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EUにおいて中薬が使用禁止の危機

  4月4日,中国の中央テレビは,4月から,中国の中薬はEUにおいて全面的に使用禁止になる危機に直面したと伝えた。これにより10万人にのぼる従事者が失業するという。
  EUは世界最大の植物薬の市場であり,年間売上高は100億ユーロ(約1兆2000億円)を超える。7年前,EUにおいて『伝統植物薬登録申請規定』が公布され,食品,健康食品,農業副産品の名目でこれらを輸入する中草薬生産企業が,2011年3月31日までに承認を得なければ,EU市場で中薬を販売できなくなっていた。しかし,登録申請費は高額で,さらにEU圏内で15年以上の販売実績のあることを証明できず,今日に至ってもなお,1社の中薬企業も登録を終えていない。こうした事態に対して最も気をもんでいるのは,欧州の中医診療所の経営者と中医治療を求める患者である。
  中国の駐英大使館の周小明参事官は,中医は英国にもたらされてからずっと,認知度も高く,すでに 1,000軒以上の中医診療所があり,在英中国人にとって2大産業であったと述べた。英国では現在ある中薬の在庫を使い切った後は,食糧や弾薬が尽きるようになす術をなくしてしまう。
  今回の事態は,欧州にいる10万人にものぼる中医薬従事者が失業するというにとどまらない。国内の中薬企業が逃した今度の簡易申請の後で,法的承認を得るために所有する薬品の申請を行う場合,経費が1,000万元から10億元程度にまで跳ね上がってしまう。
  現在,中国商務部に属する中国医薬保健品輸出入商業会議所は集団協議によって,EUに対して簡易申請を行うことによって経過措置の期間を2019年まで延長するよう求めている。それと同時に国が関連する政策を立て,中薬産業の真の海外進出を推進することを期待している。


背景
  2004年以前,EUには植物薬の使用に関する規定が設けられていなかった。各加盟国は独自に異なった登録申請と規制法を実施していた。EU市場の中草薬の大部分が食品,健康食品,植物薬原料あるいは農業副産品の形で流通している。各加盟国ごとに法制上の取り扱いが異なっており,薬品の品質,安全性,有効性に必要な保証を得ることができず,EU圏内で取り引きするうえで障害となっていた。さらに生産者間の不当な競争を招いて,公衆の健康保護にも悪影響を及ぼしていた。
  2004年,EUは欧州『伝統植物薬産品法案』を採択し,2011年4月より未登録の伝統植物薬製品のすべてをEU市場から締め出すことを求めた。
  欧州『伝統植物薬産品法案』の規定によると,EU加盟国圏内で30年以上の使用経験があるか,あるいはEU加盟国圏内で15年以上の使用経験があり,さらにEU以外の国と地域で30年以上の使用経験を証明できる伝統植物薬製品の登録申請が認められれば,伝統草薬製品はEU加盟国圏内で販売して使用することができる。そうでなければ,薬品生産メーカーは必ず薬理,病理,臨床といった一連の実験を行って,その薬がEUの薬品品質基準に合致したものであることを実証しなければならない。
  しかし,中薬の大部分が複方薬剤であることから,検査・測定は非常に煩雑であり,それらを欧州『伝統植物薬法案』に適合させるには大きな困難が立ちはだかっている。


中国中医薬報[2011年4月7日]より)


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