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通巻110号(Vol.28-No.3)◇コラム



 1964年1月27日,フランスと中国が国交を樹立。フランスは解放後の中国を西側諸国で最初に認めた国となった。1973年,フランス大統領が中国を訪問したが,西側諸国の元首が解放後の中国を訪問したのもこれがはじめてである。21世紀初頭から両国の関係は蜜月に入り,相互に文化祭を開催するようになった。中医学分野においても,フランスは西側諸国のなかで,いち早く中医を重視した。

●中医書の出版
 フランスでは中医学に関する書籍として1671年に『中医秘典』が出版された。1825年,Pelletan P氏の『論針刺術』とLocroix A氏の『パリ市立大医院針刺治療病歴集』など針灸書籍が出版された。1863年,フランスの駐中国領事Dabry P氏が『中国医学大全』を著し,そのなかで明代の医家・揚継州の『針灸大成』の一部を訳した。フランスの針灸に最も影響を及ぼしたのはSoulie De Morant氏である。彼は上海領事館に駐在した外交官であるが,20年の在任中に,中国語と中医針灸を学び,無数のコレラ患者が針灸治療によって救われていく様子をみた。帰国後,しばらくして外交官を辞し,針灸の臨床と教育に専念し,1934年『真正の中国針刺術』を出版して,フランスとヨーロッパ医学界に対して多大な影響を与えた。さらに彼は『中国針刺術と近代反射療法』(1929),『中国の針灸』(1930)などの書籍を著し,フランス,ひいてはヨーロッパの針灸の伝播に重要な役割を果した。同年,Georges氏が『正宗中国針灸紹介』を出版した影響で,1938年莫朗徳氏が『中国針灸』を出版。80年代以降になると『黄帝内経』『難経』『易経』『素女経』『傷寒論』『瀕湖脈訣』といった中医古典籍も数多く翻訳出版されるようになった。

●臨床と資格教育
 1930年よりフランスの大学と病院で実験的に針灸治療が採用された。その方法は,痛点の刺針と経絡による弁証施針であった。1945年,針灸学会が設立され(1967年にフランス針灸医生科学学会に名称変更),『経絡雑誌』(MERZDZENS)が創刊された。1977年には同学会がフランス針灸学院を創設した。
 その後,多くの針灸関連組織や研究機構ができ,中医・針灸についての研究が進み,経絡の実質・針灸治療・耳針療法などの理論研究,腫瘤・結石・急性腹症などの治療において豊富な経験を積んだ。特に,外科医のPaul Nogier氏が1950年より耳針を実践し,耳針治療点図を作り出し,現在もなおダイエット・禁煙・禁酒・麻酔に用いられている。
 1970~80年の間に,針灸の教育・研究・臨床は急激に増加した。針灸療法は主に内科・リウマチ科・婦人科・麻酔科で応用されている。全国の病院の少なくとも60%で針刺治療が行われている。Université de Nimes地区医療センターには針刺と反射療法による施設が設置されている。1983年の報道によると,12万人いる医師のうち9千人が針灸治療を兼用しており,うち針灸を専門に行う者は1千人である。
 1952年,フランス医学科学院の提案により,衛生省は「針灸は総合治療行為」として承認し,医師の針治療のみを認めた。1985年,衛生省は針灸治療諸問題研究委員会を立ち上げ,針灸治療医者資格の条件規定の研究に着手した。1987年,針灸資格試験と免許制度が実施され,針灸従事者の中医学教育が義務付けられた。1988年,フランスの医師会もこの制度を認めたため,いくつかの大学医学部では針灸教育が正式に開始され,3年に分けて針灸教育が進めらるようになった。
 フランスではこれまで中草薬の使用は法律で禁止されていたが,最近になってようやく状況が好転してきた。関係部門では881味の中草薬の名前をラテン語・中国語のピンインによって分類し,今後の中草薬使用の準備が進められている。また近年,2千8百カ所の中医診療所では中草薬・針灸・推拿が用いられており,45カ所の協会が設立され,1万2千人が参加している。
 1996年,中国・フランス両国衛生省の提案により,パリで「欧州第一医院」が開院した。ここでは針灸・按摩・薬物・気功・飲食学を中心に,治療と研究を行っている。同年,政府は中国とフランスの合弁の中医医院で中薬を利用することを認め,フランス医学会も伝統中医を医療の1つとして認め,保険を使えるケースも現れてきた。しかし,上述した医院以外,中薬の使用と販売はいまだ許可されておらず,フランスの薬局では中成薬は販売されていない。中草薬は薬草店・順勢薬局・華僑の百貨店で購入できる。

●国際交流
 2004年9月,パリで世界中医薬学会連合会・全欧州中医薬学会連合会・全欧州中医薬専門家連合会・フランス中医連合会・フランス杵針中医学院が共同で「人類健康と中医薬」国際伝統医薬大会を開催した。中国・フランス・イギリス・アメリカ・カナダ・ブラジル・南アフリカなど30の国と地域から700人が参加した。2007年2月,フランス教育・科学研究部部長が訪中の間に「両国医学院校針灸教育合作協議」を行い,3月,北京でフランス外交部長が「中華人民共和国とフランス共和国中医薬においての合作協議」に調印し,両国政府間で交流・合作を行うことを決定した。協議書によると,中国側がフランスに針灸教育の実施・発展・審査などの面でサポートし,両国が基礎研究・臨床研究・中薬開発・中薬製造研究・中薬商品の欧州市場における登録準備研究といった内容に取り組み,近いうちに両国中医薬合作委員会が設立されるという。フランスは薬物の有効成分の選別技術に優れ,中国は医学伝統と文化伝統があり,両国の合作は互いを利することになり,大きな成果を上げるだろう。(海洋)

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