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▼李世珍先生の針

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『中医鍼灸臨床発揮』訳者あとがき

兵頭 明

本書と『臨床経穴学』(東洋学術出版社刊)の位置づけ

 ここに『臨床経穴学』につぐ第2弾として,李世珍先生の『中医鍼灸臨床発揮』を紹介できることとなった。本書の特徴は,『臨床経穴学』が治療穴を中心テーマとしながら,常用穴の臨床応用の仕方を提示しているのに対し,弁証論治の仕方を中心テーマとし,膨大な症例を提示しながら臨床証治の法則を述べた点にある。つまり学習した基礎理論と弁証論治を,臨床の実際のなかでどのように応用できるのかを,数多くの実例をもとに紹介している。また治療経過のなかで,病状の変化に応じてどのように対処すべきか,を学ぶことができるようにもなっている。
 著者は400症例以上の医案を提示するだけでなく,医案に対して詳細な検討を加えている。そして,各症例を比較することにより,臨床証治の法則をも提示している。これは我々に臨床に際しての心構えと方法論を示唆したものといえる。

医案と教科書の役割分担と関連性

 医案と教科書,臨床医学書にはそれぞれに役割分担がある。一般の教科書や臨床医学書では1つ1つの病(あるいは証)についての明確な病理分析,典型的な証候,主証の紹介がなされ,鑑別がしやすく,また論治の面においても方穴(薬)には法則をもたせて紹介がなされている。つまり典型的なものが選択され,読者に綱領を提示する役割を担うものが教科書なのである。一方,医案は,常あり変あり,動あり静あり,共通性あり個別性あり,経験あり教訓ありといった具合に,内容は非常に多彩となる。著者によれば,中医基礎理論は尺度となるものであり,臨床応用はこの尺度にしたがった技能である。そして,医案は基礎理論という尺度にしたがって臨床応用した技能の総括である,としている。したがって,医案は基礎理論と臨床をつなぐ重要な役割を担うだけでなく,医案を学ぶことによって臨床応用力を身につけることが可能となるのである。

誤治を招く原因

 本書のもう1つの大きな特徴は,誤治による症例が紹介されていることである。誤治をまねく原因として,四診の不備,弁証の誤り,選穴の誤りという3つの原因を指摘し,それぞれについて実例をあげながら考察を加えている。ここで紹介されている内容は我々にとっても教訓,戒めとしてくみ取ることができるものばかりである。このようなスタイルの医案は中国においても珍しく,したがって非常に貴重なものということができる。

「中医医案学」の構築

 南京中医薬大学の王玲玲院長が指摘しているように,本書はまさに臨床に即した実用書であるばかりでなく,さらに科学研究と教育面において極めて高い価値をもっている。李世珍先生は医案を中医医案学として中医学教育の必修科目にすべきだと提唱されているが,私もその早期実現を切望する1人である。

李世珍先生は,医案から学ぶ重要性を強調するのみならず,さらに我々が治療した患者の医案を蓄積し,絶えず探究しながら経験の総括を行うことが,我々自身のみならず後学の士にとっても価値があるだけでなく,さらなる法則の発見,法則の説明,そして法則の運用といった面でいっそう価値あるものとなると指摘している。まさにこれこそ中国伝統医学が歴代にわたって歩んできた道程であり,その継承の上に今日があり,そして今日のたゆまぬ努力によって未来を切り開くことが可能となるのである。
 今日まで歴代の医案が果たしてきた役割,そして今後において医案が果たすであろう役割を考えると,まさに著者が提唱しているように,医案が中医医案学として中医学教育の必修科目として導入されるのも,さほど遠い将来のことではないであろう。我々はその実現を待つまでもなく,今ここに『中医鍼灸臨床発揮』を中医医案学として位置づけ,さっそく学習することができるのである。今一度,本書の学習を通じて中医鍼灸学のもつ系統性,一貫性,実用性,再現性を体験習得しながら,本書を各人の臨床の必携書として活用し,臨床に励まれんことを切に希望し,訳者の後書きとする。

兵頭 明
2002年5月吉日

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