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中医薬の国際標準化(ISO)について――世界中連副主席李振吉氏の講演

「中医薬国際組織標準の国際標準システムにおける地位と役割」

世界中医薬学会連合会副主席・秘書長 李振吉


 
 国際組織標準とは,ISO・IEC・ITUという3大国際標準化機構以外の国際組織が制定した標準である。現在,世界では300以上の国際・地域組織が標準や技術規則を制定している。また,ネットワーク経済時代の到来に伴い,国際標準と標準化の必要性が日々増しており,国際組織標準の発展は無限の広がりを呈している。

1.国際標準化組織と国際標準の分類
1)国際標準化組織
 (1)国際標準化機構(ISO):
 世界最大の国際標準化組織。1947年に設立され,ジュネーブに本部を設ける非政府国際組織であり,国際連合には属さない。
 (2)国際電気標準会議(IEC):
 国際電子・電工標準を制定および公布する非政府国際組織であり,1906年にロンドンで設立された。1947年にはISOと合併してジュネーブに移転したが,1976年に再度独立し,相互補填を行う2つの国際組織となった。
 (3)国際電気通信連合(ITU):
 国際連合における電信業務処理を行う政府間国際組織で,本部をジュネーブにおく。
 (4)標準化関連の国際組織:
 ISO・IEC・ITU以外に標準を制定する国際組織のうち,確固とした基礎を有し条件が整っているものは,ISOから認可される。このうち,国際歯科連盟(FDI)・国際情報ドキュメンテーション連盟(FID)・国際酪農連盟(IDF)・世界保健機関(WHO)・世界気象機関(WMO)など40以上組織が,ISOのホームページで標準化関連の国際組織として公表・認可されている。また,まだISO認可を受けていない組織としては,国際羊毛事務局(IWS)・国際溶接学会(IIW)などがある。
 (5)標準化関連の地域組織:
 欧州標準化委員会(CEN)・太平洋地域標準会議(PASC)・パンアメリカ標準化委員会(COPANT)・アフリカ標準化機構(ARSO)など。


2)国際標準の分類
 (1)国際標準:
 国際標準は2種類に分かれている。1つはISO・IEC・ITUが制定した標準であり,もう1つは,ISOに認可され,ISOの標準目録に公表されている国際組織が制定した標準である。
 (2)国際組織標準:
 こちらも2種類に分かれている。1つはISOに認可された40余りの国際組織が制定し,標準目録に記載されていないものであり,もう1つは,ISO未認可の200余りの国際組織が制定した標準である。
 (3)地域標準:
 標準化関連の地域組織が制定した標準。
 (4)異なる分類方法による国際標準の分け方:
 数種類に分けることができる。例えば,表現方法にもとづき,標準・規範・技術報告などに分類したり,専門分野でいえば,通用・基礎および科学標準・衛生・安全および環境標準などに分けることができる。また執行方法は,強制標準と推薦標準に分けられる。


2.中医薬国際組織標準とISO・WHO標準との関係
 中医薬国際組織標準とは,中医薬国際組織が制定した標準である。中医薬国際組織は,各国の会員機関が共通の目的のもと結成した連盟であり,すべての会員が標準制定に参与 しているため,必ずこれを順守しなければならない。中医薬国際組織標準は,主に中医薬国際組織の各会員機関に適用されるものであるが,標準の基本的な特徴は「統一」であるため,統一後の標準は,各国の中医薬活動における秩序形成を有利に運ぶためのある種の「制約」となる。またこの種の「制約」は地域や国の境界を越えることができるため,技術・管理に関わる権威となりえ,世界における中医薬の健康的かつ秩序ある発展を保証する。
 ISOは,世界で最も権威ある標準化組織であり,ISOが制定する標準は,国際標準の最高峰に位置している。このため,ISOに中医技術委員会が設立されたことは,中医薬に最高レベルの国際標準をもたらすための基礎固めになったといえる。しかし,例えば「国際」標準が「業種別」標準に取って代わることができないように,ISOが制定するレベルや難度が高く,期間も長くかかるため,たとえ国際組織標準が効力を発揮したとしてもただちに国際標準に影響を及ぼすわけではない。ただし,一部の国際組織標準はISO標準の「トライアル期間」や「モデルケース」となり,発布・実施され成果が上がれば,ISOの審査を経てISO標準に組み入れられるものもある。
 WHOは政府組織であり,ISOの認可を受けた標準化関連の国際組織である。そのためWHOが制定した標準は,ISO目録に取り入れられた後,はじめて国際標準として認められる。このため,国際組織標準はISOとWHOそれぞれに分担され,「トライアル期間」「モデルケース」としての役割を果たした後,ある標準はISOに取り入れられ,別のある標準はWHOに取り入れられる。
つまり,ある国際組織が制定した標準こそが,現代科学技術の発展レベルを代表するものであり,厳格な科学実験・検証を経たあと広く意見を求め,関連する各分野の要求を満足させることができれば,その標準を制定した組織は標準化関連の国際組織として認められるのである。


3.中医薬国際組織標準と各国の法律・法規・標準との関係
 市場経済には,市場主体と市場客体とが存在する。市場主体とは,主に法人・自然人のことを,市場客体とは商品を指す。法律・法規は人,すなわち市場行為の主体を管理するものである。また市場行為の客体は商品であり,品質標準をその規格と定めている。つまり,国際組織標準と,各国の法律・法規が管理する対象は異なるため,国際組織標準が各国の法律・法規の実施に影響を及ぼすことはない。
中医薬は,世界120以上の国および地域に拡がっているが,文化的背景・普及の程度・従事者のレベルに大きな差異があるため,各国の標準にも比較的大きな差異がある。そして,標準制定の基本原則は「協商一致」であるため,この原則により制定された標準は,必然的に大多数の国家が認める「基本評価準則」でなければならないが,例えば,ある国の標準が基本評価準則よりレベルが高い場合,その国は信頼を獲得し,それを自国の特徴とブランドにすることができる。もし,国の標準が同準則よりも低い場合,それらの国は同準則のレベルに達するように努力することであろう。また,時間の推移に伴い標準は進歩し,全体的なレベルが上がることが予測される。これに加え,国際組織標準の多くは推薦性の標準であるため,国際組織基準と各国の標準システムとの間に矛盾が生じることはない。


4.国際組織標準と市場メカニズム
 国際組織標準の内在的原動力を推進するものは市場メカニズムであり,市場メカニズムは国際標準の内在的原動力を推進するものである。いかなる企業・機関・個人も,市場競争のなかでシェアを広げたければ,自己のサービスあるいは製品が規定の標準に達する必要がある。標準に適合するものが信頼を獲得することができ,市場シェアを獲得したものが,市場から利益を得ることができるのである。つまり,国際標準を推進する主な方法は,評定に合格することである。


5.世界中連の業務内容
 世界中医薬学会連合会(世界中連)は,中医薬国際学術組織として,中医薬国際組織標準の制定を主な業務としている。
1)世界中連はその秘書処を中国の中医薬国際学術組織に設置し,現在56の国および地域の186の会員機関が入会しており,総人数は約30万人である。
2)世界中連は設立以来,中医薬の国際組織標準の制定・公布・推進業務を自己の歴史的使命と認識している。
3)現在,以下の3種の国際組織基準を制定・公布している。
 (1)世界中連標準の制定および公布業務規範
 (2)中医薬基本名称・術語の中英対照標準
 (3)世界中医本科(CMD前)の教育標準
4)現在,中国語・フランス語,中国語・スペイン語,中国語・ポルトガル語対照の中医薬基本名称および術語標準を起草中である。
 

(伝統医薬国際科学技術大会(2009年11月)「政府論壇」発表より)
(翻訳:平出由子)


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