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▼李世珍先生の針

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「李世珍の針」講習会実力養成コース(終了)

去る7月30日と8月6日の2日間にわたって,東京都・八丁堀の東京医療福祉専門学校で,「李世珍の針」講習会(主催:東洋学術出版社)が開催された。7月30日の講習を白川徳仁先生(針灸治療院・呼泉堂)が,8月6日の講習を関口善太先生(中醫堂関口薬局・関口鍼灸院)がそれぞれ担当し,模擬患者や症例を使った講習が行われた。受講したのは,7月30日が21名,8月6日が17名。両日ともきわめて実践的な内容で,「実力養成コース」の名にふさわしいたいへん密度の濃い講習会であった。

■津液病に対処するための実技講習・症例討論
 白川先生の講習は,津液病の代表穴とそれに配穴する副穴を使った実技講習・症例討論であった。参加者は,実際の臨床現場に即した形で患者情報の収集を行い,弁証・配穴・手技にいたる一連の弁証論治の過程を,自らの頭で考え,そして体験した。 検討する症例は,白川先生の経験症例(主訴:口渇)と模擬患者(主訴:禿げ)を使った2例であった。
 午前中に症例を提示。参加者は任意で聞きたいことを質問して問診を行い,模擬患者には脈診・舌診も行った。さらに,この日の代表穴となる復溜と陰陵泉を中心に,白川先生が参加者全員に刺針した。この際,1つのベッドで順番に刺針を行い,他の参加者がそのまわりを取り囲んで,手技の様子を見学しながら,さらに臨床上の疑問点を講師に質問した。この参加者全員への刺針はたっぷり2時間をかけて行われたが,手技に関しては,参加者の皆さんもたくさんの疑問や悩みを抱えているようで,経験豊かな講師に直接疑問をぶつけて,答えをもらうことで,きわめて実践的で,密度の濃い時間になったようだ。

白川先生の講習

できるだけ実際の臨床現場に即したやり方で講習が行われた


 昼食の休憩時間を利用して,午前中の症例の弁証を各自で考え,午後からは各症例の弁証・配穴の発表を行った。発表に際して,白川先生からていねいな解説があり,臨床に即した脈診・舌診のコツや,弁証配穴の考え方についても語られた。
 症例1は,肝腎陰虚と弁証し,復溜(補)と内庭(瀉)を配穴。症例2は,肝胆湿熱と弁証し,百会・風池・陰陵泉・行間(あるいは太衝)を配穴した。症例2については,模擬患者に対して白川先生が刺針を行うデモンストレーションが行われた。
 最後に,参加者同士が2人1組になって,この日のメインのツボである陰陵泉と復溜を中心に刺針し合った。その間,白川先生とアシスタントの先生が各ベッドを巡回し,正しく取穴できているか,捻転手技ができているかを見てていねいな指導を行った。

白川先生の講習:二人一組で

2人1組になってお互いに刺針し合う


■気病に対処するための実技講習・症例検討

 関口先生の講習は,気病の代表穴とそれに配穴する副穴を使った実技講習・症例検討であった。検討する症例は,2例とも関口先生の経験症例であった。症例1は,主訴が左上腕外側痛・左肩甲骨内縁~上縁部の疼痛・両手指橈側・左足指の麻木。症例2は,腰部の違和感(パンツのゴムが食い込んでいる感覚)・背部~項部にかけて現れる血流感および頭の揺れ感であった。
 午前中,参加者は4人1組のグループに分かれて,各症例の弁証について討論。意見を集約して各グループの意見として出し合い,各グループの見解を相互検証した。こうしたグループ討論では,グループ内で自分の考えを発表することで,自らの病態認識・配穴理由の整理ができるとともに,他人の思考方法も聞けて,たいへん参考になったようである。

関口先生:グループ討論

4人1組のグループに分かれてグループ討論


 午後からは,同じく各グループで配穴処方を討論した。配穴と選穴理由を発表し,意見交換が行われた。その後,各症例について,関口先生が実際に使用した処方を発表した。症例1は,陽気損耗(発症時は陽気亡脱)・推動無力・気血阻滞と弁証し,合谷・足三里(補)+三陰交(先瀉後補)+大杼を配穴。大補元気をはかる配穴として,患部が頸椎であることを考慮して,益気昇提できる補中益気方(合谷・足三里)を中心に配穴した。症例2は,気滞経脈・肝風内動・心絡?阻と弁証し,太衝・陽陵泉・三陰交・風池(瀉)を配穴。腰部の違和感に対して気滞経脈の太衝を中心に配穴した。
 関口先生による処方の解説の後,参加者は2人1組になって,それらの処方を使って相互に施術を行った。その間,関口先生がそれぞれのベッドを巡回し,施術の指導を行うとともに,各人に関口先生自ら刺針を行い,参加者全員が講師の手技を体験することができた。

見解を相互検証

グループ討論で集約した見解を黒板に書き出し相互検証


■臨床的センスが磨かれる講習会

 講習会終了後,ほぼすべての参加者から,講習の内容に満足したという声が届けられた。とりわけ多かったのが,この講習会では,書籍では学べない臨床に直結した内容を多く吸収できたという声だ。「基本的な知識は本を読めばある程度理解できるので,先生方がいかに臨床でこの針を自分のものにしているか,具体的にどのように使われているのかがわかり,とても参考になった」「本で勉強すれば足りるような内容の講習ではなく,弁証や刺針についての臨床的なセンスが磨かれるような講習会だった」「今回は陰陵泉の刺し方(方向・角度・深さ・ひびき方)や補・瀉のときの得気の感じ方の細かな所など,本には書かれていないことがたくさん聞けて勉強になった」「臨床で,どのように『李世珍の針』を活用されているのかが聞けてよかった」という声が寄せられた。
 また,期待を上まわる内容だったという声もたくさんあった。「得気を得られないときどう対応されているかまで教えていただけるとは,期待以上でした」「講師の刺針を自分の身で経験できることは,受講生にとって貴重な財産になる」「受講生と先生とで相互に進められる講義はすばらしい」「討論することによって,思考過程を整理することができた」という声が寄せられた。



 臨床力をつけるための講習会が渇望されている。講習会後に参加者から寄せられたアンケートをみると,そこからは臨床家としての切実な声が聞こえてくる。今回のような「実力養成」のための講習会を,東京以外の地域でも広く開催していく必要を強く感じた。さらなるステップアップをはかりたいと希望している臨床家のみなさんの声に答えるべく,今後は大阪や九州でも同様の講習会を計画している。
  
 

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