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通巻114号(Vol.29 No.3)◇コラム



●中医の教育・研究
 教育面では,1986年イタリアで最初の中医研究生院がパヴィア大学医学院に開設され,中医の人材育成と理論研究を担っている。1987年,同院にはじめて博士後専門課程である中医課程が開設され,そこでは神経内科・外科・神経生理・外科・呼吸器科の成績優秀な者が学んでいる。ただ内容は針灸に限られている。そのほか,医学院の卒業生から希望者を募り,中医理論と治療方法について4年間の教育も行っている。
 研究機構としてはパラチェロッソ研究院がある。同研究院は1971年にローマに開設された伝統医学の研究センターである。開設当初はわずか数名でスタートしたが,彼らは中国各地をまわって,針灸・按摩・太極拳・気功などを学び,さらにドイツ・フランス・スイスなどヨーロッパの伝統医学も学んだ。その後,同センターはイタリア最大の医療・教育・研究・保健・リハビリをまとめる中西医研究機構へと発展している。1987年,パラチェロッソ研究院はローマで中医展覧会を開催。展覧会には中国衛生部の団体も参加し,その模様はイタリア国営テレビや新聞でも報じられ,大きな反響を呼んだ。
 イタリアでは国内の西洋医科大学を卒業すれば中医診療所を開くことができる。診療科目としては,伝統医学・針灸・リハビリ・按摩・歯科(針灸・中医)・婦人科(中医)・精神病科(太極拳・気功)などがあり,胃腸病・頸椎病・小児の近視・アレルギー・喘息・頭痛・うつ状態・結石など,内科・外科・婦人科・小児科の各科に及ぶ。

●国際交流
 1983年イタリア衛生部の支持を得て,最高衛生研究所は中国・ロシア・アメリカ・オーストリア・インドの専門家を招いて「国際天然医学討論会」を開催し,草薬・按摩・推拿・針灸・水療・食療各分野の討論を行った。
 1990年3月,欧州議会の高等教育および研究部がイタリア中医針灸学会に依頼し,「欧州統一教育検討会」がローマで開かれた。イギリス・ドイツ・フランス・オランダ・スペイン・ギリシャ・スウェーデンなど欧州議会会員国のすべての針灸学会が召集され,各国の針灸についての統一教育問題が検討された。また10月にはローマで「欧州針灸講習会」が開かれ,針灸教育について分析・比較・調整が行われた。
 イタリアと中国の交流は21世紀に入ってから活発になり,2004年に温家宝総理がイタリアを訪問した際,両国政府は「中医薬合作諒解備忘録」に署名した。この合作に従って2005年,イタリアの衛生部・教育部・大学の代表団が中国を訪問し,中医研究院を訪れるなど学術交流を行った。この訪問のなかで,南京中医薬大学とミラノ大学・ローマ大学が提携し,理論教育をイタリアで,臨床を南京で行う中西医結合修士課程を開設した。また2007年1月,イタリア衛生部と中国国家科技部は両国に中国・イタリア中医薬連合実験室を創設することを取り決めた。同年3月にはイタリア外交部発展合作総局の発起による「中国・イタリア合作の未来図―中国伝統医薬運用面において」という論壇も北京で行われ,イタリアにおけるさまざまな健康法の普及・中薬の研究・教育などの成果を確認し,今後さらに両国の伝統医学の協調と発展を促進することが話し合われた。
 2008年3月ローマで,イタリア衛生部・EU科研総司・中国科技部が主催する「中欧中医薬大会」が開かれた。大会は中国や欧州各国の関係者が参加し,中医薬の治療効果・品質基準・安全評価など国際的に注目される問題について意見が交わされ,科学技術面での協力をさらに深めることが討論された。
 このほかイタリアでは毎年1回,欧州各国や中国などが参加する国際的な中医中薬大会が開催され,各国の中薬製品が出展されている。

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