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心配される中国の鍼灸界の没落

北京中医薬大学の鍼灸専攻の学生で、卒業後に鍼灸学に従事できた人は30%に過ぎないというデータが出ている。1970年代に中国で大流行した中国の鍼灸学も一部ではその没落も心配されている。
 中国の鍼灸学の発展に大きな影響をもたらしているのに、鍼灸の治療費が安すぎるというところにある。もともと、中国では医師の収入は低いが、その中でも鍼灸科の収益は低く、病院としても経営上運営が難しいという実態もある。そのため、鍼灸科の病棟をもつ病院も今では数が少なくなってきた。
 鍼灸学会秘書長の李維衡氏によれば、収益の悪化によって人材の海外流失が避けられないという問題を指摘している。たとえば、中国でも著名な鍼灸専門家楊甲三教授によれば、教授の大学院研究生のうち、5人に3人は海外からの留学生という現状で、中国中医研究院鍼灸所が採用した3人の博士も海外へ出て行ったまま帰ってこないという。これら海外に行った鍼灸師たちが、海外で成功し、さらに国内の人材を吸収するという悪循環になっているというわけだ。
 さらに、シロウトから見れば「針を刺す」という単純明快さが、逆に鍼灸の発展に足かせになっているという説もある。中国の病人の中にも、数ヶ月勉強すれば、鍼灸師になれると勘違いし、その理論の奥深さを認めている人があまり多くない。さらに、中国の鍼灸医師サイドでは、昨今の中国の患者で鍼灸治療する疾患の種類が少なく、中風の後遺症など偏った疾患の治療しか行われていない。中国でも著名な専門雑誌『中国鍼灸』によれば、ここ数年、中国の鍼灸界では研究されているテーマが限られており、中医学の他分野と比べると、大きな成果が挙がっていないという。
 臨床における治療の単純化も大きな問題ともいえる。治療費が安いために、収益重視となってしまい、一人の患者に十分な時間をかけることが出来ず、とくに鍼灸学における弁証と手技の衰退が中国でも懸念されている。これらは鍼灸学の真髄ともいえるもので、いくら科学が発展しても機器に取って代わることは難しい。
 まだまだ問題が多く残る中国の鍼灸界、起死回生が進むのか今後の方針が問われる。 

出典:上海中医薬報 2004年12月17日号
担当:山之内 淳


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