サイト内キーワード検索


お問い合せ

東洋学術出版社

〒272-0021
 千葉県市川市八幡
 2-16-15-405

販売部

  TEL:047-321-4428
  FAX:047-321-4429

編集部

  TEL:047-335-6780
  FAX:047-300-0565

▼中国最新情報

« 中国最新情報 トップに戻る

老官山医簡:馬王堆の医書を超える価値

 成都市金牛区天回鎮の老官山漢墓において発掘された10部の医書の意義や内容について詳報する。

 老官山から出土した医簡は,早期の馬王堆医書と中国初の医学書『黄帝内経』の間に存在し,10部のうち9部が人体医学に関連している。その内容は,病理基礎や症候治療および針灸・脈象など,医学の各分野に及んでおり,医学的価値が非常に高い。
 中医歴史文献研究員の和中浚氏は,「今回出土した『敞昔医論』『五色脈診』などの医書は,まさに扁鵲学派の経典です。扁鵲は医方の祖師であり,また脈診で有名です。さらに「敞昔」とは,古代において「扁鵲」の通仮字(同音で同義として通用する字)であるため,脈診の祖師・扁鵲を指している可能性が極めて高いのです」と語る。
 また荊州文保中心の武家璧研究員は,成都・老官山漢墓から出土した920本以上の竹簡と50枚の木簡(合計2万字)は,四川地区で初めて発掘された前漢時代の書籍であるため,今回老官山漢墓から発掘された医学書およびその価値について,各方面から注目を集めていると述べる。
 今回これら書籍解読の担当となった,荊州文保中心の武家璧研究員や,成都中医薬大学中医歴史文献研究員の和中浚氏ら専門家は,これらの書籍の内容について,初期段階での解読を行った。出土した書籍の内容は,内科・外科・婦人科・皮膚科・五官科(眼科・耳鼻咽喉科)・傷科(打撲を主とする整形外科)などに及び,また馬の治療に重点をおいた獣医書もあるという。武氏は,今回出土した『敞昔医論』『五色脈診』などの医書は,扁鵲学派の経典であるに違いないと特に強調している。また和研究員は,今回出土した経絡人形および一部の薬方から,これらの医簡には,医学史上,馬王堆の医書を超える価値があることを発見したと述べた。


分析1:前漢初期にはすでに医術と巫術が分離
 今回の調査では,文書以外にも巫術を専門的に記した木簡も発掘された。注目すべき点は,これらの巫術が記された木簡と,墳墓から出土した医学について専門的に論じている竹簡が,はっきりと分かれている点である。このほど行われた専門家論証会において専門家らは,老官山漢墓から出土した医簡には,巫術の内容が記されていないため,前漢初中期にはすでに「医」と「巫」が分離しており,中医が独自の発展の道を歩み始めていたことが証明されたと考えている。


分析2:「敞昔」=「扁鵲」あるいは扁鵲学派の医書
 今回出した竹簡・木簡のうち,最も注目されているのは医学書の部分である。M3墳墓から出土した920本以上の竹簡は,2箇所に分けて埋葬されており,1箇所には合計736本(不完全な竹簡も含む)が埋葬されていた。これらの竹簡は,長さ・埋葬されていた位置・重ねられていた順序およびその内容から,9部の医書に分けることができた。このうち,『五色脈診』以外は書名がなく,専門家がその内容にもとづき暫定的に書名をつけた。たとえば,『敞昔医論』は五色脈について記されており,『脈死候』では脈象と疾患および死亡の関係が記されており,『六十病方』に記されている病名は,内科・外科・婦人科・皮膚科・五官科・傷科などの疾患が含まれている。『病源』には病理学の内容が記されており,『諸病症候』には経脈と病症の内容が含まれ,『医馬書』は,中国で初めて出土した獣医書である。
 武家璧研究員は,『敞昔医論』『五色脈診』などの医書は,扁鵲学派の経典であるに違いないと特に指摘している。武氏は,「扁鵲は医方の祖師であり,また脈診で有名です。さらに,「敞昔」とは古代において「扁鵲」の通仮字であるため,脈診の祖師・扁鵲を指している可能性が極めて高いのです。さらに広漢から出現した後漢時代の涪翁・程高・郭玉など,脈診を特色とする医学学派は,扁鵲学派の継承人が創設したものです」と述べた。和中淩研究員も,「もしこれらの医簡が,扁鵲の医学理論であることがさらに確実に証明されれば,その意義は非常に重大になります」と指摘した。


分析3:薬方は馬王堆の医書よりさらに成熟
 今回出土した竹簡の最大の特色は,薬方と病理論の数が非常に多いことである。このうち,『六十病方』には,「題名簡」「薬方簡」を含め60条の薬方が記されており,さらに列挙されている病名から判断すると,内科・外科・婦人科・皮膚科・五官科・傷科などの疾患に及び,内容が豊富である。専門家は,『六十病方』に記されている薬方は,祛風・祛寒・祛湿などの作用がある薬剤が多くみられるため,外風治療の薬方である可能性が高いと指摘する。


 和中淩研究員は,今回発掘した老官山の医簡は,医学史上最大数で,最も集中して発掘されたものであり,また医学と最も密接に関係しているという。和氏は,「医簡の数は920本以上であり,字数は馬王堆の2万字とほぼ同数です。しかし内容については,馬王堆医書の内容は原始的で,巫術的な内容が多く,医方も単方が主になっており,経験的な内容が多くを占めています。一方,老官山から出土した医簡は,早期の馬王堆医書と中国初の医学書『黄帝内経』の間に存在し,9部の医書の内容は,すべて人体医学に関係しています。その内容は,病理基礎や症候治療,および鍼灸・脈象など,医学の各分野に及んでおり,学術的価値が非常に高いのです」と述べた。また,老官山医簡の薬方は,馬王堆医書の薬方に比べさらに成熟しており,単に各薬方の薬材数が増えているだけではなく,4・5種類から7・8種類使用しているものも多いという。馬王堆医書の,1・2種類の薬材から成る薬方と比較すると,多くの薬が,現在でも臨床で使用しているものだという。


中国中医薬報[2013.12.23]
翻訳:平出由子


ページトップへ戻る