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▼書籍のご案内-序文

『金匱要略も読もう』 まえがき

[ 古典 ]


まえがき


 この本は先に二〇〇八年に出した『傷寒論を読もう』の続篇あるいは姉妹篇のつもりで書いたものです。前書を出した直後から、続きの『金匱要略』の本を書かなくてはと思いながら、なかなか取りかかれずにいましたが、東京四ツ谷の主婦会館で毎月開いている漢方三考塾で毎回『金匱要略』の話をする機会に恵まれたので、そのための講義原稿としてこの本を書きました。
 一般的には、『金匱要略』と『傷寒論』は本来『傷寒雑病論』という一冊の書物であり、『傷寒論』は外感病を、『金匱要略』では内傷雑病を論じたとされています。
 『傷寒論』では、病は進展変化するという観点から捉えて経時的に観察し、五臓六腑・十二経脈の病気の所在を論じるときも、病が現在移動しつつある場所という視点から観ています。一方、『金匱要略』では体のどこからどのような病気が発生するかが主題で、病を俯瞰的に観察しています。『傷寒論』のほうは張仲景の原典の主旨が比較的よく伝承されているようで、太陽病から厥陰病に至る一本の流れに沿って読んで行けば何とか理解できましたが、『金匱要略』のほうは一条一条が独立して存在している感じでした。原典の伝承も不完全なようで、条文の構成も整っておらず、脱落や省略されたと思われる部分も多く、一読しても意味不明な箇所も少なくありません。条文をただ現代の言葉に置き換えてみても、意味不明な点はそのままで、単なる現代語訳は試みてもあまり意味がありません。
 結局、『金匱要略』に盛られた理論の内容は、『内経』(『素問』『霊枢』)および本草の知識を基礎に『傷寒論』で学習した成果を参考にしながら、自分で一条一条理解してゆく他はないようです。また大部分の条文はそれぞれ証候に対応する処方が述べられています。それらのなかには一見複雑な証候にみえても本治を行わせる条があるかと思えば、一方ではまず標治を先行させた後、本治に取り掛からせる場合もあります。また同病異治・異病同治の実例も随所に述べられており、読み進むうちに、単純ではない弁証論治の実際を教えられます。同書こそまさに『金匱要略』という書名がぴったりな臨床医学の貴重な経典であると、今さらながら痛感させられました。
 『傷寒論』も『金匱要略』も書かれてから二千年余も経っているので、多くの人びとがいろいろなことを今までに述べてきましたが、今回はそのことにはほとんど触れず、各条ごとに、自分が理解できて納得したことだけを書き連ねてみました。
 今回、本書が出版されるに当たっては、東洋学術出版社の井ノ上匠社長のお計らいと、編集を担当してくださった森由紀さん、原稿を校正してくださった漢方三考塾の須賀久美子さんに多大なご尽力をいただきましたことを心から感謝いたします。この本が少しでも皆様のお役に立ち、いつまでも可愛がっていただけるように願っています。


二〇一六年 立春の日 東京虎ノ門の寓居にて
髙山 宏世



『臨床家のための中医腫瘍学』 凡例

[ 中医学 ]


凡 例


1.本書は著者の臨床経験・研究内容・講義資料を整理し,専門誌や関連書籍などを参考にしながら作成した中医腫瘍学の入門書である。

2.総論では,中医腫瘍学の歴史・病因病機・中医学的診断と治療・西洋医学的治療の副作用対策・常用漢方薬・経方の運用・「癌毒」対策・食養生・未病と予防などについて検討した。

3.各論は,各種のがんに対する概念・関連する西洋医学の知識・中医弁証論治・養生・予防などで構成した。治療の項では常用中成薬・単味生薬・経験方・鍼灸療法・薬膳などについて述べた。

4.方剤の出典と組成は,該当頁の関連する内容の後に記述した。日本では原処方を加減しないで使う場合が多いため,方剤の加減はしていない。

5.中成薬については,中国で使用している名称とその使用量を記載した。主に,林洪生主編『腫瘤中成薬臨床応用手冊』(人民衛生出版社)を参考にした。

6.経験方については出典を明記し,中国で使用している薬用量を記載した。

7.各論部分の著名な老中医の医案については,老中医本人あるいはその直弟子が専門誌に発表した論文や著書の中から厳選し,説明を加えた。

8.病名別の証型分類と対応する方剤を「『同病異治』の主な方剤」として巻末にまとめた。

9.がんによく用いる方剤を「『異病同治』の主な方剤」として巻末にまとめた。


『臨床家のための中医腫瘍学』 はじめに

[ 中医学 ]


はじめに


 私が中国の大学を卒業した1982年には,がんの入院患者は現在ほど多くありませんでしたが,病院で内科の臨床に従事しているうちに,患者数が徐々に増えてきました。内科病棟には抗がん剤治療を受ける患者や末期がんの入院患者が多くなり,生薬の煎じ薬や中成薬をよく使用するようになりました。また,大学を卒業した翌年,母が乳がんになったことをきっかけとして,がん治療に取り組み始めました。
 1996年に来日してからの9年間は,日本医科大学で肺がんの研究に携わり,動物実験や分子生物学の研究を通じて,がんに対する認識を深めてきました。
 国立がんセンターがん対策情報センターの推計によると,日本人が一生涯のうちに何らかのがんになる割合は,男性で49%,女性で37%とされています。つまり「日本人男性の2人に1人,女性の3人に1人ががんになる」と言うことができます。科学の進歩により,がんの研究も進み,早期発見と治療に関してはさまざまな成果が上げられています。しかし,がんの発症原因については未解明の部分が多く,病因に沿った治療はできません。また,現在の標準的治療法である手術・放射線・抗がん剤による治療では,多くの患者が完治できないのが現状です。手術できる範囲は限られており,放射線や抗がん剤には副作用の問題もあります。ですから,がんに対しては,総合的な治療が必要になってきます。
 中国では,伝統医学における先人たちの経験と智恵をがんに対する補完医療の1つとして,広く用いています。ただ,先人のがんに関する経験は各古典医籍に分散して記録されており,がんのみを扱った古典医籍はありませんでした。しかし,この30年,中国各地の病院に中医腫瘍科が次々と設立され,基礎研究や臨床研究が盛んになり,中医腫瘍学が体系化される時代となってきています。その成果は,中国国内だけでなく海外の専門誌でも発表され,教科書や専門書も多く出版されています。
 私は,日本の各地で中医腫瘍学や中医内科学の講義をしてきましたが,その講義原稿が徐々に増えたので,今回それを入門者向けに本書としてまとめました。私自身の臨床・研究・教育の経験を整理し,さらに古典や関連の最新文献も参考にしながら,初学者が中医腫瘍学の全体を理解しやすいように工夫したつもりです。
 現在,中国と日本では,医療制度の違いにより,がんに使用できる漢方薬の種類も異なりますが,本書では中国における中医腫瘍学の歴史と現状を紹介しました。
 日本語の語学力不足のために,理解しにくい点も多々あるかと思いますが,いくらかでも読者の参考に供することができれば幸甚です。
 本書の出版にあたり,日本語の記述についてご指導いただき,編集にお骨折りいただいた東洋学術出版社の井ノ上匠社長と編集担当の麻生修子氏にこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。


2016年 春   鄒 大同

『実用 体質薬膳学』 本書の主な内容

[ 食養・養生 ]

 
[本書の主な内容]


[第1章]では,まず体質の概念および体質の種類について紹介した後,さらに中医体質学とはどのようなものであるかについて述べる。中医体質学は,中医学と同様に,整体観念と弁証論治を特徴とし,陰陽五行・気血津液精・臓腑学説の考えがベースになっている。


[第2章]では,体質に影響する素因や体質形成の原因について述べ,さらに平和体質(良好な体質)・気虚体質・血虚体質・陽虚体質・陰虚体質・陽盛体質・痰湿体質・気鬱体質・血瘀体質の9種類の体質における弁証方法を紹介する。


[第3章]では,体質を判断する方法について紹介する。体質の判断は,中医診断学の四診(望診・聞診・問診・切診)を用いて行い,その手順は①八綱弁証を用いて虚・実・寒・熱の体質に分類し,②気血津液弁証を用いて気虚・陽虚・血虚・陰虚・陽盛・痰湿・気鬱・血瘀の体質に分け,③臓腑弁証を用いて体質と臓腑との関係を明らかにしていく。


[第4章]では,各体質に勧められる食材・中薬について紹介する。中医薬膳学では食材や中薬のもつ性質・味・効能を利用するが,中医体質学では季節によって体内の陰陽の気が移り変わると考えているため,季節の変化に合わせた食材・中薬を選択して使うことが基本となる。


[第5章]では,各体質別に体質を改善する薬膳について紹介する。体質に合わせた薬膳処方を作る際には,中医方剤学の考え方が参考になるため,ここでは各体質に合う方剤を解説した後,薬膳として用いる食材・中薬,さらに薬膳処方のレシピを示す。


[第6章]では,古典に残されている健康維持と病気の予防に役立つ薬膳処方を紹介する。そこでは,「食薬同源」「医食同源」の考え方が息づいている。


[第7章]では,偏った体質を改善する際に選択できる食材と中薬について,効能別に分類して紹介する。食材や中薬には,それぞれ五気・六味・帰経があり,その違いによってさまざまな効能が発揮される。そのため,食材・中薬がもつ属性や要素をきちんと理解し,その人の体質を把握して,その改善のために上手に使うことが重要である。


(編集部)

『実用 体質薬膳学』 まえがき

[ 食養・養生 ]


まえがき


 体質という言葉は,昔から日常的に使われてきました。たとえば同じ年頃の子供でも,瘦せている子と太っている子,病弱な子と元気な子がいますが,「この子は体質がよい」「あの子は体質が弱い」などと言って,その差異の原因が体質にあることを暗に示してきました。また同じように大人でも,よくカゼを引く人と引かない人がいます。2005 年,中国をはじめとしたアジアを中心に新型肺炎(SARS)が猛威を振るいましたが,初期段階では,この病気に関する認識がなく予防対策をしていなかったため,多くの医療関係者がSARS に罹患しました。しかし,同じ患者と接触した医療関係者のなかには,感染した人と感染しなかった人がいました。その理由も,その人のもつ体質の差異と考えられます。
 体質とは一体どのようなものでしょうか?
 人の体質には先天のものと後天のものがあります。子供をほしい・産みたいという親なら,まず自分たちの体質を健康的なものにして,子供に素晴らしい遺伝子を伝えることが大事です。これがその子の健康的な体質の土台を作ることにつながり,先天の体質となります。以後は後天の体質です。出産後は子供をしっかりと見守り,大人になるまでの各時期において,生理的・心理的な成長の特徴に合わせて養育し,健康的な体質を育成していきます。成人してからは本人の問題になりますが,仕事・結婚・子育て・昇進・定年といったライフサイクルのなかでは,居住環境・職場の雰囲気・生活スタイル・食習慣・嗜好品などの影響を受けて,健康的な体質を維持しようと思っても,偏った体質を生じやすく,病気に罹りやすくなります。そこで,健康的に生きようという意識を持つとともに,年齢・季節に合わせた体の養生が重要になり,各種の偏った体質に合わせた改善方法を取ることが必要となります。
 近年,予防医学が重視されるなかで,中医体質学の知識を求めて,病気を予防するために偏った体質を改善しようとする人たちが増えてきました。筆者も,10 年前から体質に関する資料を集め始めました。専門書を購入し,論文を探し,古典を調べ,さまざまな体質基準を比較して,本書を執筆しました。途中,色々な事情が重なり原稿の完成が遅れてしまいましたが,逆にゆっくりと考える時間をもつことができ,本書の内容を充実させることができました。本書を読んで自らの体質を理解し,健康的な体質を目指して,中医薬膳学の知識を用いて調節する方が増えれば,本書の目的を達成したものと考えます。
 最後に,本書の趣旨を理解し,出版に尽力していただいた東洋学術出版社の井ノ上匠社長と編集部の皆さまに心から感謝を申し上げます。


本草薬膳学院 辰巳 洋
2015 年12 月25 日 東京


『中医臨床のための医学衷中参西録』 第2巻[雑病篇]

[ 中医学 ]

はじめに


 本巻は清代の名医張錫純の著作《医学衷中参西録》の中核をなし,われわれ一般臨床医にとって身近な臨床雑病をとりあげる。雑病には内科・小児科・婦人科・泌尿器科・外科・耳鼻科・眼科・精神科などを含み,本書中には日常診療で参考になる記載が臨場感をもって語られている。
 とりあげた症例では,しばしば患者自身の言葉がありのままに記されており,日常臨床における患者自身の訴えを聞くことの大切さに改めて気付かされる。現代医学では病名をつけることに意が注がれて,患者が何に苦しんでいるのかを知ろうとする努力にやや欠けるきらいがある。また客観的なデータを重視するあまり患者の訴える言葉に充分な関心が払われていないことは反省すべきであるように思える。
 耳を傾けて患者の話を聞く問診は臨床医学の第一歩である。現代は情報の時代で,医学もさまざまな情報の洪水である。医療現場では一人の患者からあらゆる情報を取り出そうとする。血圧を測り,尿を調べ,採血をし,レントゲンを撮り,超音波でさぐり,カメラを入れ,それでも足りずにさらに高度なMRIや最新の検査手段を追い求める。遺伝子レベルの診断が脚光を浴び,治療もよりいっそう高度でかつ高額になる。もちろん臨床検査は重要であるが,医師はまず患者の言葉に充分にかつ丁寧に耳を傾けることから始めなければならない。患者の言葉が病の原因がどこにあり,取り除かねばならない苦痛が何によるものなのかを教えることは多い。張氏の症例にも,「そんなことは自分の病気にとって重要なことではないと考えていた」と患者が言ったとある。よく話を聞き,かつ重要な情報を聞き出すことは,今最も医師に求められる能力の一つであり,そうした情報を得てはじめて分析が可能になる。
 張氏は懇切に患者の話を聞き,脈診や舌診をはじめとした身体所見を分析し,矛盾点があれば考えぬき,迷った挙句についに診断に至る過程を詳細に記録している。治療にあたっても非常に細やかな気遣いをしている。薬を服用すると起きうることをあらかじめ知らせるなど,患者や家族に合わせて細かい説明をする。薬の内容をそのまま伝えると患者の家族が恐れて飲ませないと予想すれば,少し工夫を加える。薬の味にも非常に注意を払い,吐き気のある患者にはそれを助長するような薬を避け,少しでも薬の味を嫌がる場合は苦心して味のない薬による治療を考える。また貧しい人々には高価な薬を避け,日常のありふれた食物を用いての治療にも言及する。さらに広い中国での薬局事情を述べ,薬の確かめ方や,ときには製剤の仕方まで詳しく記載している。さらに治癒後の養生が必要な場合にはよく言い含めておくことを忘れない。こうした治療者としての彼の態度が,現代でも真に尊敬できる中医師として,当時の医師ばかりでなく,現代の医師にも光彩を放つ存在にしている。
 現代の医学教育で中医学を取り入れながら現代医学を学ぶことは決して無駄ではない。専門医ばかりの養成では大多数の一般患者は救われない。国民にとって日常的に頼れる身近な医師が増えることが望まれる。
 現代医学が最も得意とする分野は,人間としての患者の姿がみえない領域に多い。もちろんそれらが非常に重要な分野であることに異論はない。事故などの救命救急治療や,診断・治療が射程距離に近づいてきた先天性疾患などは輝かしい分野である。しかし一方で,より膨大な数の人々が苦しみ,その治療を望んでいる臨床雑病を,よく話を聞き,その発症の原因を考えて納得のできる治療を施す医師がまだ不足している。そうした医師を目指す人々にとって本書は極めて有益であると信じる。


神戸中医学研究会


『臨床に役立つ五行理論―慢性病の漢方治療―』 本書を読むにあたって

[ 中医学 ]

本書を読むにあたって


1.本書は,五行理論の特に相生・相克・相乗・相侮の関係を,臨床において応用した筆者の経験をまとめたものです。


2.五行説は,古代中国の基本哲学であり,宇宙の森羅万象を木・火・土・金・水の5種類の行に分類し,それらの相互関係の法則性を見出して体系化されたものです。現代科学の目からみると五行は非科学であり,漢方臨床家においても五行を忌避する方は少なくありません。しかし五行の相関理論は中国伝統医学の発展過程で中核的理論として取り込まれており,五臓の生理病理を把握するうえで五行の理解は欠かせません。


3.五行の相関には,正常な状態の相生・相克関係と,病的な状態の相乗・相侮関係があります。実際の臨床においても,肝(木)が盛んとなって脾(土)を克する(討ち滅ぼす)相乗関係の木乗土,心が盛んになり過ぎて,本来心(火)を克する腎(水)を受け付けない相侮関係の火侮水はしばしば見られます。
本書では一般に空理空論と思われがちな五行理論にスポットを当て,五行に熟知すれば臨床に役立つことを,筆者の臨床経験にもとづいて紹介しています。特に筆者は慢性疾患に有効であると述べています。


4.もちろん筆者自身が強調しているとおり,五行理論のすべてを人体に当てはめることはできません。しかし人の病態に五行理論を当てはめて考えることは難治病を治療する糸口となる可能性があります。


5.本書の中核を為すのは,第3・4章の筆者の症例分析です。収録した26症例すべてに五行図を使って各臓の相関を図示しており,ひとめで各症例における五臓の相関関係を理解できるようになっています。図中には便宜的に肝①・心②・脾③・肺④・腎⑤と各臓ごとに番号をふってありますが,番号自体に意味はありません。

6.症例のなかには煎じ薬を使ったものもあります。それらについては各症例の最後に[エキス剤で代用するなら]という項を設けて,代用処方を呈示してありますので参考にしてください。


7.巻末の附表は,神戸中医学研究会編著『中医学入門[第2版]』(医歯薬出版株式会社)などを元に一部改変して筆者が作成したものです。五臓各臓の弁証論治を一覧にしたもので,病態がどの臓に属するのかを決定する際に参考になるので,附表を見ながら本書を読み進めていただくと理解しやすいでしょう。なお表に記載されている症状はあくまでも主症状であり絶対的なものではありません。


編集部

『臨床に役立つ五行理論―慢性病の漢方治療―』 推薦の序

[ 中医学 ]

推薦の序


 『臨床に役立つ五行理論 ―慢性病の漢方治療―』を推薦致します。
地球上に生活するすべての生体は,自然の恩恵を受けている。
 自然界の五行,木火土金水を人体の五行に当てはめてみると,まさに四季・天候・暑さ・寒さ・湿度などの巡りによって,その時期の疾病が発生しやすいことがよくわかる。
このたび,土方康世先生が五行五臓の相生・相克によって,様々な慢性疾患の診断と治療を大変わかりやすく解説された。
 二臓の母子関係の相生相克だけでなく,三臓が影響し合っている様子が図示されているので,どの順番で治療すればよいかがよくわかる。1つの疾病が多くの臓器と関連していても,その原因と目される臓から現症を呈する臓へと移行することが判明すれば,おのずと処方も決まってくる。
 症例を通した解説は先生ならではのもので,その解釈は斬新である。先生は中医学の大家ではあるが,漢方を志すものであれば,中医学,日本漢方に関係なく,この理論を日常の診療に役立てることが必要だと推薦申しあげる次第である。

日本東洋医学会
名誉会員
二宮 文乃




推薦の序


 中医学は東洋医学を学習しやすいように,古典を重視しながら歴代の医家の学説を取り入れ,系統的に理論づけられて完成した医学です。中国では中医薬大学で使用される「統一教材」としてまとめられています。基礎の解説書として統一することで,難解に感じられる東洋医学を整理しやすく,また初学者にとっても把握しやすいという利点があります。日本においても中医学に対する認識が高まり,中医学を学ぶ先生方も増えており,たいへん嬉しく思っています。
 『傷寒論』などの古典においても,「病」「証」「症」それぞれを説明する条文がありますが,日本では条文どおりに方剤を投与することが多く,一般に「方証相対」と言われています。これが有効なこともありますが,複雑な臨床症例に対しては無効なこともあります。その理由は,原文の条文だけでは,その「病」「証」「症」の基礎理論・病因病機(発病の原因・発病の機序=病理)に対する説明が不足しているためだと考えられます。
 そこで,中医学の弁証論治*を学習することによって,思考法や視野が広がり治療法を見つけやすくなります。弁証論治の具体的な流れは,「理(弁証)→法(論治=治療原則)→方(方剤)→薬(生薬)」ともいわれ,正確に弁証論治を行うためには,中医基礎理論・中医臨床・方剤学・生薬学を併行して学習する必要があります。
 *弁証論治:中医学の診断方法(望・聞・問・切の四診)を運用して患者の複雑な症状を分析し,それを総括して,いかなる性質の証(証候)であるかを判断するのが【弁証】で, さらにその証に対する治療原則にもとづいて,治療方法を確定するのが【論治】です。
 確かに中医学で用いられている中医用語と,弁証論治の考え方には理解しにくい部分があります。しかし,臨床医である土方康世先生の著書はまさに,具体的な弁証方法を丁寧にまとめた臨床に役立つ参考書で,特に中医学の根源でもある『黄帝内経』の五行学説・臓腑学説を軸に,千変万化の臨床症例がわかりやすく整理されています。本書は中医学の弁証論治の考え方を学習するうえで役に立つはずです。
 私は5年前に静岡伊豆漢方勉強会で,土方康世先生に出会いました。静岡の先生方からも土方先生は中医学に精通した先生だと教えられましたが,なにより土方先生の中医学に対する熱意にたいへん感動し,刺激を受けました。土方先生は学んだ中医学の理論を,すぐに臨床で実践する頭脳明晰な学者であり,心より敬服しております。
本書の特徴は主に以下の4つです。
1.難解な中医学の用語を簡明に説明しながら,図を多く取り入れているので,中医学の初学者でも活用しやすい。
2.臓腑学説の理論だけでなく,五臓の相互関係を重視する五行学説を利用して,「相生」「相克」「相乗」「相侮」の関係を具体的な症例を通して詳しく説明しています。臨床においてうまく弁証できない難治症例に遭遇しても,治療方法が見つけやすく,有効処方を選択しやすくなります。
3.各症例の考察では,診断のポイントを明らかにしながら簡明にまとめられています。
4.読者自身の症例を分析したり,整理したりするときに,本書の弁証分類法を参考にすることができます。

 今から36年前,私は中国の北京から日本に来ましたが,来日当初,母校である北京中医薬大学の先生方から「日本に行けばこれまで学んできた中医学を学べなくなるが,それでもいいのか」と言われ,そのことをいつも気に掛けていました。しかし,日本に来て36年の歳月が過ぎ,その間,ずっと中医学の仕事に囲まれ,日本の医療関係の先生方とともに中医学を勉強できることに,心から感謝しています。
 中医学を学んできた一人として,日本の医療関係者に中医学の素晴らしさをわかりやすく伝えることに大きく貢献されている土方康世先生に感謝申しあげます。中医学が日本の医療現場でさらに普及し,応用され,人びとの健康・養生に貢献できることを心からお祈り致します。

中医学講師
菅沼 栄

『再発させないがん治療 ~中国医学の効果~』

[ 中医学 ]

 いまや日本人の半分はがんに罹り,3分の1はがんで死ぬ時代になってしまいました。ついこの前までは3分の1ががんに罹るといわれていたのに,急速な増加率です。
 なぜ,これほどまでにがんが増えているのでしょうか?
 特殊なものを除いて,ほとんどのがんは遺伝とは関係ありません。家族にがんの方が多く出るとすれば,それは生活習慣が似ていることが原因です。そうなのです,がんは「生活習慣病」というべきなのです。
 したがって,現代日本でこれほどがんに罹る方が急速に増えてきているということは,多くの日本人の生活習慣が誤っているといえます。具体的な問題点は本論のなかで順々に述べていきます。
 近年,セカンドオピニオンを活用することが広まり,自分の受けている医療が的確なものかどうか,より良い医療を求める風潮が盛んになり,大いに結構なことだと思います。しかしその多くは,当然ながらというべきか,同じ領域の治療経験が豊富な専門医,つまり同じ西洋医学の範疇で意見を聞くものがほとんどでしょう。私は西洋医学だけでなく,東洋医学などより広範な知識を持つ方が相談者になるべきだと考えています。
 とはいっても,東洋医学の専門知識,それもがん治療に関わるものを持っている方というのは,現在の日本にはほとんどいないのですから,現実にはなかなか難しい話です。現在,大学医学部の教育のなかに,東洋医学の講座が含まれるようになっているので,将来はこういった専門知識を持った医師が増えてくることに期待したいと思います。
 私は中国医学の専門医,それもがん患者を多く診るようになってからすでに20年を超えます。そこで本論に入る前に,中国医学が一体どれほどがん医療に貢献できるのかを話しておきたいと思います。ただし西洋医学がよく行う治療成績を統計として処理すること(EBMといわれる実証主義)は,中国医学の場合あまり意味がないと考えています。なぜなら,同じ病名・進行度であっても,人間にはすべて個体差があり,中国医学はその個性を際立たせ,そこを見て治療を行うという特色があるからです。
 したがって,本論のなかでがんに対する東洋医学の基本的な考えを述べ,さらに種々のがん症例を呈示していきますが,同じ病気であってもその治療法がそのまますべての患者に当てはまるものではないとお考えいただきたいと思います。
 私の経験では,手術後に「これでがんはきれいに取れましたよ。ひと安心ですね」と主治医に言われた患者さんで,術前もしくは術後あまり時間が経過しないうちに当院を受診し治療を始めた場合,ほぼ再発を防ぐことができます。ただしこちらが指摘した従来の誤った生活習慣を見直し,正しい生活をしていただき,きちんと服薬してもらうことが必要条件です。
 通常のがんの場合,「5年生存率」という言葉があるように,初回治療後5年間再発転移がなければ,そのがんは治ったものとみなせますが,私は特にはじめの2年間が重要だと考えています。これを過ぎれば当院の治療薬も従来よりも種類を減らしたり,薄めて服用したりすることも可能になります。
 次に腫瘍マーカーが上がってきて,どこかに再発転移が疑われる状況にある場合ですが,CT・MRI・エコー・シンチなどでも再発部位が明らかにならないときであっても,当院の治療で腫瘍マーカーの数値が下がっていくようならば,順調な経過をとることも可能です。
 最も問題なのは,初回治療でがんはなくなったと言われたにもかかわらず,誤った生活習慣を従来のまま続け,数年後に再発転移が明らかになった場合や,さらにはがんが発見された時点ですでに遠隔転移がみられるいわゆるステージⅣの状態で当院を受診された患者さんの場合,完璧に治すことはできないと思います。ただ,西洋医学で予想される以上に延命に寄与したり,QOL (生活の質)を向上させたりすることはできます。
 これは私の治療技術が未熟なせいですから,今後とも日々治療成績の向上に向けて努力して,近い将来にはいま以上に治療成績を上げることを誓いたいと思います。
 話は変わりますが,近年,うつ病になる人が増え,しかも自殺に走る方がかなりの数にのぼっており,社会問題になっています。うつ病ほどでなくても,情緒不安定で,不安感を覚える方は非常に多いようですし,もちろんがん患者さんは,常に再発の不安を抱いている方がほとんどです。誰しも時には情緒不安定になることがあるものですが,かつての日本人は大事にならないうちに平常心を回復することができました。しかし,どうも近年はうまくブレーキを掛けることができず突っ走ってしまったり,向精神薬を用いたりしてもなかなかうまく社会復帰できない人が増えているようです。
 中国医学の考えでは,心身ともに正常に活動するためには,エネルギー源となる「気」の量が充分にあり,しかもその流れがスムーズであることが必要です。現代の日本人は全般的に,この気の量が不足し,流れも滞りがちであることが様々な問題を引き起こしていると思いますし,もちろんこれが身心の脆弱さの原因でもあります。
 本書では,がんをメインテーマとして取り上げながら,現代の日本人が抱える幅広い問題についてもあわせて考えていきたいと思います。がんの予防法は他の疾患の予防法にもつながると考えるからです。
 それでは本論に入っていきましょう。

『続・針師のお守り―針灸よもやま話―』

[ 鍼灸 ]

  まえがき


 本書は二〇〇〇年に刊行された新書版『針師のお守り』の続編である。
 前作の『針師のお守り』は『中医臨床』八〇号までに掲載された「針灸よもやま話」を『中医臨床』創刊二〇周年を期して一冊にまとめたものであるが、本書ではその後を受け、二〇〇〇年以降の『中医臨床』に掲載された「鍼灸論壇」「エッセイ」「近況雑感」を一冊にまとめている。
 巻末に各篇の『中医臨床』掲載号の一覧を付してあるが、その表をみてもわかるように、本書の目次は『中医臨床』の掲載順とした。
 針灸療法はいうまでもなく、単なる金属製の針と蓬を乾燥して晒した艾を使って治療するもので、針や艾それ自体にはほとんどなんらの治療効果もない。針灸の治療効果とはそうした道具を使う鍼灸師の技量とさらには鍼灸師の人間性に大きくかかわっている。
 日本でも数多くの針灸書が世に出されてきた。しかし、その圧倒的多数は針灸の基礎知識や、技量に関するものや、鍼灸師の心構えといった類で、鍼灸師としての立ち位置から日本の医療なり、社会を見てきた素の姿はなかなか見えてこない。
 本書は、四十年間、針灸治療に携わってきた筆者が、様々な場面で心に浮かんだ針灸に関連する事象を、自分の言葉で語ったものであり、できるだけ自分の素直な考えをさらけ出してきたつもりである。
 本書には、個人的な狭隘な視点や、誤った理論展開がなされている部分も多々、含まれているかもしれないが、それはそれで良しと思っている。本書を読まれた方が、本書の内容に対し、肯定するにしろ否定するにしろ、なんらかの興味を針灸に持っていただければ、筆者の思いは十分である。


二〇一五年一月 東京猿楽町の地にて

浅川 要

 

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