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国務院「中医薬の特色の発展を加速させるいくつかの政策措置」<2021年2月9日>

 
2016年「中医薬法」(「中華人民共和国中医薬法」)が制定され,中医学は中国において正式な国家的法律のなかで位置づけられるようになった。その後も中国政府は中医薬のさらなる発展を促すためにさまざまな公式文書を公表している。2021年2月9日に国務院によって公表された「中医薬の特色の発展を加速させるいくつかの政策措置」(原題は「関於加快中医薬特色発展若干政策措施」)もその一つである。「中医薬法」によって中医薬発展の枠組みが作られ,2019年10月に国務院が公布した「中医薬の継承および創新と発展の促進に関する意見」(全文訳を当社HPで公開http://www.chuui.co.jp/cnews/002974.php)により具体的な内容が示されたが,今回の文書ではさらに踏み込んだ形で中医薬発展のための政策措置を明らかにしている。今後の中国における中医学の動向を知るうえで非常に重要な文書であることからこのたび全文を翻訳した。(編集部)



 

中医薬の特色の発展を加速させるいくつかの政策措置


 党の「十八大」〔第18期全国代表大会,2012年開催〕以来,習近平同志を核心とした党中央は,中医薬事業をとくに重要なものと位置づけ,中医薬の改革と発展において目覚ましい成果をもたらした。新型コロナウイルスの感染拡大後は,中医薬は感染の予防・抑制および治療に広くかかわり,重要な貢献を果たした。しかしわれわれは,中医薬には依然として,質の高い医療の供給が不足し,人材の絶対量は不足し,創新システムの遅れや,中医薬の特色を十分に発展させきれていないなどの問題が存在することを忘れてはならない。われわれは,習近平による新時代の特色ある社会主義思想のもと,党の「十九大」〔第19期全国代表大会,2017年開催〕および第19期「二中」「三中」「四中」「五中」〔党中央委員会による第19期第2回全体会議(2018年開催)~第5回全体会議(2020年開催)を指す〕全国大会の精神を徹底して貫き,『中共中央 国務院関於促進中医薬伝承創新発展的意見』〔中国共産党中央・国務院の中医薬の継承・創新・発展の促進に関する意見〕と全国中医薬大会〔国務院によって2019年10月25日に北京で開催された〕で示された施策をさらに実行しなければならない。そして中医薬発展の法則を遵守し,新型コロナウイルス感染症に対する中医薬の予防・治療経験・方法を総括して,残った問題を打破し,中医薬の特色や利点をさらに発揮させなければならない。このようにしてこそ,中医薬と西洋医学が互いに補充し合い,双方の発展を推進することができる。そのため,以下に,現時点における政策措置を提示する。


一.中医薬人材の基礎を固める
(一)中医薬教育の全体的なレベルを向上させる。中医薬課程を主体とした「先中後西」〔中医学を優先的に教えた後に西洋医学の知識を教える〕の中医薬系専門のカリキュラムを確立し,中医疫病〔感染症〕課程を増設する。中医薬大学が,中医薬伝統文化の深い知識をもち,中医を愛する優秀な学生の選抜・育成を強化することを支援する。中医の思考や中医の臨床技能の育成を強化し,これらを主体として学生の学業評価を行う。中医薬大学や学科における「双一流」〔世界に通用する一流大学と一流学科〕構築への支援を強める。100前後の中医薬系の一流の本科・専門課程を構築し配置する。高等技術専門学校におけるハイレベルな中医薬系専門課程の設置を推進する。大学付属病院の中医臨床教育機能を強化する。(教育部・国家発展改革委員会・国家中医薬局が指揮を執り担当,以下同)
(二)中医薬の「師承」教育の発展を堅持する。多岐に及ぶ「師承」教育〔師匠から弟子に伝える教育方法〕の項目を増やし,「師帯徒」〔師匠と見習い〕教育の範囲と数を拡大して,臨床における実践教育の全過程を通じて「師承」教育を行う。長期にわたり,名老中医の学術経験の継承や,優秀な中医臨床人材の育成,継承工作室の設置などのプロジェクトの推進を堅持する。成果による賃金の分配は,「師帯徒」にあたっている中医師に対し多めに配分する。中医薬専門家である全国の老中医の学術経験を継承するにあたり,手順にしたがって条件に合う継承者は,中医専門学位を申請する試験の科目として外国語の代わりに医古文を用いることを奨励する。(国家中医薬局・人力資源社会保障部・教育部・国家衛生健康委員会・各省の人民政府が担当)
(三)中医薬の人材の評価・奨励を強化する。各地で,実態に即して中医薬の優秀な人材を評価・奨励するしくみを構築する。中医薬の能力・医療倫理・医療スタイルを,中医薬の人材を評価する際のおもな基準とし,治療能力を中医師のおもな評価内容とする。院士〔国が規定した科学技術と工学各分野における最高学術称号〕の選考や国家重大人材プロジェクトなど,ハイレベルな人材の評価・選出においては,中医薬の人材の個別計画や単独的評価を検討する。(人力資源社会保障部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局・工程院・中国科学院・各省の人民政府がそれぞれ担当)


二.中薬産業発展の活力を向上させる
(四)中薬の審査・承認の管理レベルを適正化する。中薬の審査・承認のしくみの改革を加速し,技術サポート能力を強化し,中薬の登録申請の技術指導レベルおよび登録サービス能力を向上させ,部門間の横のつながりを強め,科学技術・医療・中医薬などの部門の推薦により,条件に合う中薬の新薬が迅速に審査・承認を受けるような有効なしくみを構築する。中医の臨床における需要にもとづき,国家重大科学技術プロジェクトの成果の転換を加速する。技術を評価する内外部門の勢力を統括的に動かし,第三者に中医薬研究プラットホームの専門資格を授け,国レベルの中医薬技術評価業務を請け負わせることを検討する。第三者による中薬の新薬登録の検査機関の数を増やす。(国家薬品監督管理局・国家衛生健康委員会・科学技術部・国家中医薬局が担当)
(五)中薬の分類と登録管理を改善する。中薬の研究開発の法則を尊重し,中薬の登録分類と申請要件を改善する。人的使用経験がある中薬の新薬の審査・承認を適正化し,条件に合った中薬の創新薬・改良型新薬・古代経典中の名方・同名同方薬などに対し,法規制にもとづき非臨床の安全性研究および一部の臨床試験の免除を実施する管理体制を検討する。データサイエンスなどの現代技術の手法を駆使して,中医薬理論・人的経験・臨床試験を合わせた「三結合」の中薬登録審査エビデンスシステムを構築し,現実世界での中薬研究のエビデンスシステムの構築を積極的に検討する。古代経典の名方や中薬の複方製剤〔複数の薬味で構成される中薬製剤〕の登録審査を適正化する。中薬の新薬製造の全過程における品質管理の技術研究指導の原則体制を改善する。(国家薬品監督管理局・国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)


三.中医薬発展の力を強化する
(六)政府投資の実施を保障する。各レベルの政府が公立中医病院を運営する主体として,公立中医病院の基本建設・設備購入・重点学科の発展・人材育成などに対して政府投資の政策を実施する。地方政府の特別債権などの方法を通じ,条件に合う公立中医病院建設プロジェクトの推進を支援する。(国家発展改革委員会・財政部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局・各省の人民政府が担当)
(七)多方面からの社会投資を増加させる。条件に合い実力もあり希望する地方が先行して,地域独自の計画・用地・価格・保険・融資といった支援政策を臨機応変に活用し,社会投資を奨励・誘導し,中医の臨床における競争力を向上させて,中医薬健康サービスの「高地」〔優位な場所〕および教育・産業の集合エリア〔教育機関や企業を集中させて効率化をはかる経済政策の一つ〕を構築する。条件に合う中医診療所を,医連体〔医療連合体の略,各レベルの医療機関が連携して医療資源や情報の共有・連携を強化するしくみ〕に組み入れる。条件に合う中医診療所がチームを組み,家庭医〔かかりつけ医〕契約サービスを展開して,規定にもとづきサービス料を徴収することを奨励する。社区が「家庭医」サービスを提供する中医診療所に,無償で診療場所を提供することを奨励する。(国家中医薬局・国家衛生健康委員会・各省の人民政府が担当)
(八)資金調達方法の支援を強化する。条件に合う中医薬企業の上場による融資および社債などの債券の発行を積極的に支援する。社会資本による中医薬産業への投資基金の設立を奨励し,中医薬産業への長期的投資能力を強化する。各レベルの政府が法令に従い,融資担保機関による中医薬分野の中小企業向け銀行融資保証の強化を支援することを奨励する。クレジットサービス機関に中医薬業界のクレジット情報の収集・処理能力を向上させるよう支援し,金融機関による金融商品の革新を奨励し,中医薬の特色ある発展を支援する。(国家発展改革委員会・人民銀行・銀行保険監督管理委員会・証券監督管理委員会・各省の人民政府が担当)


四.中西医結合の医療制度を改善する
(九)中西医結合の医療モデルを創新する。総合病院・感染症病院・専門病院などにおいて,「体制・チーム・対策・効果を有する」中西医結合の医療モデルを徐々に推し広める。臨床の各診療科における中医師の配置を強化し,中西医結合チームを組み,中西医が統合した診療を展開して,「中医が適当であれば中医を選択し,西洋医学が適当であれば西洋医学を用い」て,中西医による多学科の診療システムを徐々に構築する。各診療科・各医療機関および医連体内部間の中西医の提携を奨励する。中西医結合の成果を,病院の等級審査・業績評価に組み入れる。病院の臨床医師に対し,順次に中医薬専門知識の研修を実施し,所属診療科の専門分野における通常の中医診療能力を身につくようにさせる。(国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)
(十)中西医共同で感染症予防・治療のしくみを整備する。中医薬系のスタッフがいち早く公衆衛生の応急処置に全面的に加わり,中医薬の予防・治療措置を,緊急対応策と技術プランに全面的に取り入れる。重大公衆衛生事案および感染症予防・治療に対応するための国の中医薬分野の中核人材バンクや,国の中医感染症予防・治療および緊急医療救援チームを構築し,重大感染症の予防・抑制に関する理論や技術的手法および関連する現代医学の技術トレーニングを強化する。疾患予防・管理機関における中医薬部門および専門家チームの設置を検討する。(国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)
(十一)西洋医の中医学習制度を改善する。2021年度より,中医薬課程を本科の臨床医学系専門必修科目および卒業実習に組み入れ,カリキュラムの時限を増やす。高等技術専門学校の臨床医学専攻において,中医基礎および適合する技術を必修カリキュラムとして開設する。中医専門学位を専攻する臨床医学系の学生が,中西医結合医師資格試験および中医師標準化研修に参加することを認可する。九年制の中西医結合教育を試験的に展開する。臨床医学系研修医のための標準化研修拠点における中医薬診療科の設置を強化し,中医薬の知識・技能研修の内容を徐々に増加していく。臨床・口腔・公衆衛生系の医師は,必要な中医薬継続教育を受けられるようにする。西洋医のための中医学習重大プロジェクトの実施を検討し,10~15年をかけて,相当数のハイレベルな中西医結合人材と中西医結合サービスを提供できる全科医師を育成する。(教育部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局がそれぞれ担当)
(十二)中西医結合の臨床研究レベルを向上させる。中西医結合学科(専門科)の設立を展開する。重大難病・感染症・慢性疾患などに対し,中西医の共同研究を実施する。中西医結合による臨床効果の評価基準を構築してゆき,治療効果が高い病種を選択してリスト化する。モデルとなる試験拠点を展開し,5年間で100前後の中西医結合診療計画を構築する。(科学技術部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)


五.中医薬発展の重大プロジェクトを実施
(十三)中医薬の特色を備えた人材育成プロジェクトを実施する。既存のリソース・資金調達ルートを頼りにして,5~10年間で約300人の国医大師と全国名中医を選出し表彰する。さらに約500人の「岐黄学者」〔伝統医学に精通した学者〕・約3,000人の中医薬優秀人材・約10万人の中医薬中核人材を育成し,地方および機関の育成責任を強化し,中央政府・地方・機関で育成にかかる経費を分担するしくみを構築する。中医薬の卓越した教師の育成を展開し,中医基礎・経典・臨床教師の育成強化に重点を置く。大学の付属病院・中医の標準化研修拠点など人材育成のプラットホームの構築を強化する。中医基礎・経典・感染症の予防治療・中薬の炮製と鑑定におけるハイレベルな学科の構築を支援する。末端機関における中医薬知識・技能の育成を行う。(国家中医薬局・教育部・国家衛生健康委員会・各省の人民政府が担当)
(十四)中医医療サービスシステムの構築を強化する。省・委員会(局)は共同でいくつかの中医(中西医結合を含む)分野の国家医学センターおよび地域医療センターを設立する。中医の臨床能力が高く,中医薬文化の雰囲気が色濃く,機能と配置を最適化された中医薬継承創新センターの建設を加速する。省内・市内における高品質の中医リソースの拡充およびバランスのよい配置を推進し,中医が得意とする疾患治療を行い,中医の特徴が明確に現れている中医病院や診療科を設立する。ハイレベルな中医病院による国の中医感染症予防・治療拠点を建設し,緊急医療救命拠点をつくり,中医病院の感染症科・肺疾患科・発熱外来・転換可能な感染症エリア・転換可能な集中治療室などを強化する。中西医が共同で“旗艦”病院・“旗艦”診療科・“旗艦”末端医療衛生機関を建設する。(国家発展改革委員会・教育部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局・各省の人民政府が担当)
(十五)中医薬の科学研究プラットホームの設立を強化する。中医の重点分野におけるバイオセーフティーレベル3の実験室の設置を推進する。中医理論・中薬資源・中薬創新・中医薬の治療効果の評価などの重点分野を中心とした国の重点実験室を建設する。中医薬の技術と設備の開発や成果の転換・応用・実演のための国立科学技術イノベーション拠点の建設を強化する。中医が得意とする疾患や特徴的な治療法などにフォーカスして,中医系の国立臨床医学研究センターを10~20カ所建設する。公衆衛生上の緊急事案に対応するための中医薬科学研究のサポートプラットホームを構築する。(国家中医薬局・国家発展改革委員会・教育部・科学技術部・国家衛生健康委員会・中国科学院が担当)
(十六)名医堂プロジェクトを実施する。優良な中医医療機関およびチームにより,名医堂の開業プラットホームを設立する。国医大師・名老中医・岐黄学者などの名医チームが駐在する名医堂に対し,開業支援・ブランド保護・自主開業・自主運営・自主育成・損益の自己負担などの総合的政策を実施し,名医チームが運営するハイレベルな中医機関を構築する。実績のある社会組織によるチェーン経営する名医堂の設立を奨励・支援する。名医堂が自身の特徴やブランドをつくりだし,一流の医療環境を作り上げ,一流の中医薬サービスを提供する。(国家中医薬局・国家発展改革委員会が担当)
(十七)中医薬の産学研医政の共同プロジェクトを実施する。ハイレベルな研究機関・大学・中医病院・中薬開発企業により,国レベルを代表する中医薬研究および科学技術成果の孵化転化拠点を建設し,中医薬の発展を制約する重大な科学技術の問題を解決して,中医の特色ある診療プランを策定し,中医薬の先進的な設備や中薬の新薬を作り出す。中医病院と企業・科学研究機関・教育機関の協力強化や資源共有をサポートし,優秀な研究成果の市場への応用を促進する。ブロックチェーンなどのテクノロジーを活用し,中医薬の臨床効果の収集と客観的評価を強化する方法を模索する。(科学技術部・国家発展改革委員会・教育部・工業および情報化部・国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)
(十八)道地薬材の向上プロジェクトを実施する。道地薬材の優良種繁殖拠点と生産拠点の建設を強化する。中薬材の採取・産地における一次処理・バイオ栽培・野生種の保護・人工栽培技術の基準を策定し,中薬材の標準栽培を推進して,中薬材栽培専門の協同組合の発展を奨励する。標準化・集約化・大規模化され,生産情報のトレーサビリティを実現した近代的な中薬材の物流拠点の建設を促進し,近代化した物流システム基準を満たした中薬材の一次処理および物流貯蔵管理センターを発展させる。医療機関・製薬企業・生薬の加工工場に,品質が保証され,追跡可能な中薬材を購入するよう誘導する。中薬の標準化プロジェクトの実施を徹底する。中薬材の品質・安全性のリスク評価とリスクモニタリングを強化し,迅速な検査装置の研究・開発および技術革新を促進して,第三者による検査プラットホームを構築する。(農業農村部・国家林草部・工業および情報化部・商務部・市場監督管理総局・国家中医薬局が担当)
(十九)国家中医薬総合改革モデル地区を建設する。体制のしくみを改革し,地方の積極性・主導力・創造性を十分に引き出し,欠点を補い,弱点を強化し,強みを伸ばして,中医薬法規制・発展政策措置・管理システム・評価システム・標準システムの構築・整備を加速して,中医薬の管理体制および管理能力を近代的なレベルにまで引き上げる。中医薬事業・産業における質の高い発展のパイオニアを3~5カ所創出する。(国家中医薬局・国家発展改革委員会・国家衛生健康委員会・工業および情報化部・国家薬品監管理督局が担当)
(二十)中医薬開放発展プロジェクトを実施する。「十四五」〔第14次5カ年計画,2021~25年の5年間の国家計画〕において中医薬の「一帯一路」発展計画を策定する。社会勢力〔社会の発展に参加する人や組織〕が市場アプローチを取り,協力の意思と潜在力のある国と共同で友好中医病院や中医薬産業団地を設立することを支持・奨励する。「インターネット+中医薬貿易」を発展させ,訪中して中医薬サービスを受ける人たちへのビザ発給を簡便にする。国際的な伝統医学の基準と監督管理法規を協調して策定し,国際的な伝統医学の科学技術協力を支援する。(国家発展改革委員会・商務部・外交部・海関税署・国家薬品監督管理局・国家中医薬局がそれぞれ担当)


六.中医薬発展の効果と収益を向上させる
(二十一)中医薬サービスの価格政策を改善する。臨床的価値と技術的対価にもとづいた中医医療サービスの衛生技術評価システムを構築し,中医医療サービスの価格政策を適正化する。医療サービス価格の動態的な調整のしくみを備え,毎年,価格調整の評価・審査を行い,価格調整の開始条件を満たすものに対して,タイムリーに価格を調整し,中医医療サービスの特徴を十分に踏まえたうえで段階的な価格設定政策を改善する。おもには,効能や治療効果が顕著である・広範囲の患者が受け入れ可能・特徴や利点が明確である・労務価値に見合っている・長きにわたり活用されてきたなどの利点を有する中医医療サービスを価格調整の範囲に組み入れる。医療機関が炮製・使用する生薬や中薬製剤の価格を自ら設定し,条件に合うものは規定にもとづき医療保険の給付対象とする。(国家医療保障局・国家衛生健康委員会・国家中医薬局が担当)
(二十二)中医薬の医療保険の管理措置を整備する。治療効果や費用面で有利な中医医療サービスを,基本医療保険の給付範囲に含めることを強く支持し,有効性や経済性などの要素を総合的に考慮し,規定にもとづき目録〔保険薬の収載リスト〕の甲・乙分類〔中国では償還対象となる保険薬を甲乙2種に分類している〕を確定する。中医薬の特徴に見合う医療保険の給付方法を模索し,中医治療が有利な疾患を公表して,中医と西医で,同じ疾患に対し同じ効果を上げる場合,同じ価格とすることを奨励する。一般的な中医薬の診療項目に対しては,引き続き項目ごとに支払いを行う。民間の保険会社において中医薬の特徴を踏まえた健康保険商品の販売を奨励し,保険会社と中医薬機関の情報をリンクさせるしくみを構築する。保険会社・中医薬機関が共同で健康管理サービスを展開することを支援する。中医薬サービスの基本医療保険給付範囲への導入と費用の監督管理を強化する。(国家医療保障局・国家衛生健康委員会・銀行保険監督管理委員会・国家中医薬局が担当)
(二十三)中医の非基本サービスを合理的に展開する。公立の中医医療機関が国民のニーズに応えられるだけの基本医療サービスを提供し,基本医療費が安定していることを前提に,民間保険会社がカバーする非基本の医療サービスを提供することを支援する。条件を整えた地方において,公的サービスをよく成し遂げた公立の中医医療機関に対し,特別な需要のある医療サービスの割合制限を緩和させ,公立の中医医療機関が政策の範囲内で独自に国際医療部門を設立し,国際医療のサービスの量・項目・価格を独自に決定し,収支残高をスタッフの待遇改善や専門診療科の強化と病院の発展に用いることを許可する。(国家衛生健康委員会・国家中医薬局・銀行保険監督管理委員会・各省の人民政府がそれぞれ担当)


七.中医薬発展のための良好な環境をつくる
(二十四)中医薬の知的財産権の保護を強化する。中薬分野の発明特許の審査ガイドラインを策定し,中医薬分野における特許審査の質を向上させ,中薬技術の国際特許出願を促進する。中薬の商業的機密保持制度を改善し,適切な機密保持を強化し,機密の中身の商業的価値を向上させ,世界の中医薬知的財産権の保護を強化する。地理的表示保護(IGP)規制のもと,道地薬材の表示保護と活用を実施する。特有の炮製方法で処理された生薬を,中薬品種の保護範囲へ組み入れることを検討する。(市場監督管理総局・国家知識産権局・国家中医薬局・国家薬品監督管理局がそれぞれ担当)
(二十五)中医薬の科学技術の管理を適正化する。国の中医薬科学技術研究開発プロジェクトを強化し,中医薬の科学研究の方法論・治療効果の評価・倫理審査などの研究を強化する。各省(自治区・直轄市)の中医薬科学技術プロジェクトの構築や,中医薬管理部門による同プロジェクトの統一計画の実施を奨励する。中医薬の科学技術活動の法則に関する研究を強化し,中医薬の科学技術評価システムの構築を推進する。(科学技術部・国家中医薬局が担当)
(二十六)中医薬文化の普及を強化する。中医薬文化の宣伝を確実に強化し,大衆に中医薬は健康促進に役立つ文化であることを認識させる。中華優秀伝統文化の継承・発展プロジェクトにおける中医薬の項目を増やす。伝統医学の無形文化遺産の保護・継承を強化する。国立中医薬博物館を建設する。中医薬大学・科学研究機関の中医薬古籍の保護条件の改善を支援し,これらの利用能力を向上させる。中医薬文化の普及活動を実施し,小・中学校において中医薬文化の教育を展開し,中医薬文化普及のプラットホームおよび高品質のプログラムを構築する。(中央宣伝部・教育部・国家発展改革委員会・文化和旅游部・国家衛生健康委員会・国家新聞出版広電総局・国家中医薬局・国家文物局が担当)
(二十七)中医薬の法制化のレベルを向上させる。関連の法律・法規および規則の改正を推進し,地方独自の法規の策定を強化する。中薬の監督管理チームを強化し,中薬の審査・評価および監督管理を近代的なレベルにまで引き上げる。不正行為の記録制度を策定し,中医薬健康サービスを提供する機関およびそのスタッフにおける経営の信頼性や営業状況を統一された信用情報のプラットホームに組み込み,「信用中国」のウェブサイトや国の企業信用情報公開システムを通じ,関連企業の行政免許や行政処分などの情報を法律に則って閲覧できるようにする。(司法部・国家衛生健康委員会・市場監督管理総局・国家中医薬局・国家薬品監督管理局がそれぞれ担当)
(二十八)中医薬業務に対する管理指導を強化する。国務院中医薬工作部際連席会議の役割を十分に発揮し,タイムリーに重大問題を検討して解決する。衛生・健康の行政部門は,業務全体において一体となって中医薬業務の計画・推進・実施・審査を行い,中医薬の継承・創新・中西医結合を強化し,「健康中国プラン」への中医薬の参入・基本医療衛生制度の設立・優良で効果の高い医療衛生サービスシステムの構築などを全面的に実施し,資源の配置・政策のしくみ・制度の取り決めなどにおいて中医薬に比重を置くようにする。中医薬の管理部門は,中医薬の標準の策定・科学研究・人材育成・救急救命・文化の普及などの事業に力を入れなければならない。関連部門はその職務を全うし,各プロジェクトの実施を着実に推進しなければならない。各地では中医薬管理機関の建設をさらに強化する必要がある。関連地域は,実情に合わせ当地の少数民族医学の発展を支援するための政策措置をさらに改善する。


翻訳:平出由子
原文:関於加快中医薬特色発展若干政策措施(2021年2月9日)
http://www.gov.cn/zhengce/content/2021-02/09/content_5586278.htm
 

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