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国務院「中医薬の継承および創新と発展の促進に関する意見」<2019年10月20日>

 
2016年「中医薬法」(「中華人民共和国中医薬法」)が制定され,中医学は中国において正式な国家的法律のなかで位置づけられるようになった。その後も中国政府は中医薬のさらなる発展を促すために様々な公式文書を公表している。2019年10月20日に国務院によって公布された「中医薬の継承および創新と発展の促進に関する意見」(原題は「関於促進中医薬伝承創新発展的意見」)もその一つである。「中医薬法」によって中医薬発展の枠組みが作られたが,より具体的な内容に踏み込んだのがこの文書である。今後の中国における中医学の動向を知るうえで非常に重要な文書であることからこのたび全文を翻訳した。(編集部)



 

中国共産党中央委員会国務院
中医薬の継承および創新と発展の促進に関する意見
2019年10月20日


 中医学は中華民族の偉大な発明であり,中国古代科学の宝である。また,中華文明の宝庫を開く鍵でもあり,中華民族の繁栄に対し大いなる貢献をもたらし,世界文明の進歩に対しても積極的に影響を与えた。党および政府は中医薬事業を非常に重視しており,とくに習近平同志を核心とした党中央は,「十八大」〔第18回全国代表大会〕以来,中医薬事業をさらに重要な位置に据え,中医薬の改革と発展において目覚ましい成績をあげた。またこれと同時に,「中西医併重」〔中医学と西洋医学を共に重視する〕の方針は,依然として全面的に実行する必要があり,中医薬の法則に沿った治療理論の体系を早急に整備しなければならない。さらに,中医薬発展の基礎や人材育成はいまだ脆弱であり,生薬の品質は一定しておらず,中医薬の継承が十分に行われていない・中医薬の創新が不足している・中医薬の役割が十分に発揮されていないなどの問題が存在しており,中医薬法を徹底的に実施し,有効な措置を取って以上の問題を解決することが喫緊の課題であり,先人が私たちに残してくれた中医薬という宝をよりよく継承・発展・利用する必要がある。
 中医薬の継承・創新・発展は,新時代の中国の特色ある社会主義事業の重要な一部であり,中華民族の偉大な復興における一大事業である。「中西医併重」を堅持し,中医薬と西洋医薬を互いに補充し合い両者を協調的に発展させるという中国独自の衛生・保健分野の成長モデルを作り上げることに対して中医薬の本来の利点を発揮し,わが国の生命科学における新たな創新と突破の実現を推し進めることに対して中国の優れた伝統文化を世に広め,中国国民の自信と文化に対する自信を高め,「文明互鑑」〔文明間の相互理解〕と「民心相通」〔人と人との絆〕を促し,人類の運命共同体の構築を推進するうえでも中医薬の継承・創新・発展は重要な意義をもつ。習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想および党の「十九大」〔第19回全国代表大会〕精神を徹底し,中医薬事業に関する習近平総書記の重要な論述を実行して,中医薬の継承・創新・発展を促進するために,以下の通り意見を提示する。


一.中医薬サービスシステムの整備
(一)中医薬サービス機関の構築を強化する。中医薬のもつ整体医学と健康医学の利点を発揮し,国立の中医医学センターと地域の中医医療センターを筆頭に,あらゆるレベルや種類の中医医療機関やその他医療機関の中医診療科を中心として,さらに末端医療の衛生機関を基盤とした予防と保健・疾病治療・リハビリを一体化した中医薬サービスシステムを構築し,全国民,全ライフサイクルを網羅した中医薬サービスを提供する。そのために,中医薬の発展の法則に従って,中医病院診療科の設置を標準化し,中医病院の設置および建設基準を改訂する。また,評価や効果の審査制度を完備し,おもに中医薬サービスを行う病院モデルとサービス機能を強化して,中医薬の特徴を反映した近代的な病院の管理制度を整備・構築する。中医診療所や外来,特色ある専門科病院を大々的に発展させて,チェーン店経営を奨励する。中医の養生・保健サービスを提供する企業は,経営範囲を登記する際に「中医養生保健サービス(非医療)」の標準表示を使用する。2022年までに県クラスの中医医療機関すべてを網羅することを基本的に実現し,社区の衛生サービスセンターと農村地域の衛生院すべてに中医館を設置し,中医師を配置するように努力する。
(二)末端の中医薬サービス機関を確実に構築する。農村向け中医専門医学生を無料で育成する規模を拡大する。また,「全科医生特設崗位計画」〔医師が不足する農村医療に全科医師(総合医)を配置する国家計画〕では中医師を積極的に招聘し,中医人員の「県管郷用」〔県に所属し農村で働く〕を実行し,退職した中医師が末端機関において中医サービスを提供することを奨励し,長期間末端医療機関において従事した中医師の昇進条件を緩和する。さらに,全科医師と農村勤務の医師に向けた中医薬知識や技能の育成システムを整備する。この他,中医病院が先頭を切って医療連合体をつくることを奨励し,あらゆるレベルの中医病院が末端の中医薬サービスに対する指導を強化するよう促す。
(三)情報化によってサービスシステムの構築を支える。「インターネット+中医薬健康サービス」アクションを実施し,中医の電子カルテ・電子処方などに焦点を当てたデータベースを構築し,医療機関を基礎としたインターネット中医病院への発展を奨励し,中医のAI(人工知能)診療補助システムを開発し,オンラインと対面の一体化サービスと遠隔医療サービスへの展開を推進する。また現有の資源を基礎とした国および省クラスの中医薬データセンターを構築し,国の中医薬総合統計制度の構築を加速する。さらに,中医薬総合監督管理情報システムを整備し,サンプリング調査・定点モニタリング・違法や違約に対する処罰などの手段を総合的に活用するなどして,正確で高効率な監督管理を実現する。 


二.国民の健康維持・促進において中医薬独自の役割を果たす
(四)疾病治療における中医薬の利点を強調する。中医の利点を備えた専門科の設立を強化する。とくに中医が得意とする骨傷科〔整形外科〕・大腸肛門外科・小児科・皮膚科・婦人科・鍼灸・推拿,さらに心脳血管病・腎疾患・末梢血管疾患などの専科専病に対しては,タイムリーに経験をまとめ診療プランを作り上げ,中医の強みを拡大・定着させ,中医の特色の発展を促進する。また中医薬循証医学センターの設立を加速し,約3年をかけて中医治療が利点を発揮できる50の疾患とそれに適した100項目の技術,独自の治療効果を有する100種類の生薬を選出し,それをタイムリーに社会に向けて公表する。さらに中医学と西洋医学が共同でがん・心脳血管病・糖尿病・感染症・アルツハイマー病・薬剤耐性菌の問題などに焦点を当て,2022年までに約50の中西医結合診療プランを作成し推進する。この他,総合病院・専門科病院において中西医立会いの診療制度を構築して,学際的な診療システムに中医を組み入れる。このような有効的な仕組みを構築し,インフルエンザや新興感染症の予防・治療や,公衆衛生事案における応急対応に対し中医薬の役割をよりよく発揮する。
(五)疾病予防における中医薬の役割を強化する。「健康中国プラン」の実施を踏まえ,中医の「治未病健康プロジェクト」の向上を促進する。国の基本公衆衛生サービスプロジェクトのなかには,中医の未病治療の内容を充実させ,家庭医〔かかりつけ医〕と契約して中医未病治療サービスを受けるよう促し,2022年までに重点対象者と慢性疾患患者に対して,中医治未病の20の介入プランを促進する。また中医の養生・保健知識や,太極拳・健身気功(八段錦など)などの養生・保健法を大々的に普及させ,中医の未病治療の理念を具現化した健康的な仕事とライフスタイルを広める。
(六)中医薬の特徴あるリハビリ力を向上させる。中医薬および中国の伝統スポーツと現代のリハビリ技術の融合を促進し,中国独自のリハビリ医学を発展させる。そのために,中医薬のリハビリサービス能力のレベルアッププロジェクトを実施する。現有の資源を活用して中医リハビリセンターを多数配置し,中医病院のリハビリ科の設置を強化し,その他の病院においても中医のリハビリ技術を押し広める。また心脳血管病・糖尿病など慢性疾患や後遺症に対しては,さまざまな中医リハビリプランを策定して推進し,中医のリハビリ器具の研究・開発も促進する。さらに育成事業を大々的に展開し,地域・家庭・施設へ中医のリハビリ技術の導入を促進する。


三.中薬の品質の向上および中薬産業の発展を大々的に推進する
(七)生薬の品質管理を強化する。生薬産地の環境保護を強化し,生薬の生産品質の管理基準を改正して,生薬のバイオ栽培・野生種の保護・バイオニクス栽培などを推し進める。また野生の希少種および絶滅危惧種の動植物の保護を強化し,これら生薬の代替品の研究・開発・利用を促すと同時に,農薬・化学肥料・植物成長調整剤などの使用管理を厳格に行い,区域・品種によって生薬の残留農薬や重金属の制限基準を完備して,生薬の種子・種苗の管理法を制定する。さらに道地薬材の拠点の建設を計画し,生薬資源を本場の生産地に集約させ,大規模で標準化された栽培を推進する。この他には,生薬生産の品質管理基準の実施を奨励する政策を制定する。中医薬企業が安定した生薬の生産拠点を自ら建設または注文形式で共同建設することを提唱する。国および省クラスの道地薬材の優良品種育成とバイオ栽培拠点を定める。第三者による生薬の品質検査システムを整備する。生薬の交易市場の監督管理を強化する。生薬産業による貧困地域の経済を発展させる措置の実施をさらに深める。また2022年までに,道地薬材の生産技術基準システムや等級評価制度を基本的に樹立する。
(八)生薬と中成薬の品質向上を促進する。『中華人民共和国薬典』の中薬標準(一部)の改訂を急ぎ,これらは,国務院の薬品監督管理部門が中医薬主管部門と協力して専門家を組織して関連業務を担当し,最も厳格な基準を設ける。生薬の基準システムを整備し,国の生薬炮製規範を制定し実施する。市場における競争環境を改善し,生薬の高品質・高価格の実現を促進する。中成薬の品質管理を強化し,中薬生産における現代情報技術の応用を促進して,AIによる製造レベルを向上させる。この他,臨床価値を評価基準とする道筋の樹立を探究し,循証医学などの方法を総合的に応用し,中成薬の市販後評価に力を入れ,公立病院の薬品調達・基本医薬品の選択・医療保険リストの調整などを連動させる仕組みを確立して,中医薬産業のレベルアップおよびしくみの調整を促進する。
(九)中薬の登録管理を改革し改善する。中医薬の特徴に沿った中薬の安全性・治療効果の評価方法・技術基準を整備する。中薬の登録分類を直ちに改善し,中薬の評価・審査管理規定を策定して,臨床的価値にもとづいた優先評価・審査制度を実施する。中医薬理論・人的経験・臨床試験を結び付けた中薬登録審査・評価のエビデンスシステムの構築を加速し,古代経典の名方剤・名老中医の方剤・医療機関創製の製剤など,人的経験にもとづく中薬の新薬審査・評価技術の要求を適正化して,中薬の新薬審査のスピードを速めさせる。新たな技術や生産プロセスおよび臨床応用における優れた新しい剤型を利用して市販の中薬製品を改良することを奨励し,市販されている中薬に対し,技術的な変更の規定を適正化する。医療機関における中薬製剤の記録管理を適正化・標準化する。国務院の中医薬主管部門および薬品監督管理部門は,古代経典の名方リストに収載されている方剤の基軸情報の考証に関する意見の策定を主導する。
(十)中薬の品質と安全の監督管理を強化する。生薬の監督管理を手がかりとし,それを広範囲に広げる。中薬メーカーがおもに責任を取り,あらゆる部門が共同で監督管理するしくみを構築して,中薬材・生薬・中成薬の生産・流通・使用の全過程におけるトレースシステムの構築を模索し,5年ほどで少しずつ中薬の重点品種のトレーサビリティを実現して,責任の追及を可能にする。中成薬の品質の監督管理および合理的な使用を強化し,市販された製品の市場でのサンプリング調査を強化し,中成薬への違法な化学物質の添加などを厳しく取り締まる。中薬の注射薬の副反応に対するモニタリングを強化する。中薬企業の信頼性システムの構築を推進し,それを全国共有の信用情報のプラットホームと国家企業の信用情報公開システムに取り入れ,信用を失うような行為に対し一致団結して処罰を強める。中薬の品質・安全・監督管理に関する法制度を改善し,粗悪品や偽造品の製造などの行為に対し,よりいっそう責任を追及する姿勢を強める。


四.中医薬の人材チームの構築を強化
(十一)人材育成モデルを改革する。中医の思考を養う面を強化し,中医薬の教育機関の改革を行い,学科・専攻の構成を調整して適正化をはかる。中医薬専門の地位を高め,中医専攻における古典科目の比重を高め,中医薬の古典能力をはかるテストを行い,早くから師に就いて,早くから臨床経験を積む制度を構築する。省や部局による中医薬教育機関の共同建設への投資を増やす。中医課程を臨床医学系の必修科目に組み入れ,臨床医師の中医薬知識および技術レベルを向上させる。中医師の標準化された育成モデルを改善し,中西医結合教育を改革改善し,ハイレベルな中西医結合人材を育成する。西洋医が中医学を学習することを奨励し,臨床医師は審査に合格後,中医の医療サービスを提供し,中西医結合医としての専門職の評価や任命を受けるようにする。中西医結合専門家が,臨床全科医〔総合医〕の標準化育成プログラムに参加することを許可する。
(十二)人材育成ルートを適正化する。学科や専門科の設立,重要な科学研究のプラットホームの構築と重大プロジェクトの実施などを通じ,ハイレベルな中医の臨床人材と学際的な中医薬の革新型のリーダーを育成して,ハイレベルな創新チームを作り上げる。中医薬教育機関とその他の高等教育機関を支援してハイレベルで複合的な中医薬人材を共同で育成する。ハイキャリアの中医師の「帯徒制度」〔弟子を入門させる〕を設け,これを昇進や優秀人材・先進人材の審査にリンクさせる。中医師の継承教育のための管理方法を策定する。国務院の中医薬主管部門によって師承教育の継承者として承認されれば,要件を満たしている人は,同等の学力を有するものとして中医専門学位の申請を認める。生薬の栽培・中薬の炮製・中医薬ヘルスケアサービスなどの技術・技能を有する人材の育成に力を入れる。専門知識を有する人材の評価方法を改善する。中医(専門)医師の育成に力を入れ,中医病院における中医(専門)役職の設置を支援し,特色のある民間療法技術の継承と発展を促進する。
(十三)人材を評価・奨励するしくみを整備する。医療・衛生機関が公的機関における現在の賃金規制を突破し,コストや規定に従って各基金が引き出した控除後の医療サービスの収入を,おもにスタッフの奨励に用いることを認め,中医の公的医療機関の給与制度を改善する。中医薬の昇進評価制度を改革・改善し,業務遂行能力や実績を重視し,学歴・資格や経歴・論文などのみを重視する傾向を克服する。国の重大人材プロジェクト・院士〔国が指定した科学技術・工学各分野における最高の学術称号〕の選定などにおいて,中医薬人材の支持の度合いを高め,中国工程院医薬衛生学部における中医薬グループの設置を検討する。中医薬人材の表彰・奨励制度の設立を検討し,国による中医薬の継承と創新の表彰を強化して,中医薬業界への表彰効果が持続するしくみを構築し,青壮年の中核人材や継承者の発掘・推薦に力を入れる。各種の表彰・奨励・選考を末端機関や困窮地域に傾けるようにする。


五.中医薬の継承と開放・創新・発展を促進する
(十四)中医薬の宝庫に埋もれている精華・精髄を発掘し継承する。古典の研究と利用を強化し,『中華医蔵』〔現代中国で最大規模の中医薬古典文献の叢書〕を編集する。中医薬の古典・技術・処方のリストを作成し,中医薬の古典と伝統的知識の国立のデジタルライブラリーを建設して,中医薬の伝統知識保護条例を検討・制定する。「活態伝承」〔生活や生産活動のなかで無形文化財を受け継がせるやり方〕の推進を加速し,学術継承制度を改善し,名老中医の学術経験や老薬工の伝統技術の継承を強化して,デジタル化・ビジュアル化などによる記録を実現する。民間における中医薬経験方や秘方・技法を選別・収集し,共同で開発して利益を分かち合えるしくみを打ち立てる。中医薬博物館事業の発展を推進し,中医薬文化の普及活動を実施して,中医薬文化を国民教育全体に組み入れ,小・中学校における中医薬文化の教育をさらに充実させる。これらによって中医薬が大衆の健康を促進するための文化意識のツールとなるようにする。
(十五)中医薬の科学研究および創新の促進を加速する。国家戦略のニーズや中医薬の主要な科学的問題に焦点を当て,学際的な科学研究のプラットホームを設立する。中医薬の主要分野に国家重点実験室を設け,国立の臨床医学研究センター,国立の工学研究センターや技術開発センターを順次設立する。中央財政科学技術計画(特別プロジェクト・基金など)の枠組みのもと,国の中医薬科学技術研究開発プロジェクト,主要技術や装備の重大プロジェクト,国際規模の科学計画を検討・確立し,基礎理論・診療規則・作用メカニズムの研究・解明を深化させ,重大疾患・難治性疾患・希少疾患や新興の感染症などの予防治療といった臨床研究を展開して,中薬の新薬の開発研究を加速し,高度な中医器具や中薬の製薬設備を研究開発する。小児用の中成薬の研究開発を奨励し,科学技術の創新プロジェクトを研究・実施する。企業・医療機関・大学・科学研究機関などの共同開発により,産業やサービスのつながりによって創新のつながりを形づくり,中医薬の産学研を一体化した創新モデルを改善する。中医薬産業における知的財産権の保護と活用を強化する。中医薬の科学研究機関および研究スタッフにより多くの自治権を与える管理システムを整備し,知的財産権と科学技術の成果が転化された権利と収益を保障するシステムを確立する。中医薬の科学研究組織,検収と評価システムを改善し,関連する科学研究の評価方法を単純に適用することを避ける。中医薬の特徴と発展のニーズを強調し,科学技術管理部門と中医薬の主管部門が連携・連動した中医薬の科学研究計画と管理の仕組みを確立する。
(十六)中医薬のオープンな発展を推進する。中医薬を,人類の運命共同体の構築や「一帯一路」国際協力の重要な内容として取り入れ,中医薬の国際協力特別プロジェクトを実施する。中医・中薬の国際基準の制定を推進し,国際的な伝統医学関連の規則の制定に積極的に参加する。海外への中医薬文化の普及を推進し,中医薬のサービス貿易を大々的に展開する。高品質の中医薬海外センター・国際的協力拠点・サービスの輸出拠点を,社会的な力によって建設することを奨励する。既存の中薬取引のプラットホームでの国際取引の着実な展開を推進する。広東・香港・マカオ地域に中医薬「高地」〔優位な場所〕を構築する。台湾との中医薬交流・協力を強化し,両岸の中医薬の融合的発展を促進する。


六.中医薬管理体制の仕組みを改革・改善する
(十七)中医薬の価格と医療保険政策を改善する。臨床的価値にもとづき,中医の優れたサービスや特色あるサービスに焦点を当て,政策支援を強化し,医療サービスの価格形成のしくみを改善する。医療サービスの価格を調整する際には,中医など医療スタッフの技術や労務価値に見合った医療サービスの価格を重点的に考慮に入れる。中医薬の特徴に合った医療保険の支払い方法を整備する。国際疾病分類に沿った中医の病証分類のコーディングシステムを改善する。中医の利点が明らかで,治療手順やコストが明確な疾患を選択し,病種ごとの支払いを実施して,支払基準を合理的に決定する。一部の慢性疾患に対し人数に応じた支払を実施し,関連する技術規範を改善することにより,適切な中医薬サービスを提供するよう末端の医療機関を奨励・指導する。条件に合った中医医療機関を,時機を逃さず医療保険の定点医療機関に組み入れる。規定に従い,適切な中医医療サービス種目と中薬を積極的に医療保険の範囲に組み入れる。民間の保険機関に対し,中医の治未病などの保険商品を開発するよう奨励する。生薬価格のマークアップに関連した作業を廃止することを検討する。
(十八)投資の保障のしくみを改善する。中医薬発展のための持続可能で安定した多様な投資のしくみを確立し,衛生健康分野への投資において中医薬事業発展のための費用を全体的に取り決め配分し,さらに支援を増やす。中医薬事業発展のための投資を増やし,中医病院の運営条件を改善して,良質なサービスの提供を拡大する。中医の公立病院への投資を確実に保障し責任をもって実施する。地方において,政府による指導・社会資本の参入・市場化運営といった中医薬発展基金の設立を奨励する。民間保険機関に中医薬サービス産業への投資を促進する。
(十九)中医薬の管理体制を整備する。中医薬業務の部門間の調整体制を改善し,国務院の中医薬業務部際連席会議弁公室の調整機能を強化し,中薬の発展計画・基準の設定・品質管理などの業務を協調して行い,中医・中薬の協調的発展を促進する。各レベルの衛生健康・薬品監督管理などの関連部門がそれぞれ中医学と西洋医学をともに重視すべき,中医薬に関連する政策措置を策定・実施する際に,中医薬主管部門の意見を十分に聴取し取り入れるようにする。中医薬サービスの監督管理仕組みを改善する。中医薬法の関連規定にもとづき,中医薬の管理システムを確立・整備して,省・市・県すべてで中医薬の管理を実行する機関を明確にし,人員を合理的に配置する。
(二十)企画と実施を強化する。地方の各レベルの党委員会と政府は,実態に即した実施措置を策定し,本意見の実施状況を党委員会および政府の実績評価に組み入れる必要がある。より低コストでより大きな健康上のメリットを達成するという目標に照準を合わせ,国家中医薬総合改革模範区の建設を計画し,サービスモデル・産業開発・品質監督管理などの分野において先駆的な試験を行うことを奨励する。中央政府の主要な報道機関・主要なニュースサイトなど各メディアに中医薬文化の宣伝に力を入れることを促し,中医薬の予防と治療に関する知識の普及を強化および規範化して,中医薬を大切にし,愛し,発展させる社会的雰囲気を作り出す。
軍隊における中医薬業務をさらに強化し,新時代の軍事医療サービスと新しい中医診療装置の研究開発や新薬・新療法などの発掘・開発を精力的に実施して,末端部隊の中医薬サービスの能力向上プロジェクトを継続して深化させ,軍全体の中医薬水準を向上させる。
 この他,少数民族の医学も中医学の重要な一部であり,関連する地域は本意見にもとづき,これらの地域の少数民族の医学の発展に向け関連政策と措置を策定し,改善する。


翻訳:平出由子
原文:中共中央国務院関於促進中医薬伝承創新発展的意見(2019年10月20日)
http://www.gov.cn/zhengce/2019-10/26/content_5445336.htm

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