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写真集『海上名医-張氏中医世家』が出版される

 張鏡人など著名な老中医を多数輩出している上海の竜華張氏一家は、代々中医学を継承していて、その歴史は明代にまでさかのぼる。また、近代中国を代表するような有名人も患者として彼らのもとを訪れており、その名声は中国全土に知れ渡っている。
 張氏の家訓は、すべての代で必ず医学を修めなくてはならないと定められていて、それは現在まで脈々と続いている。そうした張一族のエピソードをまとめた写真集、『海上名医-張氏中医世家』が出版され、話題を集めている。
 20世紀初等、「傷寒にかかったら、張聾(彭耳)のところへ行きなさい」とも上海人の間で言われていた。その当時、上海は西洋文化と中国伝統文化が集積しているエリアで、中国のなかでも独特の文化を形成していた。そんな中で、竜華張氏は、傷寒の治療で効果をあげていた。ここでいう傷寒とはチフスのことを指す。

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 張氏の家系は、わかっているだけでも900年の歴史を誇る。医学への道がはじまったのは、明代末からで、そのころから家訓として代々医学を継承することが定められている。その後、民国時代になると、張蔚孫、張驤孫などの医師を排出し、一族用の教科書を編纂して末代まで継承できるように力をいれた。

 現在、今年で30歳になる第14代目の張雯医師が上海中医薬大学付属曙光病院で医師をしているが、彼女の祖父にあたる張鏡人は、日本にもたびたび来たことのある中国でも著名な老中医。萎縮性胃炎に対して『調気活血法』を提唱し、中国国家中医薬管理局の重大成果奨を受賞するなど、中医学への貢献度は大きい。

 そのほか、張氏から輩出された老中医は、新中国建国以降でも張古農、張志雄、張寿永、張存灝、張存権、張伯納、張存義などと数は多い。
 傷寒の治療で名高い通称「張聾(彭耳)」は、本名は張驤雲といった。耳が聞こえなかったため、そのような名前がついたという。その当時上海では衛生状態が非常に悪く、チフスや熱病などが大流行し、その治療に威力を発揮した。その教えを継承した孫の張竜孫は弱冠19歳で開業し、すでに上海では著名な中医師となった。その後、中国を代表する文豪巴金の専属医師となっている。巴金は101歳まで生き、2005年になくなっている。

 このように、中医学の継承はその家の伝統と大きく関係がある。教科書から吸収できない豊富な経験を伝えてくるこうした知識は、中医学の本質的な発展には欠かせない。(2008年8月記・新聞晩報より抜粋・医学博士 医師(中医学)  藤田 康介整理)
 

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