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通巻116号(Vol.30 No.1)◇リポート



編集部

 2008年11月3日~5日にかけて,天津中医薬大学および第1付属医院を訪問した。ちょうど「天津中医薬大学設立50周年記念式典」開催の時期と重なり,天津には国内外から大勢の卒業生や関係者が集結していた。校舎の壁面には巨大な赤地の垂れ幕がいくつも掲げられ,華やいだ祝賀ムードに溢れていた。
 今回,記念式典のホストとして準備に追われる張伯礼学長をはじめ,大勢の患者の診療にあたっていた第1付属医院の韓景献院長,石学敏教授,武連仲教授らが貴重な時間を割いてインタビューに応じてくださった。
 天津中医薬大学を訪れて最も驚かされたのは,日本語を話す中医専門家が非常にたくさんいたことだ。天津と日本との中医学交流史を紐解くと,25年間続く後藤学園との学術交流が特筆される。日本語を話せる中国人専門家の多さは,長年にわたる交流の成果の1つといってよいであろう。日本から本場の中医学や針灸を学びに行く際に,言葉の壁が取り払われていることの意味は大きい。これからの日中の学術交流を展望して,天津中医薬大学が大きな役割を果たすであろうことが予感された。
 天津中医薬大学第1付属医院は,中国全土の針灸センターとしての役割も担っており,針灸専門の施設として,病院の規模,患者の数,医師の質のいずれにおいても,中国屈指のレベルを誇っている。一方でその患者の多さから固定処方で流れ作業的に治療されているとの声も聞かれるが,武連仲教授のように針灸臨床における弁証論治の重要性を強調する先生もいる。今後,日中の活発な学術交流を通して検証が深まっていくことを期待したい。

天津中医薬大学第1附属医院C棟
第1付属医院C棟(国際医療康復ビル)。16階建てのビルで,針灸科およびリハビリ科の病棟が入っている。




病院紹介

 天津中医薬大学第1付属医院は1954年に創設され,今年で54年の歴史をもつ。1985年全国7カ所に設けられた中医の重点付属病院の1つになり規模が拡張され,さらに1990年から現在の場所(鞍山西道)に移転,ベッド数も飛躍的に増加した。2000年に16階建ての新しい建物(国際医療康復ビル)が完成(ベッド数は1,300床)。現在さらにベッド数が増え1,700床を有する。外来患者数は1日平均5,000人以上あり,この20年間連続して毎年100万人を超えている。1,700人以上の職員が従事しており,そのうち中国工程院院士2人,政府特別手当を受ける専門家13人など,国家レベルの臨床家・研究者を多数擁している。



天津中医薬大学第1附属医院A棟
第1付属医院A棟。

天津中医薬大学第1附属医院C棟入り口
C棟の正面入り口。「中国針灸センター」の看板が掲げられている。

天津中医薬大学第1附属医院薬局
第1付属医院内の中薬の薬局。

天津中医薬大学第1附属医院外来待合室
外来待合室は大勢の患者で溢れかえっていた。

天津中医薬大学第1附属医院C棟リハビリ室
C棟内にあるリハビリ用の施設。




 第1付属医院は中医学の特色を保持しながら,その優位性を発揮できる病院として非常に高く評価されているが,特に針灸治療の方面でその名を国内外にとどろかせている。中国工程院院士の石学敏教授をはじめ,きわめて高いレベルをもった針灸医師が大勢いる。針灸科だけでも600床以上のベッドを有するが,この数は全国の病院の針灸科が有するベッド数の約40%を占める。また針灸科を受診する外来患者は1日平均2,000人以上に達する。


石学敏教授
 石学敏教授は脳血管疾患における針灸治療を得意としており,石教授の開発した「醒脳開竅法」「石氏中風単元療法」は,脳卒中に対する針灸治療の有力な手法とされ,脳卒中の各病期および後遺症・合併症などに対する系統だった診断治療法則になっている。これによって脳卒中に対する治療効果は飛躍的に高まり,後遺症を軽減することができるようになった。醒脳開竅法はかつて国家科学技術進歩賞3等を獲得,国家科学技術部の推進プロジェクトと国家中医薬管理局の10大医薬プロジェクトの1つに選ばれた。石氏中風単元療法は国家中医薬管理局の科学技術成果プロジェクトに選ばれた。

 中国工程院院士である張伯礼教授(天津中医薬大学学長)は,心脳血管疾患と中医薬の現代化の基礎研究に携わり,めざましい研究成果と臨床効果を上げている。特に現代科学技術を用いた中医薬学の研究では,いくつもの重要な成果を上げている。張教授は第7~10回までの各5カ年計画の重大プロジェクトの一部を担当し,さらに国家重点基礎研究計画(973計画)の2つのプロジェクト(「方剤のカギとなる科学問題研究」「方剤配伍規律の研究」)では主席科学者として担当している。

張伯礼教授のインタビュー記事はこちら


韓景献教授
 天津中医薬大学第1付属医院院長の韓景献教授は老年性認知症など難治性疾患の治療を得意とする。1993年に日本から老化促進モデルマウス(SAM)を導入し,中国国内でいち早く刺針による抗老化研究に着手。「三焦気化失常相関学説」を提起し,「益気調血,扶本培元」刺針法による老年性認知症の治療を確立した。さらに新しく「カルシウムイオン再分布学説」を提起し,中医老年医学における研究成果を上げている。

 刺針治療では脳卒中と老年性認知症で,中医治療では冠動脈疾患・頸椎疾患・糖尿病・腎疾患・血液疾患・腫瘍・リウマチ・ウイルス性心筋炎・糖尿病性足壊疽などで確かな効果を上げている。特に脳卒中と老年性認知症の刺針治療は中国国内屈指のレベルを誇っている。


天津中医薬大学設立50周年記念式典会場
「天津中医薬大学設立50周年記念式典」と同時に,第1回世界中医薬教育大会が開催された。国内外から500名以上が参加した。

第1回世界中医薬教育大会
開幕式では,教育部副部長の章新勝,衛生部副部長・国家中医薬管理局局長の王国強,世界中連主席の佘靖らが出席し,中医教育の標準化と中医薬の国際化をテーマに演説が行われた。





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