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新型インフルエンザ(H1N1)対策――中医薬による予防治療方案

 中国衛生部弁公庁と国家中医薬管理局弁公室は、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ、甲型H1N1流感)の予防に対して、中医学の専門家によってまとめられた予防案を5月5日に発表した。

 2009年3月にメキシコやアメリカなどで流行した新型インフルエンザに関して、人に感染した場合の初期症状は、季節性インフルエンザと似ており、発熱や咳、疲労感、食欲不振などの症状のほか、下痢や嘔吐などもみられることが分かっている。さらに少数であるが一部症例は重篤化しており、ウイルス性の肺炎や呼吸不全、多臓器不全を患い、死亡する場合もある。
歴史的にも、中医学では各種インフルエンザに対しても豊富な治療実績があり、中医内科学では『時行感冒』として取り扱われている。

  今回は、過去の文献・経験を整理し、予防方案を紹介する。前半部分では生活リズムや食生活に関しての一般的な注意事項が書かれている。中医学の養生では常に重視されることだが、新型インフルエンザの予防についても重要事項として取り上げられている。後半部分では薬膳なども取り混ぜて、より具体的な予防生薬処方について紹介されている。

1.生活習慣に関して

  まず、「虚邪賊風・避之有時」とあるように、寒暖にあわせて衣類の調節を心がけないといけない。また、食べものの節制に注意し、適度に温めたものを適量・適時に食べることが大切で、刺激物の摂取をなるべく避ける。「起居有常」と言われるように、メリハリある生活と、適度な運動、夜更かしをしないなどもポイントだ。さらに、中医学では「精神内守・病安従来」とあるように、精神面でのバランスを整えることも大切だ。特に、新型インフルエンザに恐怖心を抱き、体内の気機が乱れると、外邪に侵されやすくなるので要注意だとしている。

2.飲食による予防

 食べものは極力あっさりとしたものを摂取し、積熱が発生しやすい脂っこいものや、味の濃いものの摂取は控える。今回の予防案ではインフルエンザの予防に役立つような簡単な薬膳が紹介された。

(1)二白湯:葱白15g 白大根30g 香菜3g。適量の水を加えて沸騰させ温かいまま飲用。
(2)姜棗薄荷飲:薄荷3g 生姜3g 棗3こ。生姜は切り刻み、棗は種を取り除く。薄荷とともにコップにいれて、200~300mlのお湯を入れる。ふたをかぶせて5~10分置いて飲用する。
(3)桑葉菊花水:桑葉3g 菊花3g 芦根10g。熱水でお茶代わりに飲用。
(4)薄荷梨粥:薄荷3g 鴨梨(皮をとる)、棗6枚(種をとる)。加水後、上澄みを濾過。アワもしくはお米50gを煮てお粥にし、薄荷梨湯を加え、煮沸してから食用。日常的に「上火」になりやすい人にお勧め。
(5)鮮魚腥草30~60g ニンニク汁と酢であえて生で食用。
(6)鮮敗醤草30~60g 熱水に湯通しして、ニンニク汁と酢もしくは醤油類などをつけて食べる。
(7)鮮馬歯莧 30~60g 熱水に湯通しして、ニンニク汁と酢もしくは醤油類などをつけて食べる。
(8)小豆・緑豆の適量を煮つめてスープにして食用する。
(9)緑豆60g 生甘草6g(布に包む)、ヨクイニン20gを煮つめてスープにし、甘草の袋を取り出して食用。

 もし口や鼻の乾燥が激しい場合は、綿棒でごま油と醤油を塗って潤す。

3.薬物予防
(1)成人 
①太子参10g 蘇葉6g 黄芩10g 牛蒡子10g
 適応者:虚弱体質で、外感しやすい人。
 服用方法:上記処方が1日分の分量。水で煎じる。朝晩各1回服用し、3~5日続ける。
②大青葉5g 紫草5g 生甘草5g
 効能:解毒清熱
 適応者:顔が赤っぽく、口・喉・鼻が乾燥し、涼しいのを好む。大便はやや乾燥し、小便は黄色。
服用方法:上記処方が1日分の分量。水で煎じる。朝晩各1回服用し、3~5日続ける。
③桑葉10g 白茅根15g 金銀花12g
効能:清熱宣肺
適応者:顔が赤っぽく、口・喉・鼻が乾燥し、涼しいのを好む。大便はやや乾燥し、小便は黄色。
服用方法:上記処方が1日分の分量。水で煎じる。朝晩各1回服用し、3~5日続ける。
④蘇葉 10g 佩藍10g 陳皮10g
効能:健脾化湿
適応者:顔色が暗く艶がない。腹部が膨張し、大便は下痢気味。
服用方法:上記処方が1日分の分量。水で煎じる。朝晩各1回服用し、3~5日続ける。

  それぞれの体質に合わせて、医師の指導の下で服用すること。流行期間中は、連続して3~5日分服用する。
(2)子供
   藿香6g  蘇葉6g 銀花10g 生山楂10g
   効能:清熱消帯
   適応者:子供で、容易に挟食や挟滞するもの。こうした子供は、「上火」しやすく、口から酸っぱい腐爛臭がし、大便の悪臭や乾燥がみられる。
服用方法:上記処方が1日分の分量。水で煎じる。朝晩各1回服用し、3~5日続ける。

(3)中医学による予防薬の注意事項。
   ①高齢者は医師の指導の下、量を調節して服用する。
   ②慢性疾患者・妊婦は服用を控える。
   ③感冒予防薬の長期服用はしない。一般的に3~5日程度。
   ④服用中に調子が思わしくない場合は、すぐに服用を止め、医師と相談すること。
   ⑤上記の生薬にアレルギーがある場合は服用禁止。アレルギー体質の場合も控える。
   ⑥秘方や偏方、経験方を軽率に信用しない。
(4)その他
   中医学や民間の伝承に基づき、芳香化濁作用のある生薬を多用して香囊や香薫などを作り、除瘴避穢させる。一般的に、蒼朮・艾葉・藿香・当帰・白芷・山奈などが用いられる。(2009年5月記 藤田 康介 整理)

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