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▼李世珍先生の針

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第1回「李世珍の針」講習会

2006年2月19日(日),東京・八丁堀の東京医療福祉専門学校で,「李世珍の針」講習会(主催:東洋学術出版社)が開催された。講習は,午前中が関口善太先生(中醫堂関口薬局・関口鍼灸院)による「李世珍」配穴処方の講義,午後は白川徳仁先生(鍼灸治療院・呼泉堂)による実技が行われた。受講したのは,定員一杯の40名。募集に際して定員を超える応募があり,「李世珍の針」に対する関心の高さがうかがえた。

 ■脾胃病の「李世珍」配穴処方


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 関口先生  
 関口先生の講義は,脾胃病に的を絞って,病証・症候・常用穴・常用配穴処方を概説するものであった。脾胃病に属する病証として,胃熱・脾気虚・痰湿などを例にして,それらに現れる具体的な症候を整理,解説。さらに,脾胃病に常用するツボとして,合谷・足三里・陰陵泉・三陰交・太白・中・神門・内庭・復溜を取り上げ,各ツボの特性と補瀉別の効能の違いについて,チャート化して簡明に説明した。また,これらのツボを使った常用配穴処方として,補益脾胃方・健脾滲湿方・湿熱方・補中益気方・栄養方・八珍方・清胃方を取り上げて,各処方構成を説明しながらどのような作用が期待できるのかを紹介した。

kogi.jpg  講義風景

 李世珍の著書を読んでいるだけではなかなかわかりにくい配穴処方の組み立てをシンプルにまとめ,平易に解説されていたのが特徴的だった。また,脾胃病の証型別の症候や常用穴の解説も実にていねいで,「李世珍の針」入門者にとってはたいへん参考になる内容であった。講習会後の受講者の声でも,「脾胃関係のみに限定した講義だったので比較的理解しやすかった」「証の立て方や,なぜこのツボなのかというのがよくわかった」という声が聞かれた。
 一方で,「李世珍の針」の入門者と実践者が一緒になって受講したため,もの足りなさを口にする方も少なからずいた。「基本的な講義だけでなく,講師の臨床体験や症例をもう少し詳しく聞きたかった」「具体的な症例を提示して,どのような症状からどのような弁証を立て,なぜそのツボを選択したのか,そして治療結果はどうなったのかを説明するような講義の方が理解しやすいし,興味がもてる」という声が寄せられた。

 ■手技のトレーニング

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 白川先生
  白川先生の講習は,正確な取穴・痛みのない刺入・得気が取れることに重点を置いた手技訓練であった。「李世珍の針」の特徴の1つに捻転補瀉手技があげられるが,その手技を成立させるためには,正確な取穴と得気を得ることが大前提となる。これらをきちんと行えないと,うまく効果を引き出せないからだ。講習では,2人1組になって,お互いのツボを取り,針を刺し合った。取穴では,ツボを正確に取ることが特に強調され,経絡を指でなぞり,ツボの位置を確認する作業が繰り返し行われた。刺針では中国針を使った刺入訓練が行われた。白川先生とアシスタントの先生が20組のベッドを回り,受講者が正確に取穴できているか,またうまく得気が取れているかを確認した。

zitugi.jpg  実技風景

 日常の臨床でこの針を使って実践されている白川先生の針は,「李世珍の針」の日本における応用篇である。李家家伝針灸そのままではなく,白川先生の経験をふまえて工夫が加えられており,いわば白川流「李世珍の針」といえる。「李世珍の針」を日本で実践していく場合,必然的に各人の受け止め方に違いが生じる。しかし,必ずしも「李世珍の針」そのものとはいえなくても,各人が経験を深めていくことによって,多様な針灸術が現れ,それだけ広さと奥行きのある豊かな針灸術に成長していくものと思われる。
 実技では,「経穴の位置についてイメージがつかめた」「講師が李先生の言葉や行動で疑問を感じ,考えた率直な意見が聞けてよかった」「30番針は使ったことがなかったが,使い方によって心地よい響きが出せることがわかってよかった」といった声が聞かれた。
 中医針灸では,実技講習会の場があまりなく,実技に寄せる受講者の期待は非常に大きい。それだけに実技講習を行うにあたっては,いっそうの工夫が必要だ。 20組ものベッドを講師がすべて回り切れなかった場面もみられ,講習会の募集人数が果して適切であったのか再検討する必要があるだろう。実際に受講者からも,「必ず1人ずつ見て,実際に先生に刺針してほしかった」「講師の先生が受講者全員に刺針して,響きが実感できるとよかった」「講師の実技をもっと見たかった」「実技主体型の講習会にしては,実技スタッフが少ない気がした」という声が寄せられた。

 今後,「李世珍の針」を自身の臨床で使っていきたいかという問いに,この針は,「無駄のない針」「弁証から治療まで一貫している」「効果が確認できる針」だとして,ぜひ使っていきたいという声が聞かれた。その一方で,実践で試して効果を確認しないと判断できないという声もあり,実技講習の必要性を強く感じた。今後は,講習会を「入門セミナー」「中級セミナー」など受講者の経験によって分け,より対象者を絞り込むなどして,できるだけ多くの受講者の期待に答えられるようにしていく必要があるだろう。

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