サイト内キーワード検索


お問い合せ

東洋学術出版社

〒272-0021
 千葉県市川市八幡
 2-16-15-405

販売部

  TEL:047-321-4428
  FAX:047-321-4429

編集部

  TEL:047-335-6780
  FAX:047-300-0565

▼出版書籍のご案内

« 書籍のご案内 トップに戻る

中医学をマスターする5つのステップ

【From Letter】 『続・針師のお守り―針灸よもやま話―』

『続・針師のお守り―針灸よもやま話―』


『続・針師のお守り』(浅川要著)を読んで考えたこと

関西中医鍼灸研究会 世話人 藤井 正道


 『中医臨床』に掲載される浅川要先生の文章はいつも楽しみに読んでいます。これらを集めて2015年に刊行された『続・針師のお守り』の感想を内容に沿って書いてみました。

●「個人的補瀉法」(75~86頁)の項では,浅川先生自身がどのような考えにのっとり,どのような補瀉法を実際に行っているのかを書いていらっしゃいます。率直なご意見だと思います。
 実は私は鍼の補法をほとんどしません。平補平瀉法を最も多用し,瀉法も時に用います。ほとんどが捻転で,時には少しだけ提挿します。患者さんの得気の様子を見ながらです。瀉法は拇指を手前に引くときに,わずかに鍼も引き抜く捻転提挿の瀉法です。
 補法は温灸で代用しています。補陽をもって補気に換えます。純粋な陰虚の患者さんには使えないやり方ですが,私が日常的に診ている患者さんにはそういう方はほとんどいません。大阪の患者さんは痰湿や湿邪が経絡を阻滞している場合が多いのです。
 温暖で空調も普及している大阪では,患者さんの経気は浅い所を流れています。極寒の中国東北部辺りでは患者さんの経気は深い所を流れているでしょう。温灸で肌の表面を炙っても届きません。焼山火のような手技が求められます。

●「標治穴に対してはすべて『平補平瀉』法で得気を引き起こすことで事足りる」(81頁)という意見に賛成します。「感じない鍼でもいい」という治療家もいらっしゃいますが,得気は必要と考えています。もっとも,得気の強さは中国ほど強くしなくてもいいでしょう。20年前までは太さ0.30mmを標準として使い,0.18mmを補足的に使っていましたが,現在は0.14~0.35mmまでを使い分け,0.18mm・0.20mm・0.25mmを多用しています。
 なぜたくさんの種類を使い分けるのかというと,患者さんの反応を見て使う種類を変えているからです。「太い鍼は痛いだけだ」とか「細い鍼は効かない」などの俗説になんの根拠もありません。太い鍼でなければ得気を感じにくい患者さんもいれば,細い鍼でも同様の得気を感じる患者さんもいらっしゃいます。(井穴刺絡のような例外はありますが)適切な刺激量は患者さんに不快感をもたらしません。「瀉法は太い鍼で」という浅川先生の見解にも賛成です。
 だんだんと良くなってくれば同じ患者さんもそれまで適切と感じていた刺激を,強すぎると感じるようになってきます。その時は細い鍼に変更します。多くの種類の鍼を準備し,使い分けることができるのも個人開業の鍼灸師の特権かもしれません。
 私は4年前から鍼灸学校の非常勤講師をするようになり学生さんに実技を指導してきましたが,それでわかったのは,学生さんはいつも私が診ている患者さんに比べ,健康だという当たり前の事実です。健康な人は鍼の刺激をあまり必要としません。ですから学生の間では,刺激の弱い細い鍼が好まれます。しかし実際の臨床の患者さんは違います。
 日本の患者の疾患は痰湿や湿邪がらみが多いため,通絡して経絡を通すことが大切です。私は灸頭鍼や抜鍼の後に台座灸をよく使います。温陽化湿です。通絡だけでも湿邪は取れるのですが,効いていく速度と持ち(持続)が違います。
 浅川先生は「個人的補瀉法」だと書かれていますが,ある程度,治療家個人で見つけるしかないという立場に賛成です。理由は2つあり,1つめは治療家個々によって発する気が違うからです。私は治療家個々の衛気のしっかり度合いと身体の状態によって治療家の発する気の要素が違ってくると考えています。もう1つは治療を行うその地の気候や患者によって経気の流れる深さが異なり,それに応じて補瀉法・平補平瀉法の刺鍼の深さが違ってくるからです。

●「日本では病者の病的状態に対し,その病因病機のすべての判断を個人でしなければならない開業鍼灸師が圧倒的多数を占めており,日本でこそ『中医針灸』がこれからも発展する素地をもっている」(90頁)と書いていらっしゃいますが,まったく同感です。私が独自の考えをもてたのも,1人で治療する開業鍼灸師だったからこそで,チームで会議をしていたのでは独創的見解はつぶされていたことでしょう。

●「古典とは,歴史的にその治療経験が存在したというほどの押さえ方をしておかなければならない」(92頁)という立場にも同感です。古典の時代と生活環境・治療環境が違うことを考慮しないのは学問ではありません。古代のほうが優れた治療をしていたというのも,まったく論理的ではありません。

●「風府・天柱・下天柱・風池・完骨穴などを使って『玉沈関を開く』ことが,百会穴への刺針と合わせ,醒脳開竅法の重要な方法ではないだろうか」(105頁)と述べ,浅川先生がさまざまな精神疾患に上記の配穴を使っていることに同意します。私は天柱よりも攅竹を使うことが多く,督脈通陽法を併用することが多いのですが,基本的には似たようなことをしています。
 醒脳開竅の開竅とは脳血管障害のときに使われることが多いのですが,絡脈も含め,通す作用のことです。現代のうつ病等にも使える概念と理解しています。また中医学以外の分野の鍼灸師も頸椎や首の血流を良くすることが,現代のうつ病等にも有効であると経験的に主張しています。

●『中医臨床』に掲載された「臓腑病証では臓腑弁証を主とし,外経病では経絡弁証を主として必要があれば臓腑弁証を組み合わせ,五官・五体といった器官病では臓腑弁証と経絡弁証を一緒に用いる」という趙吉平先生のインタビュー記事を引用して,「この主張は異議を挟むことなく同意できるものである」と書いていらっしゃいます(107頁)。私も浅川先生と一緒で,同意します。

●『中医臨床』に掲載された経穴の穴性に関する連載のなかで,合谷の穴性を補気に集約したことに対して「合谷の穴性を『補気』に集約するのはいかがなものであろうか?」と疑問を呈している点も同意します。私も合谷は理気行気の経穴として使っています。


中医臨床 通巻144号(Vol.37-No.1)特集/慢性腎炎の中医治療

『中医臨床』通巻144号に掲載



ページトップへ戻る