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国際標準が中医薬の国際発展の鍵を握る(前篇)

 

国際標準が中医薬の国際発展の鍵を握る(前篇)
――世界中医薬学会連合会副主席・秘書長,李振吉氏を訪ねて――

中国中医薬報記者:陳斐然



 中国共産党中央政治局常任委員で国務院副総理の李克強は,このほど行われた全国中医薬工作会議において,「新たに始まる1年では標準化構築を強化しなければならない」という重大な指示を表明した。標準を勝ち取ることは,すなわち市場を獲得することにほかならない。技術革新に支えられた国際標準化競争は,国家の盛衰を決定づける重要な課題であり,国際標準システムの構築は,中医薬の国際化を推進するために必ず通らなければならない道なのである。


 標準の制定は,製品やサービスの安全性・品質を保証するものであり,貿易の自由化を促進するものである。また標準は,貿易において製品やサービスをやりとりする際に利便性をもたらしてくれる。標準化の目的とは,経済・科学・技術および社会の協力関係における,製品やサービスの設計技術や商業問題に対し,誰もが認める最新の解決方法を提供することである。(『フランス国際標準化戦略2006-2010』より)



 近代社会において標準化の制定権を握るものは,技術・経済競争において一定レベルの主導権を握ることができる。このため標準化競争は,今後の国際競争の焦点となる。中医薬学は,中国が自ら知的財産権を開拓することのできる潜在能力を秘めた数少ない科学分野の1つである。中国が中医薬国際標準の制定と推進の主導権を握り,その法律的価値と自己制約という機能をいかんなく発揮して,中医薬と国際社会の各方面とをつなぎ,学術的発展を促進する日はもう目前に迫っている。
 記者はこのほど,中医薬の国際標準を構築するための諸問題や,国際標準システムにおける国際組織標準の地位と役割,国際標準を構築するにあたって直面する問題と挑戦,中医薬の国際標準の競争戦略など,関連するテーマについて話を伺うため,世界中医薬学会連合会(略称:世界中連)の副主席兼秘書長である李振吉氏を訪ねた。


国際標準:最良の秩序をもたらす規格文書
記者:私たちは,李副主席が国家中医薬管理局の副局長を務めておられた頃に,中医薬の標準を構築することが中医薬の国際発展を促進するという考えをはじめて国家戦略として打ち出し,積極的に中医薬の国際標準構築に向け,活動を推し進めてきたと記憶しています。また,世界中連の副主席兼秘書長に就任した後は,国際学術組織のプラットホームとしての機能を大いに活かし,一連の中医薬の国際組織標準を研究・制定してこられました。中国の中医薬国際組織標準構築の発起人であり,提唱者であり,実行者として,中医薬の国際標準構築に関連する問題や,国際組織標準の地位や役割,また中医薬の国際標準構築の現状と見通しなどについてお話いただけますか? まず,「中医薬の標準を構築することが中医薬の国際発展を推進する」というお考えを打ち出した背景についてお聞かせください。
李振吉:私が,国家中医薬管理局の副局長を務めていた2003年に,国家標準化管理委員会(略称:国家標準委)の支持のもと,「中医薬の標準化構築を全面的に推進する」ことをテーマにした研究討論会を開催しました。当時私は,標準化はすでに,世界の科学技術と経済発展における大きな流れになっていると感じていました。世界の各国は,標準化を科学技術と経済発展における重要戦略とみなし,国際標準を制定,あるいは制定に参与できるか否かが,その国の科学技術と経済の発展レベルを示すと考えていました。中医薬の国際標準化構築は,非常に大きな意義を有しています。標準化は,中医薬を法制化するための重要な要素であり,また政府機能の変革・業種管理の規範化・法に則った行政の推進に必要な手段であり,中医薬業種の管理レベルを引き上げ,中医薬の安全性や品質規制を強化して,中医薬の近代化および国際化を推し進めるための重要な径路なのです。
記者:では,標準および国際標準の分類についてお話いただけますか?
李振吉:標準とは,一定の範囲内で繰り返される事柄および概念に対する統一された規格を指します。標準は最終的に,科学・技術・実践経験の総合的な成果を基礎とし,関連分野と協議のうえ一致し,権威ある機関により認可された後に特定の形式で公表されて,誰もが遵守すべき準則および根拠となる文書となります。標準制定の出発点および基本目標は,最良の秩序を構築し,最大の効果と利益をあげることです。
 国際標準には広義と狭義の2種類があります。狭義の国際標準はさらに2つに分けられ,1つは国際標準化機構(ISO),国際電気標準会議(IEC),国際電気通信連合(ITU)が定める標準,もう1つは,ISOが認可しISO標準目録に公表されているその他の国際組織が制定した標準のことです。広義の国際基準には,国際組織標準と国際地域標準も含まれます。国際組織標準とは,ISO認可の39の国際組織が制定した標準で,まだ標準目録に記載されていないものと,ISO未認可の200余りの国際組織が制定した標準の2つに分類されます。一方,国際地域標準とは,国際地域標準化組織が制定した標準のことです。
 「事実上の国際標準」とは,ある専門分野において権威ある機関が公表し,世界レベルで広範囲の影響力をもつ標準を指します。この標準は,その分野においてたんに先進的技術を代表するというだけでなく,国際市場における技術上の構成をも左右し,多くの国や産業界において広く応用されています。事実上の国際標準は,厳格な意味での国際標準と比べ,制定の主体や協議によって一致させるプロセスなどにおいて,大きく異なっています。
記者:中医の特徴と優位性は,整体観念・弁証論治・個別化対応にあるため,中医薬を標準化することは,逆に中医薬の継承や発展を制約することになるのではなないか,という見方をする人もいます。この点に関してはどのようなご意見をおもちですか?
李振吉:それはまったくの誤解です。標準の制定は,製品やサービスの安全性を保証するものであり,品質規制を強化するものであり,貿易の自由化を促進するものです。中医薬産業の価値は,医療・保健・教育・科学研究・製品・貿易など多くの分野に及んでいます。どの分野においても,標準を定めて製品およびサービスの品質を保証する必要があります。整体観念と弁証論治は,中医が証を判断する際の考え方であり方法です。これらは中医の臨床効果を向上させるための重要な要素です。これらは標準と関係しますが,まったく別のものでもあります。診療の安全性とサービスの品質は,標準化によって保障される必要があり,両者はけっして矛盾するものではありません。例えばアメリカでは,鍼灸治療における「クリーンニードル技術標準」をいち早く取り入れ,医療の安全性と信頼性を確立しました。実際「望・聞・問・切」の四診は,標準化された診療の行為でありプロセスです。中医薬の教育・科学研究・製品・貿易の分野においては,標準によって規範化し品質を向上させなければなりません。これは,論争の余地のない事実です。
記者:では,国際標準にはどのような効果があるのでしょうか? 私たちは,国際標準化の構築が中医薬の国際発展を推進するという考えをどのように解釈すればよいのでしょうか?
李振吉:国際標準は,3つの方面において効果を発揮します。1つめは,国際貿易における技術的障壁を取り除き,貿易の自由化を促進することです。2つめは,技術的進歩を促進し,製品とサービスの安全性を保証し,品質規制を強化して,製品・サービスの品質・効果・利益を向上させます。3つめは,国際的な経済技術の交流や協力を促進します。中医薬の国際発展にとって,中医薬の国際標準を確立することは,主に中薬製品の国際貿易や中医薬の国際サービス貿易の促進という点において有利に働きます。中医薬の国際標準は,安全かつ有効的で,品質規制された中医薬製品およびサービスを根本的に保証し,中医薬製品およびサービスの貿易を拡大させるための必要条件となります。
 標準化は近代化における生産の必要条件であり,かつ科学的管理の基礎となるものです。また標準化は市場拡大の手段であり,科学技術を転換するためのプラットホームでもあります。また標準化は貿易の拡大を推進するためのかけ橋となります。世界各国ではすでに,高度に発達した情報と貿易が一体化しており,経済のグローバル化や市場の一体化が大きな潮流となっていますが,真の意味で各国や地域を結びつけるかけ橋となり得るのは技術標準です。全世界が同一の標準に従って生産と貿易を行ってこそ,さらに大きな範囲と分野において,市場のメカニズムがしかるべき機能を発揮することができるのです。標準化によって,全世界の人々が,人類が創造した物質的・精神的財産を享受することができるのです。
 中医薬の国際発展の目的とは,中医薬の国際化を推進することです。そして,中医薬の国際化とは,中医診療の思想・方法・科学性が,国際科学界の広い範囲で認められるということです。中医・鍼灸・中薬が,世界各国の主要社会に全面的に溶け込むことです。具体的には,各国の医療保健分野において広範囲に応用,実践される。中医薬の診療サービスが合法化され,各国の医療保険システムに組み込まれる。中医薬で使用する専門物品が,世界各国で薬品・医療機器として正式に登録される。近代的な人文思想と伝統文化を兼ね備えた医療・リハビリ・保健の理念が,国際社会において広範囲に伝播され,一般的に受け入れられるということです。中医薬の国際化には,中医薬の標準化を構築するという大きな支えが必要なのです。
 中医薬の国際標準化を構築することは一大システムを作り上げるプロジェクトであり,学術問題もあれば管理問題も存在します。さらに,その重要性,緊急性を認識する必要があると同時に,特殊で複雑ではなはだ困難であるという事実も忘れてはなりません。


ISO:中医薬が世界に向けて走る高速道路
記者:世界保健機関(WHO)が医薬・衛生分野における世界最大の国際政府組織であり,最高権威を有していることは周知の事実ですが,なぜ,このプラットホームやルートを使って中医薬の標準の制定や推進を行わないのですか?
李振吉:WHOは,ISO標準を定める57のISO技術機構の協力パートナーの1つです。WHOが定めた標準は,ISOを通じて国際標準とすることが可能です。
 WHOの主要な任務は,国際標準の制定や,各国で実施されている有効的な管理体制を支持することによって,薬剤の品質・安全性・有効性を確実に保証し,衛生専門スタッフと患者が,合理的に薬剤を使用できるようにすることです。WHOの,薬品分野におけるグローバルで模範的な機能と政策は,政府や国際組織に対する基本的指導という役割を果たしており,その科学的根拠と政治的な独立性によって広範囲で尊重されています。しかしWHOは,薬品分野では主に西洋薬のGMP標準の推進,医療・健康サービス分野における国際標準の制定を展開しています。このため,WHOは伝統医薬の分野においては,さほど成熟した基準をもっていないのです。WHOが制定した標準の応用と実施にあたっては,「衛生大会は,本組織の権限内におけるすべての事柄に対し,国際協定または公約を定める権利を有する。この公約と協定は,出席し投票した加盟国の3分の2以上の票数を獲得し,当メンバー各国の法律に従ったプロセスを踏んで承認された後,はじめて効力が発生する」という「WHO憲章」第19条を遵守しなければなりません。このことからもわかるように,WHOによって中医薬の国際標準を制定し推進するというのは,効率が悪く,スピードも遅く,扱いにくいのです。
記者:ここ数年,李副主席は中医薬の国際標準化構築に関する研究論文を発表されていますが,中医薬の国際標準化の構築は,どのように展開すべきだとお考えですか? 中国はこれまで,どのような活動を展開してきたのでしょうか?
李振吉:国家中医薬管理局は,「中医薬標準化発展計画(2006-2010)」のなかで,積極的に中医薬の国際標準化活動に参与し,中国国内における中医薬標準化の成果を,国際標準へ転化することを明確に示しています。これまでの「自然発生的」「分散的」「受動的」な参与の形式を,目的意識をもって集中的かつ全面的に深く参与するように徐々に転換してきています。国際標準の草案を提出し,政府間,国際組織間の協力を強化して,中医薬の国際標準を推し広める。情報ルートを構築し,メカニズムを活性化する。研究機関を設立し,専門の人材育成を行う。全面的な統一計画や,より進んだ全体的な骨子を初歩段階で組み立てる,といったことです。現在必要なのは,さらに豊富かつ完全で適切な措置であり,計画を実行に移すことです。
 中医薬の国際標準化の進行を推進し,中医薬を国際的にもトップレベルの標準化システムの1つに組み入れるためには,標準化組織におけるプラットホーム,つまりISO中医技術委員会を設立する必要がありました。各方面の努力の結果,すでにISO中医技術委員会(ISO/TC249)が成立し,中国に事務局が設立されています。これは中医薬の国際標準化構築史上,中医薬をWTO認可の国際標準化システムに組み入れる道を開くための,画期的な意義があります。TC249の設立は,中華民族の伝統文化に深く根ざしている中医薬学が,国際社会からさらに認められたことを示しています。そして,中医薬が全世界の広範囲に広がるにつけ,統一された国際標準の創設に対する国際社会からのニーズが高まってきているのです。
記者:人によっては,TC249が設立され,事務局が中国におかれたことは,中医薬の国際標準制定にとって好都合であり,中医薬の国際的発展への道を開いたと考えています。李副主席は,中医薬の国際的発展の推進にとって,TC249の優位性および不足な点はどこにあるとお考えですか?
李振吉:ISOは,製品・サービス・管理システムという三大分野の国際標準を制定しています。一般的には,推薦標準であって強制標準ではないと考えられており,メンバー国が受け入れ,採用した後,はじめて国際標準となるという応用・実施方式を採用しています。これは国際貿易にとって技術面における一種の砦となっています。またWTOと協力すれば,国際貿易における市場進出の許可基準となり,国際法規の拘束力をもちます。ISOの国際標準は,徐々に新たな国際的経済秩序となってきており,グローバル化と新開発された技術の受け入れを促進することができます。
 ISO中医薬技術委員会の設立は,中医薬の国際標準化構築が新たな歴史的段階に入ったことを示していますが,深層部の様々な問題は複雑に交錯しており,私たちの任務は依然困難を極めています。ISOが,ある国際標準を制定・公布するには,企画・提案・立案・申請の公示・起草の論証による草案本文の確定・プロセスの認可・公布出版という7段階のステップを踏まなければならず,特に認可の段階では,国家団体の票決が必要です。ISOによる中医薬の国際標準制定がもたらす優位性とは,ISOという世界最大の標準発展機関としての地位によって,世界貿易機関(WTO)の認可を得られるということです。WTOは法人としての地位を有する国際機関であり,メンバー間の紛争調整において絶大な権威があります。WTOは,貨物・サービス・知財などの取引をカバーしているため,標準がISOにより制定・公布されれば,確かな権威と広範囲な適応性を兼ね備えることになります。不利な点は,制定までに期間が長くかかり,柔軟性に欠けるため,短期間に中医薬関連の標準の使用を広めるうえでは,あまり効率がよくないという点です。したがって,中医薬がISOの力を借りて世界に羽ばたくというのは,中長期的な目標なのです。(つづく)


中国中医薬報[2011.2.2]より 平出由子訳)

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