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WHO ICD-11に伝統医学分類収載 大詰め迎える

リポート WHO ICD-11に伝統医学分類収載 大詰め迎える
[編集部]



WHOの国際疾病分類(ICD)の改訂作業(ICD-11)が,2018年の正式承認に向けて大詰めの段階を迎えている。国際伝統医学分類(ICTM)の作成は2009年からWHOジュネーブ本部のプロジェクトとして始まり,日中韓の伝統医学の代表を中心にまとめてきたが,2016年10月12日,東京国際フォーラムにて「WHO ICD-11改訂会議における伝統医学セッション」(JLOM主催)が開催され,WHO加盟国に対して正式にリリースされた。本セッションにはWHO-FICネットワーク年次会議およびICD-11改訂会議参加メンバー(アメリカ・韓国・中国・ベトナム・ドイツほか)が参加。2018年のWHO総会で承認を得ることができれば,ICD-11の第27章に伝統医学の疾病分類が記載されることになる。このことは,ICD百年の歴史において初めて伝統医学の分類が導入される画期的な出来事である。



 セッションに先立ち,記者会見が行われ,JLOM議長の佐藤弘氏(日本東洋医学会会長)がICD-11に伝統医学の章が追加される意義について語った。

●ICD-11に伝統医学の章が追加される意義
◇ICD-10までは,死亡統計を目的に,西洋医学の診断分類が収載されてきたが,ICD-11では,臨床的な分類を取り入れる方針のもとで,1人の患者に対して西洋医学の診断分類に加え,伝統医学の疾病分類を記載できるダブルコーディングが採用されることになった。これにより,西洋医学の診断と東アジア伝統医学(漢方/鍼灸・中医学・韓医学)の病態分類が肩を並べることになり,伝統医学(漢方・鍼灸)の普及につながることが期待される。
◇東アジア伝統医学がWHOのもとで公式に認められる。
◇WHOによって,古代中国医学を起源とする伝統医学の用語が,漢方医学・中医学・韓医学の間で最大公約数的にハーモナイズされ,緩やかな形で標準化された。

●国内への影響
◇日本の医師の90%程度が漢方を使用しているという報告があるが,半数以上は西洋医学的な診断にもとづいて用いている。ICD-11に伝統医学が収載されることによって,伝統医学的な証に対して理解が深まり,伝統医学をより効果的に,より副作用の少ない形で使用することが可能になってくる。
◇現在,原料生薬は輸入に依存しており(80%),将来的な涸渇や不足が課題となっているが,漢方市場が拡大されれば生薬需要も増大し,生薬国産化を背景とした休耕地利用による農地の有効活用や新市場の開拓につながる。
◇電子カルテ等のツールを利用して伝統医学のデータ集積が可能になり,伝統医学に関する実態調査や科学的な解析が促進され,適正な医療につながる。

●国際的な影響
◇東アジア伝統医学間での共同研究が促進される。
◇日中韓以外の国々に対して,東アジア伝統医学の理解と普及につながる。
◇古代中国を起源とする医学を実行している日中韓3カ国間の協調関係のシンボルになる。
◇国際機関における伝統資源の確保や伝統的知識に関する議論の促進につながる。


 さらに佐藤氏は,JLOMを代表して「ICD-11に伝統医学の章が正式に収載されるためには2018年のWHO総会で可決される必要があるが,そのためにはICD-11に伝統医学の章が加わることの意義を1人でも多くの関係者に知っていただきたい」と述べ,さらに中国や韓国では自国の伝統医学に対して保護・育成・国民医療への取り組み等に向けた活動を積極的に行っていることから,今回のことを契機としてわが国でも「厚生労働省内に伝統医学に関する専門的な部局を設置していただきたいと念願している」と結んだ。(文責:編集部)




【JLOM】
 日本東洋医学サミット会議(The Japan Liaison of Oriental Medicine)は,6つの学会(日本生薬学会・日本東洋医学会・和漢医薬学会・全日本鍼灸学会・日本伝統鍼灸学会・日本歯科東洋医学会),2つのWHO研究協力センター(北里大学東洋医学総合研究所・富山大学和漢診療学)から構成されているリエゾン。2005年にWHOの伝統医学用語の標準化プロジェクトへの協力体制を整備するために設立された。漢方医学および鍼灸の国際化に向け,用語や表記法の整備などに取り組み,現在もISO/TC249を舞台に伝統医学に関する国際標準作成に取り組んでいる。


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記者会見を行うJLOM議長の佐藤弘氏(日本東洋医学会会長・左)と同副議長の後藤修司氏(前・全日本鍼灸学会会長・右)


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Opening remarkでスピーチするWHO Director GeneralのMargaret Chan氏



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