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英国における中医法制化12年の歩み(6)最終回

英国中医薬学会(ATCM)会長 沈恵軍


項目
  (1) 背景
  (2) 【2000~05年】初期の草薬・鍼灸の立法経過
  (3) 【2005~06年】立法過程における中医の平等な地位確定
  (4) 【2006~08年】連合立法WGおよびその報告と保健省の第2回一般諮問
  (5) 【2010~12年】この1年の進展と今後の見通し
 ☞(6) 英国の中医界が直面する問題





  英国の中医界が直面する問題


  英国の中医薬事業は,20年余りという長足の発展の過程において,さまざまな問題に直面してきた。これらの問題は現在でも存在しており,極端な言い方をすればさらに深刻化しているともいえる。総合的には,以下のいくつかの点にまとめることができる。
  英国の中医業界は,長期にわたり法的な地位が与えられず,またその反面,法的な制約もなかったことから,学歴の有無にかかわらず中医に従事することができるという状況が発生していた。このため,まったく中医の学歴がない人間でも中医治療を行い,一部の,儲け主義に走って医師としての徳をもたない人間が,患者から不満をもたれたり医療事故を起こしたりして,中医の名誉を著しく傷つけた。この問題については,法制度による管理以外解決の道はない。
  また,ここ15~20年間で,中医に注目する商人が増え,彼らの商売がどんどん発展し,ショッピングセンターや繁華街には,多くの「中医チェーン店」が雨後の竹の子のごとく増加した。しかし,彼らの経営は算盤勘定に傾き,患者の病状や経済的能力を顧みないため,彼らの行為は詐欺だと公然と抗議する者も現れた。もとより,このような経営が長く続くはずもなく,さらにここ2~3年の経済危機も手伝って,多くの「中医チェーン店」は次々と倒産の危機に追い込まれた。現在,体裁を保っている「中医チェーン店」はいくつも残っていない。このように,中医から足を洗う者も増えてはいるものの,中医業界が受けた損失は今後も長期的に存在するだろう。
  さらには長い間,中医師チームにも少数ながら厄介者が存在しており,中医の御旗を掲げて至るところで詐欺まがいの行為を行っている。この数年間では絶えず姿を変え,自ら中医委員会だの連合会だのの会長や主席と名乗るものもいる。このような輩は,中医の学術的尊厳などは一切お構いなしで,学歴があろうとなかろうと,金銭を支払えば入会を認め,会員証を「販売」することで金儲けという目的を達成している。また,個人の名誉や地位のために,「中医独自の法制定,西洋医と同等の地位を勝ち取るためにも,HPC登録に反対」などという,実状にそぐわないスローガンを声高に叫んでいる。このような行為は,英国の主要社会における中医界の名誉を失墜させ,非常に悪い影響を及ぼしてしまう。
  もう1つの問題は語学力である。中国からやってきた中医師チームの「主力軍」が,英語という大きな壁に直面するケースはまだまだ多い。来年の立法登録において,審査基準がIELTS(アイエルツ)の6.5または7級になってしまうと,多くの人が登録できないことになってしまい,廃業の危機にさらされることになる。このことは,われわれ英国中医界が,今後1年以内に解決しなければならない問題である。西洋の慣例によれば,新しい法規を導入する場合は,俗に「老人は古い方法を,新人は新しい方法を使用する」というように,すでに一部の人たちが受けている特別な優遇措置(いわゆる祖父条項(Grand parenting))の過渡期を設けなければならない。この原則に従うならば,すでに登録を済ませている中医人員は,言語面においてはこの祖父条項方式を採用し,彼らが登録をして治療を継続できるように保証するべきである。
  さらに,来年4月に開始されるのは,草薬および中医の立法のみであり,鍼灸については暫定的に延期されている。このおもな原因は,英国の鍼灸界が現在の自己管理モデルに満足しており,立法管理は彼らの現有団体の地位と権利を消失または脆弱化させると考えているために,立法管理をよしとしないことによる。このように,われわれが待ち望んでいる中医立法は,実際のところまだ半分しか実現できておらず,今後も鍼灸の早期立法に向けて努力を続ける必要がある。
  英国の主要社会には,いまだ代替医療に反対する一派が存在しており,特に主流医学界や科学界は,一貫して代替医療の立法管理に反対している。このため,われわれは草薬界と鍼灸界を結びつけ,一丸となってこれに対応する必要がある。国民の声や患者の支持も,非常に重要なのである。


さいごに


  英国における中医の法制化は,すでに11年の歳月を駆け抜けてきたが,最終結果をみるまでにはまだあと1年が必要だ。われわれ英国中医薬学会(ATCM)は,今後もたゆまぬ努力を続け,英国中医界のその他の団体および個人が,個人的な利益を捨て,中医の大局を重んじて,一致団結して英国の中医立法の最良の結末を迎えることを望んでいる。それでこそ,中医薬事業が英国,ひいては全世界に広まり発展することが可能になるのである。


出典:英国中医立法12年的歴程和結局.世界中医薬学会連合会首届中医全球化与人類健康高峰論壇 論文匯編
翻訳:平出由子

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