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屠呦呦教授 ラスカー賞を受賞

  9月12日,2011年度のアルバート・ラスカー医学研究賞が発表され,80歳の中国中医科学院の屠呦呦教授が,アーテミシニン(中国名:青蒿素)の研究で臨床医学研究賞を授与された。アーテミシニンはマラリア治療に有効な薬物であり,全世界,特に発展途上国において数百万人の生命を救ってきた。
  ラスカー賞は,生物医学分野においてノーベル賞に次ぐ大きな賞。同賞の受賞者は,その後の数年間でノーベル賞を獲得することが多いため,医学界では「ノーベル賞の風向計」と呼ばれている。
  屠呦呦教授は,1930年12月に浙江省・寧波で生まれ,1955年に北京医学院薬学部を卒業,同年に衛生部中医研究院(現・中国中医科学院)中薬研究所に配属された。一時期は職場を離れ,衛生部が中医研究院に委託して行った「西医学習中医班」において2年半学習に専念した。屠教授は,長期に渡り中薬と中西薬結合の研究に従事した。
  アーテミシニンは,半世紀前に中国が組織した抗マラリア薬の研究・開発プロジェクト「523任務」において発見された。同プロジェクトは,1967年5月23日に始動した抗マラリア薬の研究・開発のための国家一大プロジェクトであり,全国の60を超える機関で500名以上の研究員が携わった。当時,中医研究院の中薬研究所に勤務していた屠教授は,同研究チームのなかの重要人物の1人であった。
  文献には,青蒿はマラリアを治療できると記載されているものの,多くの実験を行った結果,青蒿エキスの抗マラリア作用はさほど高くないことが判明し,他の科学研究機関からも同様の結論が出されていた。屠教授が指揮をとった研究チームは何度も実験を繰り返し,はじめてエーテルを溶剤として,顕著な抗マラリア作用のあるアーテミシニンの精製に成功した。エーテルを用いたことが,有効的なアーテミシニン精製のポイントであり,これをもとに,研究チームは全国の研究チームとともに深く研究を掘り下げていき,アルテメーテル・複合アルテメーテルなどアーテミシニン類の抗マラリア薬を次々と誕生させ,アーテミシニンがマラリア治療に広く使用されるようになった。
  屠教授が提案したエーテルによる抽出は,青蒿の抗マラリア作用の発見や青蒿のさらなる研究に大きな役割を果たし,研究全体のたゆまぬ発展を後押しした。


*ラスカー賞は,医学分野に大きな貢献をした科学者・医師および公共サービススタッフに授与される。1946年に開設され,基礎医学研究賞・臨床医学研究賞・公共サービス賞があり年に1回の授賞,また1997年には特別貢献賞が増設された。1962年より,ラスカー医学賞を受賞した科学者のうち,半数以上が2年以内にノーベル賞を獲得している。受賞者はおもにアメリカ人で,その他の国の受賞者は全体の25%ほど。

中国中医薬報(2011.9.14)
翻訳:平出由子

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