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経穴の国際標準化問題、韓国と中国の駆け引き

 日中韓がプロジェクトとして行っている経穴の標準化問題で、韓国と中国がゆれている。中国では、6月20日に中国の新聞『環球時報』に、「韓国韓医協会が、韓国針灸をWHOの国際基準とした」と報道し、このなかで韓国の報道を引用し、人体にある361カ所の経穴のうち、357カ所の国際標準化された経穴に関しては韓国の基準を導入、よって韓医の針灸が国際標準化されたとした。
 韓国は、経穴の国際標準化に非常に力を入れている国の一つで、韓国政府も今回のプロジェクトに6億ウオンを投入し、韓国の針灸専門家たちも積極的に協力しているという。こうした動きに対して、本家本元を名乗る中国も黙っていない。

 中国は、1990年に世界で初めての経穴の国家基準を制定し、その後欧米を中心に積極的に利用されてきた。その後、2004年3月より日中韓の3国で12名の専門家が集って、経穴標準化の準備作業が北京で行われた。そして、2004年10月に日本で行われた第3回会議で針灸経穴の国際標準案(草案)が定められた。

 さらに、2005年4月にはWHOが経穴の第4回国際標準化の非公式会議が韓国で開催され、日中韓の3国から21人の専門家が参加した。この会議では、中国からは王雪苔・黄竜祥・普志高・呉中朝の4人の専門家が参加した。ここでは、18カ所の位置が不確定な経穴と、24カ所の位置は確定しているものの表現方法が異なる経穴に関して合意が得られたが、主に中国の案が採用されたという。また、英語翻訳作業・経穴模型・経穴図に関しても中国側が提出した案が原則採用され、中国が中心となって作業が行われたことを強調している。そのため、韓国などでも報道された経穴の国際標準化問題で、韓医がその基準となったことに対して、中国も反発している。

 今回の標準化作業に関わった中国科学院の専門家によれば、最終的に決定された361カ所の経穴に関して、359カ所は中国の国家基準と一致しているとしている。2003年10月にフィリピン・マニラで第1回会議が開催されて以来、これまで11回の会議が重ねられた。最終段階では、355カ所の経穴について日中韓で合意が得られたものの、6カ所に関しては一致せず、このうち5カ所に関しては投票の結果、中国案が採用された。ただし、「水沟」に関しては、日本・韓国案が使われたという。結果的に、2006年11月1日にWHO西太平洋地区の会議で、361カ所の経穴が国際標準として決定し、このうち359カ所に関しては、中国の現行のものと一致しているという。

 日中韓で意見の相違がみられるのは、中医学が各国に伝わった時期の違いと関係があるとされている。中国南北朝時代に中国から伝わった針灸では、書物に明確な位置記載がないことが多く、その結果文献によって解釈がことなるなどの問題が発生したと考えられた。その中で、中国も独自で標準化作業を行っていて、英語版を作るなど積極的に研究を行ってきた。

 いずれにしろ、今回の標準化作業が、針灸の国際的認識と日中韓の相互交流に大きな貢献を果たしたことは言うまでもない。(2008年8月記・環球時報・中国中医薬報など 医学博士・医師(中医学) 藤田 康介

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