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刺五加注射液による副作用問題について

 2008年10月6日、中国国家食品薬品監督管理局は、雲南省食品薬品監督管理局の報告をうけ、雲南省紅河州で黒竜江省完達山製薬廠が生産した中薬注射液で6人が副作用と見られる症状を訴え、このうち3人が死亡したことを明らかにした。
 刺五加注射液は、中国全国で使われる中薬注射剤で、原料は生薬としても使われる刺五加(学名:A.senticosus  (Ruper.Et Maxim) Harms)から抽出される。臨床では、0.9%の生理食塩水や、5%のブドウ糖と調剤して、静脈点滴を行う。一般的には、肝腎不足による脳動脈硬化、脳血栓、脳梗塞や脳性貧血、また心筋梗塞や狭心症による神経衰弱、更年期障害などでも使われることが多い。刺五加そのものは、中医学では主に補肝腎・益精壮骨・去風湿の効能があると言われていて、臨床では高血圧症のある中高年や、糖尿病、リュウマチ、慢性気管支炎、悪性腫瘍などでもよく使われる。錠剤やカプセルで服用することが多いが、今回のように注射剤として使われることもある。刺五加注射液は中国の中医学の病院では、比較的広く普及している中薬注射剤であった。

 雲南省で発生した刺五加注射液による副作用事件は、6名の患者がこの注射液100mlを静脈点滴行った後に、体の不調を訴え、悪心や嘔吐、体の震えがみられた。さらに、体温が40℃にまで上昇し、呼吸困難の症状がみられるなど、様態が急変した。そのため、2人が別の病院に移送されたが、結局3人が死亡した。死因は、薬物副作用と肺機能不全、びらん性胃炎と診断された。

 残念だったのは、すでに3年前の2005年に、既に完達山刺五加注射液に関して、中国の医学雑誌にその副作用の危険性が報告されていたことだ。『中国薬事』2005年第19巻第2期には、完達山刺五加注射液を使った96例の副作用の報告があった。この中には、アレルギー性ショック死の症例も1例あった。しかし、第一線の臨床医師の報告にもかかわらず、中国の医療関係者の間ではほとんど注目されることがなかった。その後も散発的に、完達山刺五加注射液を使った後に蕁麻疹や皮膚炎などのアレルギーと見られる症例は報告されていた。

 事態を重く見た中国衛生部では、中国国家食品薬品監督管理局と合同で通知を出し、黒竜江省の完達山製薬廠が製造した刺五加注射液の販売を停止させた。また、全国範囲で同じロットで生産された完達山刺五加注射液を48000本の回収を決めたが、実際には大半がすでに患者に使われており、回収に成功したのは10%ほどの3600本に過ぎない。

 10月14日の衛生部の発表では、中国薬品生物製品検定所の調査で、問題の発生した完達山刺五加注射液が細菌に汚染されていたことが明らかになった。また、アンプルを外から見た検査でも、内容物の色にムラがあり、濁っているものもあり、生産段階で何らかの品質問題が発生したのではないかという見方が強い。なお、刺五加注射液で上記の6例以外では、副作用に関する報告は出ていないとしている。

 中国では使い勝手が良さそうで、さらに次世代の生薬の活用法として中薬注射剤は注目もされてきているが、実際にはまだまだ分かっていないことが多いのも確かである。中国の専門家は、中薬注射剤に関して、成分が非常に複雑で、その多くがまだ薬理学的、毒理学的評価を受けておらず、問題が多いと指摘している。特に、中薬注射剤は、今回の刺五加注射液のように静脈に直接点滴して使うため、死亡症例が出るほどの副作用を引き起こす可能性が非常に高いのも事実だ。(2008年10月記・医学博士 医師(中医学)藤田 康介

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