サイト内キーワード検索


お問い合せ

東洋学術出版社

〒272-0021
 千葉県市川市八幡
 2-16-15-405

販売部

  TEL:047-321-4428
  FAX:047-321-4429

編集部

  TEL:047-335-6780
  FAX:047-300-0565

▼中国最新情報

« 中国最新情報 トップに戻る

広がる中薬の服用,高まる濫用の危険,専門家が警告

 中国各地でSARS患者数が増加する中で,人々の予防意識は日に日に高まり,心理的にも不安な気持ちから「予防薬漬け」になってしまう市民も少なくない。現実に地方を中心に,予防効果があるといわれる薬の濫用によって副作用症状を訴える市民も多く,入院患者が出ている地方もある。その背景には,とくに医者の処方箋がなくても,それこそメモ用紙に書いた処方でも生薬が入手できるという中国の現状がある。

 4月18日の「人民ネット(人民網)」で,中華中医薬学会内科肺系疾病専門員会主任委員・中日友好病院中医内科・晁恩祥主任医師が,そのような状況に対して注意を呼びかけている。

 中医学は弁証論治を重視するため,居住地・体質・時間などの要素の違いによってそれぞれの中薬処方は異なる。100人いれば100種類の処方ができ上がるといわれるのもそのためだ。したがって共通に処方された処方には効果がある場合もあれば,一方で害をもたらす場合もある。

 今回のSARSに関しては処方を組む段階において,その病理的性質,北方の気候,北方人の体質的特徴を加味する必要がある。晁恩祥主任医師の考えによれば,今回のような大多数の市民を対象にしたSARS予防の生薬処方としては,少なくとも北京地方においては「解毒・疏表・化湿・益気」などの効能が必要だという。また現在,市井に出回っている処方には,単純に静熱解毒作用の生薬を入れただけで,十分に総合的な弁証がなされていないものが少なくない。その結果,薬の性質が涼性に偏り,とくに脾胃効能がよくない人(いわゆる消化器の働きが弱い人)や妊娠初期の妊婦・老人・幼児などが大量に服用した場合に弊害を生じる危険性がある。これまでにも,生薬の服用が不適切であったために,胃痛や嘔吐・下痢などの現象が現れている。

 では実際に予防生薬を服用する場合に,どのように服用すればよいのだろうか? 晁恩祥主任医師が次のように意見を述べている。

 伝統的な中医学には「未病を治す」という理論と経験がある。すなわち理想的な予防薬の処方は,人体そのものの働きを調節し,「扶正去邪」の考え方のもとで人体のSARSに対する免疫力を高め,抵抗力を強化する。このような処方の服用後に副作用が起こるようなことはまずない。当然,病院や学校・交通機関・大型店舗など,人が比較的密集する場所で仕事をしたり,頻繁に外に出なければならない人々にとって,これらの予防薬を服用することは有益ではあるが,一方で一般の人々が盲目的に服用することは絶対に避けなくてはならない。

 これら中国で売られている予防生薬は,自分で煎じる生薬の状態で入手する場合が多く,その煎じ方も大切だ。北京中医医院救急科の劉紅旭主任がSARS予防生薬の煎じ方について市民に次のようなアドバイスを行っている。

1.用具……
 砂鍋・陶器・ガラス器具などが使えるが,鉄鍋・銅鍋は使えない。(筆者注:特に鉄・銅は生薬の有効成分に影響を与えるため。)

2.煎じ方……
・ まず生薬を水に30分浸す。そうすることにより有効成分が出やすくなる。 ・次に火加減だが,生薬を煎じるときの生薬の火加減は大きく分けて2種類ある。強火に相当する「武火」と,弱火に相当する「文火」である。今回のSARS予防用の生薬には,清熱解毒薬が多いのが特徴であり,清熱の生薬は「武火」で,20分くらいの時間で煎じるのが望ましい。あまり長く煎じるのはよくない。一方,清熱解毒に養陰益気の作用も併せもつ生薬は,まずはじめは「武火」,そののちに「文火」に調節する。煎じる時間も30分と長めにし,また煎じるときは鍋に蓋をし,頻繁に開けてはならい。頻繁に蓋を開けると気味が飛んでしまうだけでなく,水分が早くなくなって焦げつく心配もある。

3.服用方法……
 1袋の生薬を水を加えて2回連続して煎じ,それぞれ200・ずつ煎じ液を取る。2回分の煎じ液を混ぜたものを,200・ずつに分け1日2回服用する。朝・夕食後に温かいまま服用するのが一般的である。予防用の生薬なら3~5回に分けて服用してもよいが,飲みすぎてもよくないので注意が必要である。

4.その他の注意事項……
 中医学では生薬の服用以外にも,日常生活の健康管理も重視している。基本的には生薬を服用中はあっさりした食べものを食べ,規則正しい生活を心がけ,休養をしっかりと取る。無理のない体調であってはじめて生薬も効果を発揮する。また清熱解毒の生薬は,とくに脾胃が弱い人・妊婦・月経時の女性は服用を避けなくてはならない。また老人や幼児は,医者の指示のもとで生薬の量を適当に減らす必要がある。

 

[2003年5月7日]
(山之内 淳)


ページトップへ戻る