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中医薬によるエイズ治療8,946症例の臨床観察

 国家中医薬管理局は,2004年8月から中医薬によるエイズ治療試験プロジェクトを組織・実施し,河北・河南など17の省・市において,エイズウイルスの感染者および患者に対する中医薬治療を順次行った。私たちは,そのうちの8,946症例の治療過程を48カ月にわたって観察し,中医薬がエイズに対し,多方面にわたって治療効果をあげることを明らかにした。


一般的資料


 本試験では,エイズと診断された8,946症例をランダムに選択した。このうち,男性5,343症例,女性3,603症例で,平均年齢は38.51歳,治療期間は1~300カ月である。また,エイズ発症患者は4,716症例,無症状のHIV感染患者は3,714症例で,急性感染期は26症例,未記載者は490症例であった。
 患者の治療前の中医証型の分布状況は以下の通り。
 エイズ発症期 : 虚証36%。このうち,気陰両虚・肺腎不足型が最も多い。実証は,肝経風火・湿毒蘊結型と熱毒内蘊・痰熱壅肺型が最も多い。虚実挾雑証は,脾腎虧虚・湿邪阻滞型と気虚血瘀・邪毒壅滞型が最もよくみられた。
 無症状期 : 虚証が1,592症例で46%を占め,気血両虧が主である。実証は758症例で22%を占め,肝鬱気滞火旺型と痰熱内擾型がもっとも多い。虚実挟雑証は1,104症例で32%を占め,気陰両虚・脾腎不足・邪毒内蘊型と邪毒熾盛・瘀血湿濁壅遏・肝脾腎倶虚型がよくみられた。


治療方法


 治療は,中成薬(製剤)と弁証施治を結びつけるという方法を選択した。


1.中成薬(製剤)
 益気養陰・祛瘀解毒 : 艾霊顆粒。中国中医科学院広安門医院大興製薬工場にて生産。
 健脾益腎・清熱解毒 : 扶正抗毒カプセル・康愛保生カプセル。どちらも雲南省中医中薬研究院付属医院製剤室にて生産。
 補脾益腎・益気固本 : 耆苓益気錠。成都恩威製薬有限公司にて生産。
 補腎益気・活血化瘀 : 艾可清カプセル。広州中医薬大学熱帯病研究所にて生産。
 健脾燥湿・益気補血 : 益愛康カプセル。河南省中医薬研究院付属医院製剤室にて生産。


2.中医弁証施治
 患者の症状・舌苔・脈象などの状況により中医弁証を行い,治療法を選択する。『中医薬治療艾滋病項目臨床技術方案』を参考にし,3期に使用する方薬を加減して用いた。
 1 急性感染期
   風熱型 : 銀翹散加減
   風寒型 : 荊防解毒散加減
 2 無症状期
   気血両虧型 : 八珍湯または帰脾湯加減
   肝鬱気滞火旺型 : 柴胡疏肝散加減
   痰熱内擾型 : 温胆湯加減
 3 エイズ発症期
   熱毒内蘊・痰熱壅肺 : 清金化痰湯合麻杏石甘湯加減
   気陰両虚・肺腎不足 : 生脈散合百合固金湯加減
   気虚血瘀・邪毒壅滞 : 補中益気湯合血府逐瘀湯加減
   肝経風火・湿毒蘊結 : 竜胆瀉肝湯加減
   気鬱痰阻・瘀血内停 : 消瘰丸合逍遥丸加減
   脾腎虧虚・湿邪阻滞 : 参苓白朮散加減
   元気虚衰・腎陰虧涸 : 補天大造丸加減


3.西洋医学的治療
 抗ウイルス治療(HAART)を行う。
 治療と同時に,3カ月に1回の血液・尿・便一般検査や,肝・腎機能検査,心電図,レントゲン検査を行い,治療過程における副作用を記録する。
 また,患者の症状や体徴の変化・中医証候の得点の変化・治療前後の体重の変化を観察して,毎月1回記録する。さらに,3カ月に1回治療前後のCD4陽性Tリンパ球検査を行う。この他,半年に1回ウイルス定量検査を行う。


治療結果


1.主要症状・体徴得点の低下状況
  治療開始12カ月後 : 有効率64.43%,無効35.57%
  治療開始24カ月後 : 有効率72.83%,無効27.17%
  治療開始36カ月後 : 有効率78.17%,無効21.83%
  治療開始48カ月後 : 有効率78.05%,無効21.95%
 この結果は,中医薬は症状・体徴の改善に良好な作用があることを示している。中医薬は,発熱・咳・倦怠・食欲不振・下痢などの症状の改善が顕著にみられ,なかでも倦怠に対する改善効果が突出しており,その次に食欲不振に対する効果が高い。この他,発熱・咳・下痢・息切れ・自汗などに対しても,すべて改善効果があった。


2.中医証型の治療前後の変化
 虚証は無症状期の46.09~81.03%を占めており,エイズ発症期では36.43~55.98%を占めている。また虚実挟雑証は,エイズ発症期の45.97~38.27%を占めており,このことは,無症状期は虚証が多く,エイズ発症期は虚証と虚実挟雑証が主になっていることを示している。


3.エイズ発症期および無症状期患者のCD4陽性Tリンパ球の比較
 無症状期患者のCD4陽性Tリンパ球の数値は,時間の経過に伴い低下しており,12カ月・24カ月・36カ月・48カ月と0カ月時を比較すると,すべてその差異に統計学的有意差を有している。一方エイズ発症期の患者のCD4陽性Tリンパ球の数値は,時間の経過に伴い上昇しており,こちらも,12カ月・24カ月・36カ月・48カ月と0カ月時を比較すると,すべてその差異に統計学的意義を有している。


まとめ


 本試験の結果として,中医薬治療後の患者の症状に顕著な改善がみられた。中医薬は,発熱・倦怠・息切れ・咳・食欲不振・下痢・皮疹などの症状に顕著な治療効果があり,1年後の有効率は64.43%,4年後には78.05%に上昇し,特に倦怠に対する改善効果が突出している。また治療後は,程度の違いはあるものの患者の体重が増加しており,一部の患者は労働能力を回復して,QOLが向上した。
 虚証は,無症状期における割合が46.09~81.03%を占めているが,エイズ発症期では36.43~56.02%となっており,治療時間の経過に伴い上昇傾向にある。無症状期は虚証が主であるが,疾患の進行や病状の複雑化に伴い,エイズ発症期は虚証と虚実挟雑証が多くみられるようになっている。またエイズ患者には虚証が多く,虚証は終始一貫して多くみられる。この試験結果は,中国の学者・李発枝氏の,五臓の気血・陰陽がともに虚するというのがエイズの全過程における基本病機であるという見解と一致する。また,張国梁氏などが調査した473のHIV感染者とエイズ患者の症状は,虚が主であるという研究結果とも非常に似通っている。今回のような,サンプルが多く長期間にわたる中医薬の治療観察は,エイズに対する中医の虚実並治・補虚を主にした治療方針の確立に,一定の根拠を提供した。
 CD4陽性Tリンパ球の数値は,HIV患者の進行観測の指標である。治療を行っていない場合,CD4陽性Tリンパ球の自然低下数は,平均で毎年30~50/mm3であるが,本試験では,48カ月の治療を経た場合,無症状期のCD4陽性Tリンパ球値の低下速度が遅くなっており,中医薬治療は無症状期のCD4陽性Tリンパ球値の低下速度を遅らせることができることを示している。一方,エイズ発症期の患者のCD4陽性Tリンパ球の数値は上昇しているが,同段階では抗ウイルス治療が主で,中医薬治療は補助的であるため,中西医結合治療はCD4陽性Tリンパ球を増加させることを示している。しかし,病状が進行するにつれ,3,554症例(約31%)のHIVウイルス感染者が,48カ月の治療を経過してもエイズ発症期に進行している。このように,中医薬は段階的に患者の免疫機能を向上または安定させ,症状や体徴を改善し,QOLを向上させることができることや,抗ウイルス治療を受けられない患者が,新たな治療手段を切り開き,治療の範囲を拡大することが可能になることも理解できる。

[中国中医薬報2014.12.1]
翻訳:平出由子

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