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▼書籍のご案内-序文

写真でみる脳血管障害の針灸治療

[ 鍼灸 ]

まえがき

 中風-脳血管障害の予防と治療は,中国のみならず世界の医学界で大きな課題とされています。本病は人類の健康を多大に脅かす疾病の1つであり,死亡率ならびに後遺症を残す確率は現在でも非常に高いものとなっています。地球上での本病の発症は1日数十万人とも言われており,本人およびその家族に極めて深刻な苦痛をもたらしています。
 したがって本病の予防ならびに治療に対する研究は,人類およびその家庭の切実な要望であり,また私ども医療スタッフの大きな課題でもあります。この点から出発して,私は1973年から中風病の臨床研究ならびに発症原理について20年にわたって研究を行い, 一定の独自の成果をおさめてきました。この治療法の大きな特徴は針灸を主な手段としたところにあり,治療研究およびそのメカニズムの研究において,驚くべき突破口を切り開くことができました。これは中風病の治療と予防という課題に対し,まったく新しくかつ有効な道を開くものであります。
 本書では,私どもが行ってきた「針による中風治療-醒脳開竅法」の全臨床研究過程とその内容,また実験データを紹介しております。数年来,私はこの独自の治療法を日本の医療専門家に紹介してきましたが,この治療法により日本国のより多くの中風患者に福音をもたらすことができれば,このうえもなく光栄であり,喜ばしいことであります。
 最後に,本書中には意図したところが十分にはたされなかった点が多々あろうかと存じますが,御一読の上,御批判,御教示をいただければ幸いです。

著者 石 学 敏
中国,天津にて 1991年3月15日

中国刺絡鍼法

[ 鍼灸 ]



 このたび,『中国刺絡療法』(原書名は『中国実用刺血療法』)が関係者の努力によって,翻訳出版される運びになったことは,鐵灸治療技術の幅を広げるためにも,また各種疾病の治療効果を拡大するためにも大きく役立つものと信じている。
 そもそも刺血,刺絡,瀉血療法は,名称は異っていても人類の発展過程において,津の東西を問わず古くから行なわれてきた治療である。
 中国の医学史をみても石携時代から尖った石の先で血を出す治療は行なわれてきた。これが「?石」といわれる鍼の基礎になった。
 鍼灸治療の原典とされる『黄帝内経』のなかにも,刺血,刺絡は重要な手段の1つとして「血を取る」言葉が頻繁にあらわれる。
 治療法は気血の補瀉には欠かせない治療法として,古くから行なわれてきたにもかかわらず,なぜか明治時代になって禁止されているかのようにうけとめられてきた。西洋医学崇拝の観念から,伝統のあるこの療法,特に鍼灸治療の一分野としての方法を無視されてしまったというしかない。
 本治療法は,中国の研究では,非常に広範囲な疾患に利用されていて,日本で今日まで見すごされてきたのが不思議な位である。消毒を完全に行い感染を予防する限り危険な治療でないことは明白である。
 この書が多くの鍼灸師の方々に読まれて,刺血治療が一般化されることを願って序と致します。

日本刺絡学会会長
森 秀太郎
平成11年5月30日

針師のお守り 針灸よもやま話

[ 鍼灸 ]

まえがき

 本書は過去十数年にわたって、雑誌『中医臨床』に掲載してきた「針灸よもやま話」を『中医臨床』創刊二十周年を期して、一冊にまとめたものである。
 「針灸よもやま話」は『中医臨床』の埋草的なものとして、とかく理論的で堅くなりがちな誌面に対し、新聞の四コマ漫画のように一片の清涼剤にでもなればと思って書きはじめたものである。字数はなるべく一ページ(一五〇〇字前後)に納まる程度とし、その時々に思いついたテーマに対し、かなりくだけた表現と内容で論を展開している。
 文章自体は稚拙であっても、本書の内容は誰かの模倣ではなく、すべて筆者のオリジナリティであることを自負している。したがって、針灸理論の一般常識とはかけ離れた持論が展開されている部分もあるが、本書を一読していただければ、そこに筆者の針灸師としての視点をご理解いただけるものと推察する。
 本書の上梓にあたっては、内容別に分類する意見も寄せられたが、内容に分量がなく、系統だっているわけでもないので、筆者の意向で『中医臨床』の掲載順とした。読者諸氏が目次から面白そうな所を選んで、アトランダムに読んでいただければ、それで十分である。
 本書に登場する石山淳一先生と稲垣源四郎先生が筆者と同じ高校(市立一中=都立九段高校)の卒業生であることを後日、知った。不思議なご縁である。

浅 川 要
二〇〇〇年三月末日
東京白山にて

中医針灸学の治法と処方-弁証と論治をつなぐ

[ 鍼灸 ]

内容説明

 本書は数十年間,針灸の臨床と教育に携わった著者の経験の結晶である。本書には全編にわたって針灸処方学の系統性と実用性がいきいきと反映されている。
 総論では,針灸の立法処方,治療原則,処方配穴などを概述しているほか,針灸治療の大法に重きをおき,解表,和解,清熱,去寒,理気,理血……減肥,美容など20法に分けて,経典および各家学説を引証し,簡明に要点を押さえて,論述している。総論は,その次の各論の基礎となるものである。
 各論では,六淫病,痰飲病,気血病などの治法と処方を13章に分けて列記した。臨床実践の必要性に符合するように,各章ではまずその生理,病理,および弁証方法を述べ,その後に証をもって綱とし,治法処方を目とし,また処方用穴の意義を詳しく解釈して,理,法,方,穴の一貫性に努めた。
 本書は中西医高等院校[中国各地の中医薬大学などの総称]の針灸科,推拿科,傷科の教師と学生が,教学,臨床,科学研究のなかで参考にし応用するのに供すべきものである。




 中医学で疾病治療を行うには,理,法,方,薬のうちの1つでも欠けてはならない。理とは弁証分析を通じて疾病の本質を探り当て,発病のメカニズムを明らかにすることである。法とは発病のメカニズムにもとづいて,証に対する治療法則を確定することである。次に,法にしたがって方を選択し,方を根拠に薬が用いられる。つまり,法は理から導き出され,方は法にしたがって立てられ,薬は方に立脚して選ばれるのである。これら4者の間の相互関係は不可分であり,この相互関係性を運用してこそ臨床においてはじめて良好な効果を得ることができる。歴代の医家はこのことを非常に重要視して,不断に研究を積み重ね成果をあげてきた。理,法,方,薬とその間の密接な相互関係は中医学の特色をなすものであり,また中医学の真髄でもある。
 針灸は中医学を構成する要素の1つである。針灸の治療方法には投薬の治療方法と異なった独自性があるが,その基礎理論,弁証方法,治療原則においては,その他の中医学各科となんら異なった点はない。しかし,幾千年にわたって幾多の針灸書が書かれてきたにもかかわらず,なぜか治法と処方に関する専門書は存在しないのである。これはたいへん不思議なことではないだろうか。そこで,これに関連する『内経』の条文を精読して探索したところ,理,法だけでなく処方と用穴についても詳細が尽されており,多くの条文では,用穴の意味までもが明らかになっていることが認識できた(詳しくは本書の第一章「針灸治法と針灸処方概論」を参照のこと)。針灸の治法と処方は『内経』の各篇に散見されるために未整理のままであり,また後世では湯薬を重んじて針灸を軽視したために,重要視されることなく埋もれてしまった。それは現代に発掘されるのを待っていた宝物の如きものである。『内経』の経文を今一度精読して,治法と処方に関して新たな成果を得ることができ,喜びも一しおであった。そこで,私は針灸の治法と処方に関する書籍の編纂を提案し,また,1960年代には治法と処方に関して多くの特別講座を開き,多くの同学の士の賞賛を得た。
 1980年代になると,私は外国から次々に招聘されるようになった。アジア,西欧,北欧,北アメリカ,南アメリカの多くの国で講義を行い,針灸の国際的な影響力を拡大し,中医学が世界に認められるために微力を尽くしてきた。それらの講義の中で各国の諸先生からさまざまなご要望を承り,教材の不足を痛感させられた。そのため『中国針灸治療学』の編纂に着手し,臨床と教育の要求に答えようとした。その執筆編纂を通じて,安徽医科大学の孔昭遐教授と屠佑生教授の協力を得ることができ,百万字に及ぶ大部の書を完成させることができた。これによって,いままでの欠落を少しでも補うことができたかと思うと,いささか喜びを禁じえない。さらに針灸処方の専門書を編纂することを提案し,孔昭遐教授と邱仙霊医師から共著の快諾を得ることができた。しかし,本書の編纂過程では,私と邱仙霊医師は幾度となくイタリアに招かれて講義を行い,また孔昭遐教授も外国での医療援助に従事してきたために,断続的にしかその作業を行うことができず,完成までに5年の歳月を要してしまった。
 本書は約20万字,総論と各論の両部分からなる。総論では針灸の立法処方,治療原則,処方配穴などについて概述しているほか,針灸治療の大法に重きを置き,解表,和解,清熱,去寒,理気,理血,治風,去湿,開竅,安神,止痛,通便,消積,固渋,去痰,保健,減肥,美容,禁煙法・麻薬[薬物]中毒矯正法の20法に分けて検討を加えている。それらを論じるにさいしては,経典や各家の学説を引証して問題提起とし,それに自己の見解を付け加えて敷衍化し,その持つ意味を出来るかぎり簡潔にまとめることを心がけて,次の各論の基礎とした。各論は六淫病,痰飲病,気血病,精髄神志病,臓腑病,胞宮衝任病,胎産病,皮膚病,眼病,耳病,咽喉病,鼻病,口腔病の治法と処方の計13章に分かれている。各章ではまずその生理と病理および弁証方法を概述したあと,証を綱にし治法と処方を目とした構成で述べるとともに,処方と用穴の持つ意味も詳しく説明してある。各論は全部で178の証と254の治法と処方,226の病名を収録し,出来うるかぎり理,法,方,穴の完璧性を期すとともに,臨床実践の需要に役立つことに腐心した。こうして実用に供することができる専門書『針灸治法と針灸処方』は完成した。本書が前人の不足を補うことができることを心から願うものであるが,独善的な所やいたらない点を読者諸氏のご指教に仰ぐことができるならば幸甚である。
 40年来,針灸は飛躍的な発展を遂げるとともに,国内外の医学者や患者の要望も日増しに高まっている。研究の深化と不断に創造を行うことが,われわれ針灸の道に携わる者に課せられた当面の急務であり,また責任でもあることは言うまでもない。わたしはすでに老齢というべき年齢に達したが,このまたとない機会に,残ったエネルギ-を老人は老人なりに捧げ尽くすつもりでいる。葉師の詩に「老夫,喜びて黄昏の頌を作す。満目に青山の夕照,明らかなり」とある。これを読むたびに心が奮い立つ思いがする。願わくば心身を労して中医学の振興のために余生を捧げん。これをもって本書の序とする。

邱 茂 良
齢八十のとき 南京にて
1992年8月

針灸弁証論治の進め方

[ 鍼灸 ]

原著まえがき

 針灸学は中国伝統医学の宝庫の中の重要な一分野であり,炎黄の子孫が数千年にわたる疾病との闘争によって獲得した知慧の結晶である。長期にわたって中国人民の繁栄隆盛と保健事業にとって卓越した貢献をなしてきた。科学が飛躍的に発展した今日において,針灸医学は国内外の有識者の益々重視するところとなり,針灸の学習,研究および応用にたいする熱意は益々盛んになってきている。近年来,多数の針灸関係者の勤勉な努力を通じて,旧態依然であった古医学は生気を放つようになり,多大な喜ぶべき成果を収めている。
 針灸の学術を発展させ,中医学の特色を維持するために,編者は長年にわたって教学と医療実践,特に南京中医薬大学国際針灸養成センターにおける講義と臨床指導を行ってきたが,その経験から,針灸の臨床と研究においては,中医弁証施治の診療体系を堅持し,処方配穴の論理性と実践性を強調し,治療手技を重視する必要性を確信するにいたった。この認識に鑑みて,ここに『針灸弁証論治の進め方』(原著名:『常見病症的針灸弁証施治』)一書を編纂した。本書の編集にあたっては,全国の各種針灸教材の長所を踏まえ,先哲の経験の結実を取り入れつつ,理解するに容易で,簡にして要を得,実情に適合したものにすることに力点をおき,あわせて外国人学習者にとって興味ある問題や針灸臨床における疑問点に対しても要点を押さえて論述した。学習者には本書が示すところの,理論を通じて理解し,治法を通じて運用し,処方を通じてその意味を考察し,取穴を通じて臨床の実際の手掛かりとされることを期待する。
 本書は内科,産婦人科,外科,小児科,感覚器科などにおける常見病,合計58病症の弁証論治を論述したものである。各病症についてそれぞれ,概念,病因病機とその弁証施治について系統的に解説をすすめ,あわせて症例を選んで挙げ,読者の臨床実例への対処の便宜を図った。本書を通じて針灸学の知識を確たるものに深め,分析と解決の能力を養い,診療水準を高めていただきたい。
 本書は中国語,英語の2カ国語で出版され,国内外の多数の医療従事者および中医学に関心を寄せる読者の学習の参考に供している。
 編集に要する時間的制約や知識不足からくる内容の不十分な点については読者の批判と訂正を乞うものである。

編 者
南京中医薬大学
1987年5月

中国鍼灸各家学説

[ 鍼灸 ]

はじめに

 国家組織によって編纂・審査された高等中医院校の教材は初版以来すでに二十余年が経過した。その間数次にわたる改定と再版がおこなわれ、中医薬理論の系統的な整理や教育体系の整備、中医学教育の質を高める上で大きな効果をあげている。だが、中医学のたえまない発展によって、現在用いられている教材は現今の教育や臨床、科学研究の要求に答えられなくなっている。
 教材の質を高めて高等中医薬教育の発展を促すために、一九八二年十月に衛生部は南京で全国高等中医院校中医薬教材の編集審査会議を招集した。そこで最初の全国高等中医薬学教材編集審査委員会が成立し、三十二の学科にわたる教材編纂グループが組織された。各科の教学大綱は、新たに改正された中医学、中医薬学、鍼灸それぞれの専門分野ごとの教学計画にもとづいて改訂された。各学科の編纂グループは新たな教学大綱にもとづいて懸命に新教材の編纂を推し進めた。各学科の編纂過程には、衛生部が一九八二年に衡陽で開催した「全国中医学院並びに高等中医教育工作会議」で取り決められた精神が貫かれている。それは、それまでの数版の教材の長所を汲み取り、各地の教育関係者の意見をまとめること。新教材ではできる限り中医理論の科学性、系統性、包括性を保つようにつとめること。理論は実際と関連するという原則を守ること。継承と発展の関係を正しく処理すること。教材内容のレベルについては、それぞれ教育課程の性質と役割をまずおさえ、教育現場の要求に合致し、各専門教科の発展にふさわしいレベルであること。各教科の基礎理論、基本知識、基本技能についてはもれなく記述すること。さらにできるだけ各教科間に重複と食い違いが生じないようにすること、などである。編集委員すべての努力と全国の中医院校の協力によって新教材はつぎつぎと編纂されている。
 本シリーズは、医古文、中国医学史、中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学、内経講義、傷寒論講義、金匱要略講義、温病学、中医各家学説、中医内科学、中医外科学、中医小児科学、中医婦人科学、中医眼科学、中医耳鼻咽喉科学、中医傷科学、鍼灸学、経絡学、?穴学、刺灸学、鍼灸治療学、鍼灸医籍選、各家鍼灸学説、推拿学、薬用植物学、中薬鑑定学、中薬炮製学、中薬薬剤学、中薬化学、中薬薬理学など三十二部門にわたっている。そのうち、初めて編纂されるものも少しはあるが、多くの教材はもとの教材、とくに第二版の教材をもとにして内容を充実させ改訂して編纂されている。したがって、この新シリーズの教材にはこれ以前の版に携わった編纂者の成果も含まれているのである。
 教材は専門家を養成し、専門的知識を伝える重要な道具である。したがって教材の質のよしあしは人材の養成に直接影響する。教材の質を高めるためには、つねに内容に検討を加え、修正を施すことが不可欠である。本シリーズの教材にも、不十分なところがあるかもしれない。各地の教育関係者と多くの読者には、実際に使用されて貴重な意見を寄せられることを切に希望する。それらの声は、より高い科学性と、優れた教育効果を備えた教材づくりへの基礎となるであろう。このことは、中国社会主義四つの現代化と中医事業の発展に応える道でもある。

全国高等中医薬教材編纂審査委員会
一九八三年十二月


編纂にあたって

  『各家鍼灸学説』は高等中医院校鍼灸専門課程に新設された教科である。教学大綱が設けられたのも、また教材が作成されたのも初めてであるし、大綱が決定されて後にも教材の校訂が幾度かにわたっておこなわれたので、大綱と教材の内容とは完全に一致していないかもしれない。各院校が教育を進める中で必要に応じて調整されたい。
 本教材はもとの大綱の「附論」に収められていた陳延之、王惟一、許叔微、席弘、陳会、劉瑾、王国瑞、徐鳳、汪機、楊継洲、張介賓、呉亦鼎を「各論」に入れたほか、あらたに巣元方、荘綽、李、鄭宏綱、夏春農を付け加えた。教材には八大流派、四十家の学説とその医学史上の功績、および五部の古代医籍がもたらした鍼灸学上の成果が収載されている。
 本書の総論と附論は江西中医学院の魏稼が担当した。各論部分については、何若愚、竇黙、王国瑞らを上海中医学院の呉紹徳が、張従正らを河南中医学院の邵経明が、徐鳳、汪機、高武、呉亦鼎らを江西中医学院の彭榮が、王執中らを南京中医学院の李鋤が、巣元方、竇材、席弘、陳会、劉瑾、李、楊継洲、鄭宏網、夏春農らを魏稼がそれぞれ執筆した。このほか、湖北中医学院の孫国傑、北京中医学院の耿俊英、浙江嘉興市第一人民医院の盛燮が部分的に草稿を執筆した。各論の初稿が出来上がってから、彭榮がまず修正を加え、最後に魏稼と呉紹徳が全書にわたって修訂と文章の統一をおこない、邵経明および江西中医学院の王建新と謝興生がすべての引用文の校訂および訂正をおこなった。また、本書の完成に当っては中国中医研究院鍼灸研究所の鄭其偉のご支援を得た。
 本教材を審査し決定する会議には、上記の各氏の外に、全国高等医薬院校中医教材編集・校閲委員会副主任委員で南京中医学院教授の邱茂良、上海中医学院教授の裘沛然、上海中医学院副教授の李鼎、浙江中医学院副教授の高鎮伍、陜西中医薬研究院の陳克勤、北京中医学院の徐皖生、原の諸氏に加わっていただいた。
 本教材は、中央衛生部が一九八二年十月に南京で開催した全国高等中医院校教材編纂委員会で決定した精神に則って編集・執筆されたものである。三年余の時間をかけ、三度にわたる原稿審査会議をもち、そのあいだ何度も手直しを加えたが、いたらない点があることと思う。それぞれの学校で使用され、どうか御意見をお寄せいただきたい。今後の完全な教材つくりのための参考にさせていただきたい。

編 者
一九八六年十二月


序言

 各家鍼灸学説は鍼灸医学の新しい研究領域で、歴代の医家、鍼灸家の鍼灸学説やさまざまな流派の学問の研究をテーマとする。
 各家には、中医薬の分野において功績を残した歴代の中医専門家だけではなく、実績を残した鍼灸専門家も当然含まれる。
 学説とは学術的に体系づけられた主張、見解、理論のことである。流派とは、学術上の観点や思想、見解、あるいは主張や風格、傾向および臨床に対する方法が基本的に一致する学者が形成するグループのことである。この学説と流派との間には密接な関係があるので、鍼灸流派も研究テーマの一つとなるのである。
 各家鍼灸学説を学ぶ目的は、つぎの二点にまとめられる。
 一、歴代の医家はどのような鍼灸学術思想と理論を持っていたか、どんな功績を残したのか、その思想的な源はどこにあり、どんな影響を後世に残したのか、またどの流派に属していたのかなどを熟知することによって、学ぶべき理論的知識と基本的技能をよりいっそう豊かにすること。
 二、歴代の医家経験から教訓をくみ取り、それを教育、臨床、研究の参考として役立てること。過去の経験から学んで未来への展望を切り拓くために、先人の成果を今に役立てるという原則に徹することは、鍼灸医学の発展をいっそう加速させる効果があるだろう。
 教科過程で学生に教育しなければならないことは以下の諸点である。
 一、新学説が提唱され新流派が成立したことの持つ意義の重要性を理解すること。
 二、各家の生涯とその著作、学説、学術思想、学術成果などに関する知識を十分に身につけること。
 三、各家の鍼灸学説と流派の誕生、形成、発展や、それらが歴史上に占める地位、はたらき、相互の関係、影響について、全体的に把握し正しく評価すること。
 四、鍼灸医学の発展過程を系統的に理解すること。
 五、仕事に従事する中で多くの優れたものを広範囲に収集し、先人の経験から広く教訓を汲み取る能力を身につけること。
 六、古代の鍼灸文献を探して研究する初歩的な方法も習得すること。

全国高等中医薬教材編纂審査委員会
一九八三年十二月

針灸二穴の効能[増訂版]

[ 鍼灸 ]

著者略歴

呂 景山(ろ・けいざん)(1934~)
 河南省洛陽偃師県人。1962年度北京中医学院第1期卒業生。北京四大名医・施今墨先生および祝諶予教授に師事した。40年あまり医業に携わり,高い学術水準,豊富な臨床経験を有している。その優れた業績により,1992年に政府より特別報奨金を授与されている。
 山西省中医薬研究院主任医師,山西中医学院教授,山西省針灸研究所所長を歴任。学術面では「施氏対薬」理論を受け継ぎ広め,「針灸穴対」を創始している。著書は『施今墨対薬』『施今墨対薬臨床経験集』(1982年度全国優秀科技図書1等)『針灸対穴臨床経験集』『単穴治病選萃』など10部(約100万字),論文は「従施氏対薬看相反相成之妙用〔施氏対薬より見た相反相成の妙用〕」「同歩行針,対穴配伍」など50余篇(約30万字)。内科,婦人科の治療を得意とし,強直性脊椎炎やアレルギー疾患など,治療や診断の困難な疾患に対しても,優れた手腕を発揮している。


訳者略歴

渡邊 賢一(わたなべ・けんいち)
1965年,大阪府生まれ。
1988年,明治鍼灸大学卒業。
1988年~1990年,北京語言学院に留学。
1990年~1992年,北京中医学院に留学。
帰国後,鍼灸・翻訳業務に従事する。
訳書:『風火痰論』(東洋学術出版社)ほか。

針灸二穴の効能[増訂版]

[ 鍼灸 ]

日本語版序

 家父・呂景山は北京中医学院の第1期卒業生である。早くから北京四大名医の1人の施今墨氏について医学を学び,直接指導を受けた。また兄弟子にあたる名医・祝諶予氏の指導も受け,その理解はさらに深まった。施氏は臨床で処方をするとき,常に2つの生薬をセットで並べて書き,2薬の組み合わせとその応用を暗に示した。2薬を組み合わせることにより,互いに効果を高め合ったり,互いに副作用を抑えて有効な作用だけを残したり,相互作用により特殊な効果を現したりなど,有益な反応がみられる。このように2つの生薬を組み合わせ,何らかの効果を引き出すことを「対薬」という。呂氏は師の志を受け継ぎ,四十数年にわたる臨床経験のなかで,一意専心研究に務め,施氏の用薬の精髄を検証し,施氏の臨床用薬の組み合わせの経験を総括した。さらに,古今の文献を参照し,推敲,修正を繰り返し,『施今墨対薬』を書き上げたのである。
  「穴対」の説は,古にその理論が確立されて以来,各家の医籍では二言三言語られてきたに過ぎない。呂氏は「施氏対薬」の啓発を受けて,この理論を針灸の臨床に応用することを考えた。前人の経験を基礎に,自らの体験を重ね合わせ,本書を著述した。「穴対」は「対穴」ともいい,2つの穴位を配伍,使用する針灸学の一分野である。2穴の組み合わせには,一陰一陽・一臓一腑・一表一裏・一気一血・開闔相済・動静相随・昇降相因・正反相輔などの意味があり,治療効果を高めることを目的に応用される。用穴の基本原則は「精疎」である。つまり,証候にもとづき,精緻な選穴を行い,巧妙に配合することによって,選択的により高い効果を発揮させるのである。 ちっぽけな銀針は,四海を伝わり,国際学術交流の至宝となり,世界中の人々から歓迎されている。このほど,日本の友・東洋学術出版社社長山本勝曠氏の丁重なる要請を受け,翻訳書が貴国で出版されることとなった。本書が,日本の鍼灸師や鍼灸愛好者にとって,「良師たらざるも,益友たらん」ことを願うものである。

呂 玉 娥・呂 運 東・呂 運 権
1997年初秋


自序

 針灸学は中国医薬学の偉大なる宝庫を構成する重要な要素であり,中国人民が長期にわたり疾病と格闘した経験の総括である。祖国の医学遺産を継承・発展させ,針灸の臨床効果を高めるため,臨床常用シュ穴の配伍(組み合わせ)の経験を整理編集したものが本書『針灸対穴臨床経験集』である。
 本書には223対の対穴が収録されている。シュ穴の機能(穴性)および主治から23の大項目に分類し,それぞれの対穴については以下のような形式で説明している。
一.対穴:対穴の組み合わせ。本書で収録している対穴は,前賢がすでに使用したもの,現代において創出されたもの,筆者が臨床経験から体得したものを含む。
二.単穴作用:腧穴個々の意味,作用,主治病,主治証について(別項において説明があるものについてはこれを省略する)。
三.相互作用:中国医学の弁証理論の原則に則った,2つの腧穴を配伍することにより生じる機能,作用について。相輔相成,相反相成,開闔相済,動静相随,昇降相承,正反相輔などの作用がある。
四.主治:対穴の主治病および主治証。つまり,一組の対穴の適応範囲。
五.治療方法:腧穴の針刺方法,一部の腧穴では灸法。治療方法が明記されていないものについては,一般的な治療を行う。
六.経験:前人の経験を例示し,また筆者の経験も紹介する。
 本書は,編集過程において,山西省衛生庁長官および職員から多大なる支持と協力を得た。また,北京針灸学院設立事務所の王居易氏からは資料の提供,中国中医研究院の王雪苔副院長および中国北京国際針灸培訓センターの程農主任からは一部の原稿について教えを受け,また審査閲覧をお願いした。また,わが師である中国医学科学院北京協和医院中医科の祝諶予教授および北京中医学院の楊甲三教授に文章の斧正を請い,序文をお願いした。ここに謹んで感謝の意を表したい。

呂 景 山
1985年元旦




 針灸は中国医薬学の偉大なる宝庫を形成する重要な要素である。遠く6~7世紀,朝鮮,日本に伝わり,16世紀末には東欧にまで伝わり,現在では,ほとんど世界中に行きわたっている。中国医学には,「適用範囲が広い」「効果が速い」「使いやすい」「副作用がない」などの特徴があるため,世界各国で受け入れられたのである。今も多くの学者が,人類の健康により寄与するため,日々研究に取り組んでいる。
 中医の神髄は弁証論治にある。それは針灸も例外ではない。中医各科(内科・婦人科・小児科など)には,理・法・方・薬があり,針灸には,理・法・方・術がある。この原則から離れると,頭が痛ければ頭を治療し,脚が痛ければ脚を治療する「対症療法」に陥ってしまう。弁証論治なくして,期待できる治療効果を収め,医療の水準を絶えず高め,その治療法則を探求することは非常に困難なことである。
 呂景山氏は北京中医学院第一期卒業生である。在学中は,私の助手を務め,のちに施今墨先生について臨床にあたった。彼は勤勉な努力家で研鑽を怠ることはなかった。『施今墨対薬』の奥義に関しては特に理解が深く,施氏の学術思想の啓発のもとで,「一を聞いて十を知る」融通無碍な能力により,これを針灸臨床に応用し成果を収めた。さらに研究を重ね,針灸シュ穴配合の経験を一冊にまとめ上げたのが,まさしく本書『針灸対穴臨床経験集』なのである。
 「対穴」に関する論説は古代より散見されるものの,これまで明確に理論化されたことはなく,ただ,各家の医籍中に二言三言述べられているのみであった。呂景山同志の著作は,大胆な挑戦であり,中医界をもり立て,中国針灸医術の世界的な地位を保つための一臂の力となるであろう。本書が針灸界へ貢献することを祈って序としたい。

祝 諶 予
1985年2月1日北京




 針灸治療は一定の腧穴を通して行われる治療法である。穴を用いるのも中薬を用いるのも道理は同じである。複雑に変化する病状に合わせて,中医理論,特に経絡学説を駆使して弁証立法し,選穴処方するのである。薬物治療では単味薬から複数の薬を同時に用いるようになって方剤学という学問が生じた。もしこれを薬物治療の1つの進歩と捉えるならば,単穴治療が二穴に発展し,さらに系統的な配合原則が形成されるにいたったことも,まさしく針灸治療学の大躍進と捉えることができよう。穴位の配合を通じてこそ,多くの複雑な病証に対応でき,穴位の作用を協調,発揮させてこそ,治療効果を高められるのである。
 古人は穴位の組み合わせに関して工夫と研究を重ねてきた。厳格な規則性と柔軟性のある応用をバランスよく取り入れている。「対穴」とは,針灸臨床で習慣的に用いられてきた一種の配合形式である。『内経』にも少なからず記載がみられる。例えば,同肢本経配穴の魚際と太淵で肺心痛を治療し,同肢表裏経配穴の湧泉と崑崙で陰を治療し,腹背兪募配穴の日月と胆兪で胆虚を治療している。用穴は「精疎」が重要であるといわれる。『霊枢』の「先にその道を得,稀にしてこれを疎にし……」からきていると思われる。「対穴」の応用は,まさしく「先にその道を得」,シュ穴の主治効能に精通することが基礎になり,客観的な症状にもとづいて選穴を絞る必要がある。この方法によらなければ「稀にしてこれを疎に」した有効な治療が不可能となるのである。
 景山医師は優秀な成績で北京中医学院を卒業している。その後は臨床に携わり,研鑽に務め,現在にいたるも決して怠ることはない。臨床では主に針と薬を併用し,高い治療効果を上げている。「対穴」は岐黄(岐伯と黄帝)の時代に種が蒔かれ,現代において実を結ぶこととなった。本書の出版によりわれわれは針灸臨床配穴の専門書を手に入れた。本書は針灸処方の研究にも大いに参考価値がある。ここに謹んで衷心からの祝辞を述べたいと思う。

楊 甲 三
1985年3月16日

[症例から学ぶ]中医針灸治療

[ 鍼灸 ]

出版にあたって

 中医学は中華民族の至宝であり,広くかつ深い,悠久の歴史がある。中医教育は,数千年の時代の移り変わりを経て,新中国が成立してからは,新しい中医教育体制が確立され,絶えず完全であるように求められてきているので,いよいよ目をみはるような光を放っている。しかしながら,今日の中医教育は,講義内容や方法など多くの面で,時代の要求に合わなくなっている。なかでも,理論教育と臨床の現場とがかみ合わなくなっている点は,特に問題となっている。講義の質を高め,実践教育の環を強化し,理論と臨床現場との連係を促進し,中医教育における症例不足の現状を改善する必要がある。そこで湖南省中医薬学校を筆頭に,山東・安徽・江西・重慶・黒龍江・陝西・湖北・四川・河南など10カ所の全国重点中等中医薬学校および国家中医薬管理局中等中医薬学校からなる連合組織が,国家中医薬管理局科学教育部の関係指導部門と湖南中医学院および湖南科学技術出版社の協力を得て,この中医教育のための症例集を編纂することになったのである。
 症例研究というのは,間接的な臨床実践として,学習者が他人の診療経験をくみ取るのに役立つだけでなく,さらに重要なことは,学習者の臨床における弁証思考能力を培えるということである。本シリーズの症例は,おもに編者と関連する学校の附属医院の長年の臨床症例資料および出版物から選んできたものである。教育上の必要性から,症例の編纂は,中医の教育的特色を考慮し,書式を統一し,特に「考察」を加え,病因病機・疾病の診断および治療のみならず,さらに入念な分析を行い,学習者が書物の知識からの理解を深めることができるようにし,臨床の分析と問題解決の能力を高めることができるようにしてある。本書の症例内容は要点が簡潔で,書式も要領を得ており,実践教育を強化することと,中医理論と臨床実践との結びつきを促進することを目的としている。しかしながら,臨床の正式なカルテとしての書式に依拠してはいない。本書では,名老中医の症例を一部抜粋してあるが,これは,学習者が過去の簡潔な中医症例のなかから,名老中医の臨床経験の緻密な要点を直接くみ取ってもらいたいからである。ここに記載された症例の原作者に対して,心から感謝の意を表明したい。教育上の便宜のために,本書の病症名は原則的に教科書と一致させてあり,また同時に,現在普及が推進されている「中医臨床診療述語」ともできるかぎり統一するように考慮している。
 本シリーズは,中医類書部門の一連の学習指導資料であり,『中医基礎学教学症例精選』『中医内科学教学症例精選』『中医外科学教学症例精選』『中医傷科学教学症例精選』『中医婦人科学教学症例精選』『中医小児科学教学症例精選』『中医五官科学教学症例精選』『中医針灸学教学症例精選』『中医推拿学教学症例精選』の合計9冊からなっている。各書はそれぞれ1~2カ所の学校が中心になって編纂されており,編纂者はいずれも各校の教育現場における第一線の熟練教師があたっており,教育および臨床において豊富な経験をもっている。期間中に何度も稿を改め,できるだけ体裁を整え,内容を正確にし,文字を簡明にし,実際の臨床に合致しているように努めた。
 中医教学症例シリーズを編纂するということは,創造的な仕事であり,中医教育の質と量の充実をはかるうえで一定の役割を果たすであろう。しかしながら,教材をうまく組み合わせて教育のための補助資料として作り上げることは,長期にわたる非常に骨の折れる仕事である。われわれは全国の各中医学院や大学の幅広い教師や学生および本シリーズのすべての読者に対して,貴重な意見を寄せてくれるように心から期待する。そうすればわれわれの仕事の内容はいっそう改善され,中医教育事業にとってもさらに早くまた建設的に貢献することができるであろう。

「中医教学症例叢書」編集委員会
2000年3月


はじめに

  『中医針灸学教学症例精選』は,「中医教学症例叢書」の1つであり,中医の専門分野である針灸学が対応する各種疾病について,針灸学の臨床教育の特徴を考慮して,相応の症例を編纂したものである。針灸学の理論教育と臨床の現場との協調を促すことを目的とし,針灸学の教育上の重要な参考書籍として実用に供しようとするものである。
 症例は全部で127例。針灸が対応する臨床診療範囲が広く,また疾病の種類が多いという特徴から,内科疾病・婦人科疾病・小児科疾病・外科疾病・五官科〔鼻・眼・口唇・舌・耳の5つの器官〕疾病・急症の6種に分類した。その内容は,感冒・中暑・肺咳・哮病・アク逆・胃カン痛・嘔吐・腹痛・泄瀉・痢疾・便秘・脱肛・脇痛・胸痺・心動悸・不眠・癲病・癇病・リュウ閉〔排尿障害〕・遺精・頭痛・眩暈・中風・面風痛・痺病・痿病・腰痛・痛経〔月経痛〕・閉経〔無月経〕・崩漏・帯下・胎位不正・産後腹痛・欠乳・陰挺〔子宮脱〕・不妊・百日咳・疳病・小児驚風・嬰幼児腹瀉・サ腮〔流行性耳下腺炎〕・乳癰・乳癖・エイ気・痔病・腸癰・捻挫・風疹・円形脱毛症・乾癬・天行赤眼〔急性結膜炎〕・針眼〔麦粒腫〕・近視・暴盲〔突然視力が低下,失明する病症〕・聾唖・膿耳〔化膿性中耳炎〕・鼻淵〔副鼻腔炎〕・乳蛾〔扁桃炎〕・喉イン〔喉頭部疾患による失声〕・高熱・痙病・厥病〔突然失神する病症〕・脱病〔陰陽気血の消耗する危急の病症〕など63種類に及んでいる。
 本書の症例は,「臨床資料」と「考察」の2つの部分からなる。「臨床資料」は,患者の経歴・主訴・経過・検査・診断・治法・取穴・操作の順になっており,臨床の操作部分に重点が置かれている。「考察」は,病因・病機・診断・治法・処方解釈の面から,臨床資料に対して,1つ1つ分析を行っており,針灸処方用穴の理論的分析に重点を置いている。これによって,学習者が針灸学の理論に対して理解を深めることができるだけでなく,臨床分析と問題解決の能力を高めて,針灸学の理論的知識と実際の臨床とを結びつけて考えることができるようになる。また,本書ではできるだけ現在の中医針灸科の臨床で使われている用語と検査単位を用いており,学習者が理論的知識と臨床の実際をすみやかに結びつけられるように配慮している。
 本書は,分担して編纂し,全体で持ち寄ってつき合わせるという形で完成した。内科疾病部分は邵湘寧,徐偉輝,婦人科疾病部分は張志忠,小児科疾病部分および急症部分は陳善鑑,外科疾病部分は金暁東,五官科疾病部分は陳美仁がそれぞれ編纂した。編纂過程で,「中医教学病案叢書」編集委員会・湖南省中医薬学校・山東省中医薬学校・湖南科学技術出版社の関係専門家と指導部門の協力と支持を得ることができた。ここに謹んで心から感謝の意を表す。
 中医針灸学教学症例の編集は,今日なお検討段階にあり,編者の経験も不足しており,レベルにも限界がある。本書のなかにも欠点があるかもしれないが,同業の諸氏および読者の方々の貴重なご意見を提出していただいて,再版の折にはさらに完全なものにしたい所存である。

編者
2000年3月

[図でわかる] 中医針灸治療のプロセス

[ 鍼灸 ]


 
 本書との出会いはもう10年程前になる。はじめて手にしたときは,「こんな便利なテキストがあれば,もっと日本で中医鍼灸が普及するだろう!」と感動した。一般に中医学書は系統的にまとめられており,最初からきちんと学習するものにとっては非常にわかりやすい。しかし,いざ自分で勉強しようと思っても,どこからどう学んでよいか戸惑う場合が少なくない。そんなとき,本書では症状が最初に記述され,その中医学的病理,弁病または弁証,病証,配穴,手技等が簡明に表記されていた。本書に感動した理由は,これならば今まで中医学を勉強したことはないけれども,日常臨床のなかで中医学的な治療方法を参考・応用にする者にとっては,うってつけの書になると思われたからである。
 当初,教室内で担当を決めてゼミ生も含めて輪読を始め,それぞれの症候の日本語訳を行った。その結果をふまえて,できればテキストとして発刊してはどうかと考えて,東洋学術出版社の山本勝曠社長に相談したところ実施しようということになった。   ところで,本書に収録された症候は中国で一般的な愁訴を中心にまとめられたものであり,必ずしも日本の現状とはそぐわない面も多々ある。そこで,なるべく日本の現状に即した形で取捨選択させていただいた。したがって,原書と比較するときに若干の欠落があることをお断りしたい。
 訳については,できるだけ理解しやすいように配慮したつもりであるが,中医学の用語についてはすべてを訳すことはしていない。しかし,わかりにくいであろう用語については,注釈を巻末に付して便宜を図った。
 さらに,治療法や配穴等,実際の臨床経験をもとにして,独断と偏見になるかも知れないが,訳者の解説を加えたので参考にしていただければ幸いである。
 今や世界的に注目を集める鍼灸であるが,疼痛や運動器疾患が最適応というのではなく,あらゆる愁訴や疾患,また,治未病といった観点から今後ますますその真価が問われることになると思われる。そのときに求められるのは,圧痛点に対して鍼や灸治療を施す方法ではなく,心と身体を含む全身(人間全体)を東洋医学的な観点から捉え調整するという東洋医学本来の鍼灸治療のはずである。
 本書は,そういった素晴らしい世界に導くための導入書として役立てていただければ望外の幸せである。手技の問題や弁証の荒さ,弁病と弁証の混在など,改善すべき問題が多いことは事実である。しかし,中医学,なかでも最も特徴的な臓腑弁証の初歩の仕組みを学ぶには絶好の書と信じている。
 諸賢のご批判を乞いたい。

明治鍼灸大学東洋医学基礎教室
教授 篠原 昭二
平成18年4月

 

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