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【ISO問題】ISO機構は中国の提案を採用し,伝統中医薬技術委員会(TC249)を設立

 国際標準化機構(ISO)・中医薬技術委員会(ISO/TC249)事務局が,このほど上海に設立された(*編集部注1)。このことは,伝統医学の国際標準化において,中国が主導権と発言権を得たことを示しており,熾烈を極める国際競争においてさらに多くのチャンスを手に入れたことを意味する。


 2009年9月,国際標準化機構(ISO)は中国の提案(*編集部注2)を採用し,伝統中医薬技術委員会(TC249)が設立された(*編集部注3)。委員会の事務局業務を中国が請け負い,国家標準化管理委員会と国家中医薬管理局が共同で指導・管理にあたっている。
 
 衛生部副部長・国家中医薬管理局長である王国強氏は,先ごろ行われた中医薬標準化国際研究討論会の席上で,「TC249の設立は,ISOの伝統医薬,特に中医薬の標準化に対する肯定と期待の現れであり,国際的な伝統医薬のさらなる発展の必然性を示している」「中医は,中国伝統医学の経験・理論・技術に源を発し,世界の数多くの国で推進・応用され発展を遂げている国際的な伝統医学体系であり,国家中医薬管理局などの関連機関は,積極的に中医薬の標準化作業に取り組んでいる」と述べた。
 
 さらに王副部長は,「上海が事務局業務を担当するということは,中国国内における標準化および中医薬の発展戦略上必要なことであり,中華民族の優秀な文化の向上,中医薬学の価値の発掘,国家と民族の利益の保護,中医薬の国際化の推進において非常に重要な意義を有する」と付け加えた。ISO/TC249事務局長で上海中医薬発展弁公室主任の瀋遠東教授は,「わが国は,中医・中薬・鍼灸・中西医結合・民族医薬などの分野における,国際標準化作業をさらに積極的に行っていく」と話した。
 
 専門家によると,伝統医薬の有する巨大な医療的価値と市場における潜在能力は日々頭角を現してきており,中医薬は多くの国と地域で急速に普及を続けているため,世界各国から中医薬の標準化を求める要望が高まってきているという。日本・韓国や欧米諸国では,伝統医薬標準の研究および制定を急いでおり,あらゆる形式や手段によって,国際標準の制定における主導権を獲得しようと試みている。国際標準の制定において,主導権を握るか否かは,中医薬の国際発展における前途と命運を決定する。
 
 ここ数年間,国家中医薬管理局は『中医薬標準化発展計画(2006-2010年)』を発布して,計画的に段取りよく,重点を明確にして中医薬標準化作業を展開するための,指導基準および措置を提供した。現在,国家標準化管理部門は,『中医病症分類およびコード』を含む,中医薬国家標準27項目と,中医薬業標準209項目を公布している。これと同時に,中国は伝統医学分野の国際標準研究作業に積極的に参与している。1980年代には,WHOが行った『経穴部位』国際標準制定作業や,同じくWHOの『国際疾病分類コード(ICD-11)』の伝統医学部分の編集に参与した。
 
 また,国内の中医薬標準化作業も大きな進展をみせている。昨年,国家標準9項目を発布・実施し,74の標準項目を『全国サービス業標準2009-2013年発展計画』に取り入れた。また,国家標準化委員会の認可を受け,中医・中薬・鍼灸・中薬剤種子(種苗)の4つの全国中医薬標準化技術委員会を正式に発足させた。さらに,国家標準の『腧穴名称および定位』『中医基礎理論学術用語』が,中国標準開発貢献賞を獲得した。
 
 国家中医薬管理局の2010年の業務は,中医薬標準化発展計画を確実に実行し,中医薬標準システムの構築を加速することを目標としている。また,中医薬の名称および学術用語や,サービス規範などの国家標準の制定・改訂業務を継続し,中医各科の常見病症の診療指南と,中医診療技術操作規範の研究・改訂を進め,年内に100項目の国家・業種標準の制定・改訂業務を完成させる。さらに,中医薬の標準化支援システムの構築を強化し,中医薬標準化研究基地を建設して,中医薬標準化のための人材育成を強化する。

『中国中医薬報』(2010年1月29日)
平出由子訳


*編集部注

1)国家標準化委員会および上海市政府の指導のもと,国際標準化機構・中医薬技術委員会(ISO/TC249)事務局が,2009年12月22日に上海に設立された。上海市中医薬研究院が事務局の業務を担当する。上海中医薬大学校長の陳凱先院士が技術委員会副主席,上海市衛生局副局長・上海中医薬発展弁公室主任の瀋遠東氏が事務局長,上海中医薬大学付属曙光医院の桑珍博士が事務局長補佐にそれぞれ就任した。
 
2)本提案では,中国の伝統的治療法に係る用語,診断・治療方法,標準操作法,標準トレーニング法,機器と機材の品質標準,中国生薬の標準的製造方法,使用法・試験方法等を標準化することを求めている。
 
3)2009年9月14・15日に開催されたISO/TMB(技術管理評議会)予備会合では,①TC249の設立と暫定的なタイトル(Traditional Chinese Medicine:TCM)が承認され,②TC249第1回会議(2010年5・6月頃開催予定)でタイトルとスコープ(範囲)を決めるよう決議された段階であり,TCMが正式に承認されたわけではない。

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