 近年,セカンドオピニオンを活用することが広まり,自分の受けている医療が的確なものかどうか,より良い医療を求める風潮が盛んになり,大いに結構なことだと思います。しかしその多くは,当然ながらというべきか,同じ領域の治療経験が豊富な専門医,つまり同じ西洋医学の範疇で意見を聞くものがほとんどでしょう。私は西洋医学だけでなく,東洋医学などより広範な知識を持つ方が相談者になるべきだと考えています。
 とはいっても,東洋医学の専門知識,それもがん治療に関わるものを持っている方というのは,現在の日本にはほとんどいないのですから,現実にはなかなか難しい話です。現在,大学医学部の教育のなかに,東洋医学の講座が含まれるようになっているので,将来はこういった専門知識を持った医師が増えてくることに期待したいと思います。
 私は中国医学の専門医,それもがん患者を多く診るようになってからすでに20年を超えます。そこで本論に入る前に,中国医学が一体どれほどがん医療に貢献できるのかを話しておきたいと思います。ただし西洋医学がよく行う治療成績を統計として処理すること(EBMといわれる実証主義)は,中国医学の場合あまり意味がないと考えています。なぜなら,同じ病名・進行度であっても,人間にはすべて個体差があり,中国医学はその個性を際立たせ,そこを見て治療を行うという特色があるからです。
 したがって,本論のなかでがんに対する東洋医学の基本的な考えを述べ,さらに種々のがん症例を呈示していきますが,同じ病気であってもその治療法がそのまますべての患者に当てはまるものではないとお考えいただきたいと思います。
 私の経験では,手術後に「これでがんはきれいに取れましたよ。ひと安心ですね」と主治医に言われた患者さんで,術前もしくは術後あまり時間が経過しないうちに当院を受診し治療を始めた場合,ほぼ再発を防ぐことができます。ただしこちらが指摘した従来の誤った生活習慣を見直し,正しい生活をしていただき,きちんと服薬してもらうことが必要条件です。
 通常のがんの場合,「5年生存率」という言葉があるように,初回治療後5年間再発転移がなければ,そのがんは治ったものとみなせますが,私は特にはじめの2年間が重要だと考えています。これを過ぎれば当院の治療薬も従来よりも種類を減らしたり,薄めて服用したりすることも可能になります。
 次に腫瘍マーカーが上がってきて,どこかに再発転移が疑われる状況にある場合ですが,CT・MRI・エコー・シンチなどでも再発部位が明らかにならないときであっても,当院の治療で腫瘍マーカーの数値が下がっていくようならば,順調な経過をとることも可能です。
 最も問題なのは,初回治療でがんはなくなったと言われたにもかかわらず,誤った生活習慣を従来のまま続け,数年後に再発転移が明らかになった場合や,さらにはがんが発見された時点ですでに遠隔転移がみられるいわゆるステージⅣの状態で当院を受診された患者さんの場合,完璧に治すことはできないと思います。ただ,西洋医学で予想される以上に延命に寄与したり,QOL (生活の質)を向上させたりすることはできます。
 これは私の治療技術が未熟なせいですから,今後とも日々治療成績の向上に向けて努力して,近い将来にはいま以上に治療成績を上げることを誓いたいと思います。
 話は変わりますが,近年,うつ病になる人が増え,しかも自殺に走る方がかなりの数にのぼっており,社会問題になっています。うつ病ほどでなくても,情緒不安定で,不安感を覚える方は非常に多いようですし,もちろんがん患者さんは,常に再発の不安を抱いている方がほとんどです。誰しも時には情緒不安定になることがあるものですが,かつての日本人は大事にならないうちに平常心を回復することができました。しかし,どうも近年はうまくブレーキを掛けることができず突っ走ってしまったり,向精神薬を用いたりしてもなかなかうまく社会復帰できない人が増えているようです。
 中国医学の考えでは,心身ともに正常に活動するためには,エネルギー源となる「気」の量が充分にあり,しかもその流れがスムーズであることが必要です。現代の日本人は全般的に,この気の量が不足し,流れも滞りがちであることが様々な問題を引き起こしていると思いますし,もちろんこれが身心の脆弱さの原因でもあります。
 本書では,がんをメインテーマとして取り上げながら,現代の日本人が抱える幅広い問題についてもあわせて考えていきたいと思います。がんの予防法は他の疾患の予防法にもつながると考えるからです。
 それでは本論に入っていきましょう。

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