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上海市、針灸の治療費を引き上げる方針を打ち出す

中医学関係の医師・薬剤師などの収入が全体的に低い状態にあり、この中でも特に針灸・推拿などの特色ある治療法の治療費が極めて低い水準にあることに対して、上海市政府がようやく改革に乗り出すことを明らかにした。これから開催される予定の市議会に相当する『両会』でも討論されることになる。

 上海市では、現在市内の中医医院の整理を行っていて、これまでに1カ所の区・県クラスの中医医院を閉鎖したほか、4カ所の中医院を併合し、さらに一部中医医院を中西医結合医院に変更するなど策を講じた。また、上海市で中医関係に投入される財政予算は、2004年度は大幅に増加したものの、2005年から増加幅が小さくなり、2006年度からは減少(前年比12.6%減少)に転じている。この結果、データでは上海市で2003年度から2006年度までに投入された中医学関連予算は1560万元(約2億2千万円)にすぎず、なかなか中医学の特色を生かした活用が進んでいないと言われている。

一方、臨床研究などに重点的に予算が投入される上海市の臨床医学センターは、第10期5カ年計画で市内に33カ所が設置されたが、このうち中医系統は僅か5カ所に過ぎない。ここからもわかるように、まだまだ中医学の研究への重要性が認識されていないと批判されても仕方がないのが現状と言える。
さらに上海市では、2006年度に中医師のライセンスを持っている執業医師は、全体の16.48%に過ぎず、ここから圧倒的に西洋医ライセンスを持つ執業医師が多いことが分かる。一方で、上海市の患者が中医学を利用する割合は、全体の18%以上で、医師と患者の割合的にみれば、数字の上で中医師が足りないことになっている。しかし、それでも中医師の収入は伸び悩んでおり、特に針灸や推拿など医師の技術によって治療が行われる分野に関しては、治療費引き上げに対する患者の抵抗意識は非常に大きいようだ。その結果、臨床現場でも針灸や推拿の活用を敬遠する医師が増えているのも現実だ。

こうした問題を打破するために、上海市では地域医療や予防医学の分野での中医学の活用を目指している。これが地域医療を担う『社区衛生サービスセンター』での中医学の導入でもあり、現在市内228カ所の『社区衛生サービスセンター』のうち224カ所で中医科の導入が済んでいる。特に、上海市中心部エリアに関しては100%の『社区衛生サービスセンター』で中医科の設置が完了した。

中国では、診療費や治療費に関しては物価局の批准が必要で、医療機関が勝手に定めることはできない。また、針灸治療に関して、上海市でもまだまだ使い捨て針の普及が十分ではなかったが、こうした問題も治療費の問題と絡めて改善が検討されている。さらに1回の診断で、何回も治療するという針灸の治療システムに関しても、臨床現場にあったやり方に改善される見込みだ。(2008年10月記 藤田 康介

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