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中国中医研究院研究員・許家松氏の説

1.伝染病の発生と流行は異常気象と関連している

 『黄帝内経』には以下のような記述がある。「丑未の紀______二の气______温_大いに行り,遠近みなかくのごとし」。2003年は癸未の年で,丑未の年である。「二の気」は24節気の春分・清明・穀雨・立夏の4つの節気であり,これはだいたい3月中旬から5月中旬までの2カ月間のことを指している。つまり丑・未の年にあたる年は感染症が発生しやすく,さらにそれが広範囲に広がりやすいことを意味する。感染症の予防に対し,『内経』は「安正避邪」の原則を提示し,「正气存内,邪不可干」を強調している。
 それ以外にも,朝方,東から出たばかりの太陽に向かって,新鮮な空気を吸うとよいとしている。

2.『温病条辨』は210年前の北京での伝染病の大流行が元

 『温病条辨』は中医学の急性伝染病及び感染性病症に対する予防・治療法について書かれている有名な本である。この本は1793年に発症した北京での伝染病の大流行が元となって生まれた。1793年は癸丑の年であり,この年に北京では伝染病が蔓延し,死者はあまりの多さに計算もできないほどであった。このときは,当時北京で医者をしていた__が,大胆かつ斬新な治療を行って,多くの人の命を救った。__は,伝染病に対するマニュアル不足を痛感した。そこで彼は先祖の経験を追究してまとめ,それに自分の伝染病治療経験を加えて,6年をかけて『温病条辨』にまとめた。この本は大変な人気となったが,現在でも温病の予防・治療に対して重要な意味をもっている。なかでも「安宮牛黄丸」は,伝染病における3つの宝の1つと称されている。 今回のSARSは,発病季節が春であること,北方では雨が少なく乾燥した気候であること,空咳がよく出ることなどの特徴を考えると,温病に属し,湿温に属さないと考えられる。したがって,予防薬として,益気温陽・化湿類の中薬を使うことは好ましくない。

 建国以来の歴史を考えると,中医学は急性伝染病の治療に対して大きな功績を残してきた。1950~60年代に河北省の石家庄と北京で日本脳炎が蔓延した。その死亡率は30%前後であったが,郭可明・蒲輔周先生の中医処方によって死亡率を0%にまで下げられたという話が,有名な史実として伝えられている。
    
 1960~70年代には,陝西省などで流行性出血熱が流行ったが,米伯譲先生が率先して治療にあたり,治癒率は85%~92%という成績をあげた。

 [2003年5月12日]
(北京航空航天大学 電子情報工学部 辰巳 亮記)

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